平成27年版 防災白書|第1部 第2章 第3節 土砂災害対策


第3節 土砂災害対策

我が国では毎年多くの土砂災害が発生しているが、平成26年は「平成26年8月豪雨」などの影響により、全国各地で人的被害を伴う土砂災害が頻発した。特に、8月20日には、広島市において土砂災害等により74人もの犠牲者を出した。

この災害を受け、政府は、関係省庁からなる「平成26年(2014年)8月豪雨非常災害対策本部」を設置したほか、広島県庁に「非常災害現地災害対策本部」を設置し、関係地方公共団体等と連携して情報収集と対応にあたった。そして、同年9月5日の非常災害対策本部では、「土砂災害など重大な自然災害に対する主な被害防止対策」を決定し、こうした大規模災害を二度と起こさぬよう、国民に対する土砂災害危険箇所等の緊急周知、行政の体制整備に係る緊急点検、災害リスク情報の的確な提供に向けた取組、土砂災害に備えたより実践的な訓練の実施など、関係府省庁において緊急的に取り組むべき施策を示した(図表1-2-19)。

平成26年11月には、土砂災害警戒区域等の指定や基礎調査がなされていない地域が多く、住民等に土砂災害の危険性が十分に伝わっていなかったなどの課題を踏まえ、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)」(以下「土砂災害防止法」という。)が改正され、翌年1月に施行された。この改正により、都道府県に対し基礎調査の結果の公表が義務付けられ、住民等に早期に土砂災害の危険性を周知することとなった。また、改正土砂災害防止法に係る土砂災害防止対策基本方針に基づき、全ての都道府県で平成31年度末までに基礎調査を完了させる目標が設定された。さらに、土砂災害警戒情報を法律上に明記するとともに、都道府県に対し市町村長への通知及び一般への周知が義務づけられ、円滑な避難勧告等の発令に資する情報を確実に提供することとなった。また、土砂災害警戒区域の指定があった場合の市町村地域防災計画において、避難場所・避難経路等に関する事項等を定めることとし、避難体制の充実・強化を図ることとなった(図表1-2-20)。

平成26年12月には、広島土砂災害をはじめとした一連の土砂災害で明らかとなった課題を整理するとともに、それによって得られた教訓を今後の土砂災害対策の更なる推進につなげることを目的として、中央防災会議「防災対策実行会議」の下に「総合的な土砂災害対策検討ワーキンググループ」を設置した。また、全4回のワーキンググループにおける議論を経て、平成27年6月に「総合的な土砂災害対策の推進について(報告)」がとりまとめられた。この報告には、土砂災害の特徴と地域の災害リスクの把握・共有、住民等への防災情報の伝達、住民等による適時適切な避難行動、まちづくりのあり方と土砂保全対策の推進、災害発生直後からの迅速な応急活動についての提言がまとめられている(図表1-2-21)。

今後、このとりまとめに基づき、国・地方公共団体と地域住民が一体となった土砂災害対策を推進する予定である。

広島市で発生した土砂災害等の様子広島市で発生した土砂災害等の様子
図表1-2-19 土砂災害など重大な自然災害に対する主な被害防止対策図表1-2-19 土砂災害など重大な自然災害に対する主な被害防止対策
図表1-2-20 「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の改正図表1-2-20 「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の改正
図表1-2-21 総合的な土砂災害対策の推進について(報告)概要図表1-2-21 総合的な土砂災害対策の推進について(報告)概要

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