平成27年版 防災白書|特集 第3章 第1節 我が国の国際防災協力の概要


第3章 我が国の様々な国際防災協力

第1節 我が国の国際防災協力の概要

第2章で見た通り、本年3月に開催された第3回国連防災世界会議において、世界各国の防災の取組指針は、2005年に策定された「兵庫行動枠(HFA)」から、「仙台防災枠組2015-2030」に引き継がれた。今後15年間は、仙台防災枠組を推進していくことが、国際社会にとって、そして防災分野で世界をリードしてきた我が国にとっての責務となる。

このため、我が国は、本会議において安倍内閣総理大臣が発表した「仙台防災協力イニシアティブ」に則って、ソフト支援、ハード支援、そしてグローバルな協力や広域協力の推進を効果的に組み合わせ、今後4年間で、防災関連分野で計40億ドルの協力、4万人の人材育成を実施し、国際社会における「防災の主流化」に貢献していく(図表18)。

また、従来から実施している、国連など国際機関を通じた多国間協力、アジアにおける地域協力、政府間の協力等により、国際防災極力を積極的に推進していく。これらの活動について、以下の項で紹介する。

コラム:「防災の主流化」とは

第3回国連防災世界会議に際し、日本政府は「防災の主流化」の重要性を訴えかけてきたが、改めてその意義について考えてみる。

「主流化」とは、国際社会では、例えばgender mainstreamingという用例で、ジェンダーの視点をあらゆる政策に反映させることによりジェンダーの政策を広めていくという意味で使われている。防災の文脈では、第1章の国連防災世界会議の流れで見た通り、特に災害による被害を事前の対策により軽減させる取組、すなわち災害予防の取組をあらゆる政策に反映させ、普及させることが、「防災の主流化」の第1の意義である。災害はひとたび発生すればあらゆる分野に影響が及び、あらゆる政策において事前の備えをしておかなければ、災害被害の軽減は図れない。我が国においては、全ての関係閣僚がメンバーである中央防災会議のもとに、関係省庁、公共機関、地方自治体等による防災体制を構築しており、世界各国においても、全ての関係者が平時から防災に取り組む体制づくりが必要である。

また、兵庫行動枠組(HFA)の点検により、優先行動4「潜在的なリスク要因を削減する」取組が遅れていることが明らかになったが、こうした災害リスクとは、不適切な土地利用や都市開発によって生じており、特に開発途上国においては、開発段階から災害リスクへの配慮を統合し、強靱な都市づくり、地域づくりを行っていくことが、貧困と災害発生の悪循環から抜け出す意味でも、必要である。すなわち、あらゆる開発の政策に防災の視点を反映させることも「防災の主流化」の意義である。開発への国際協力については、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)が基本方針とされてきたが、この目標には防災の位置づけがなされていない。2015年秋の国連総会において採択されるポスト2015年開発アジェンダに防災の視点を盛り込むことは「防災の主流化」のために必須である。また、同じく2015年冬にCOP21において新たな気候変動枠組条約が策定されるが、特に島嶼国や沿岸部を有する国においては気候変動の影響により災害リスクの増加が懸念されており、気候変動への適応策として防災の視点が盛り込まれることも重要である。

さらに、災害予防対策には、災害発生後の応急対策に投入される資金と比べ、資金が集まらず、そのために対策が進まないという課題があり、「防災の主流化」を進めるには、事前の防災への投資が災害発生後の復旧・復興に比べてはるかに費用対効果が高いということについて理解を広める。

第3回国連防災世界会議で採択された仙台防災枠組においては、こうした「防災の主流化」を推進するため、防災の数値的な目標が盛り込まれるとともに、事前防災投資や、災害発生後の復興段階における抜本的な災害予防施策、すなわちビルド・バック・ベター、そして、政府だけでなく、多様な関係者がそれぞれの役割を十分に発揮して、関係者全員で防災に取り組むガバナンスの考え方が十分に盛り込まれた。これらの施策が国際社会において実施されていくことが「防災の主流化」につながる。そのために、我が国は、防災分野のリーダーとして、引き続き国際防災協力を積極的に推進していく。

図表18 仙台防災協力イニシアティブの概要図表18 仙台防災協力イニシアティブの概要

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