平成27年版 防災白書|特集 第2章 第2節 2-2 本体会議の開催について


2-2 本体会議の開催について

(1)開会式

3月14日午前、天皇皇后両陛下の御臨席のもと開会式が行われた。本世界会議の議長として、山谷内閣府特命担当大臣(防災)が選出され、開会挨拶を述べた。続いて、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の挨拶、開催国を代表して安倍内閣総理大臣から歓迎の挨拶が行われたほか、気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP:Conference of the Parties)の議長を務めるファビウス仏外相、メジャーグループ代表がスピーチをし、最後に、開催都市である仙台市を代表して、奥山仙台市長が歓迎の挨拶を行った。その後、議題や手続き規則の採択、副議長選出、メインコミッティ(起草委員会)設置の手続等が行われた。

開会式において挨拶を行う国連事務総長(檀上右側:天皇皇后両陛下、檀上中央:安倍内閣総理大臣、檀上左側:山谷内閣府特命担当大臣(防災))開会式において挨拶を行う国連事務総長(檀上右側:天皇皇后両陛下、檀上中央:安倍内閣総理大臣、檀上左側:山谷内閣府特命担当大臣(防災))
(2)全体会合

全体会合では、各国の政府代表や国連機関等の代表のステートメントが行われ、各国の課題や兵庫行動枠組(HFA)に基づいたこれまでの取組、新たな防災枠組への意見、その推進のために必要な取組等が表明された。

開会式に続いて行われた、各国の首脳級がステートメントを行う「ハイレベル・セグメント」において、我が国からは、安倍内閣総理大臣がステートメントを行った。安倍内閣総理大臣からは、「事前の防災投資」、「より良い復興(Build Back Better)」、「多様な主体の参画」等の重要性を主張するとともに、「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し、今後の日本の防災分野での国際協力について、2015~18年の4年間で計40億ドルの資金協力と4万人の人材育成を表明し、日本の知見と技術を世界と共有する方針を打ち出した。

ハイレベル・セグメントにおいてステートメントを行う安倍内閣総理大臣ハイレベル・セグメントにおいてステートメントを行う安倍内閣総理大臣
(3)ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ

3月14日、16日及び17日の3日間、3つのハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ(対話)が行われた。本対話では、「防災における女性のリーダーシップ発揮」、「リスクに対応した投資:官民パートナーシップ」及び「多様な主体の参加:政府、コミュニティ、各種団体」の3つをテーマとし、首脳級の参加を得つつ、会議参加者の誰もが参加し、発言できるセッションとして開催された。

ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ
ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ(テーマ:防災における女性のリーダーシップ発揮)において議長を務める高市総務大臣ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ(テーマ:防災における女性のリーダーシップ発揮)において議長を務める高市総務大臣
コラム:女性と防災

東日本大震災後、防災に関する政策・方針決定過程等における女性の参画拡大や、男女のニーズの違い等に配慮した取組が必要であることが、一層認識されるようになった。

全国の地方防災会議について、都道府県の防災会議に占める女性委員の割合は、平成26年4月現在、12.1%(前年比1.4%ポイント増)となっており、女性委員がいない都道府県防災会議の数は、前年に引き続きゼロとなっている。

一方、市町村防災会議に占める女性委員の割合は、平成26年4月現在、7.1%であり、自治体の種類別にみると、政令指定都市で12.1%、政令指定都市以外の市区で8.7%、町村で4.3%となっている。女性委員のいない市町村防災会議の数は31.9%となっており、特に町村の半数以上の防災会議に女性委員がいない。

地方防災会議の委員に占める女性の割合は、依然として低い割合にとどまっている。引き続き、防災に関する政策・方針決定過程等における女性の参画拡大が必要である。

このような状況も踏まえ、第3回国連防災世界会議では、様々な場面において女性のリーダーシップについて発信することとした。

ハイレベル・パートナーシップ・ダイアローグ「防災における女性のリーダーシップの発揮」では、安倍内閣総理大臣が基調講演を行い、3月14日に発表した「仙台防災協力イニシアティブ」の主要プロジェクトの一つとして、「防災における女性のリーダーシップ推進研修」を開始することや、災害に強靱な社会の構築には女性が原動力となることを述べた。

同会議の関連事業として、内閣府は、「女性と防災」テーマ館において展示を行ったほか、外務省、内閣府及び復興庁が主催して、「災害復興時の女性の活躍」に関するシンポジウムを開催した。

同会議において策定された「仙台防災枠組2015-2030」の検討に当たっては、我が国は様々な意思決定に女性のリーダーシップと参画の平等な機会の確保が必要であることを盛り込むよう国際社会に働きかけた。この結果、「仙台防災枠組2015-2030」には、我が国が主張した女性のリーダーシップ促進と女性が果たす役割について明記された。

「女性と防災」企画展の様子「女性と防災」企画展の様子
パブリック・フォーラム「災害復興時の女性の活躍」の様子パブリック・フォーラム「災害復興時の女性の活躍」の様子
(4)閣僚級ラウンドテーブル

3月15日~17日にかけて、5つの閣僚級ラウンドテーブル(円卓会議)が開催された。同会議では、それぞれ「災害後の復興:ビルド・バック・ベター(より良い復興)」、「防災のための国際協力とグローバル・パートナーシップ」、「災害リスクへの対処:課題の克服」、「都市災害リスクの削減」、「災害リスク削減への公共投資戦略」の5つをテーマとし、各国閣僚や国際機関の代表等が30名以上参加して、新たな防災枠組の推進に向けた取組やコミットメントについて意見表明や議論が行われた。

閣僚級ラウンドテーブル閣僚級ラウンドテーブル
閣僚級ラウンドテーブルにて発言する岸田外務大臣閣僚級ラウンドテーブルにて発言する岸田外務大臣
閣僚級ラウンドテーブルにて発言する太田国土交通大臣閣僚級ラウンドテーブルにて発言する太田国土交通大臣
(5)ワーキングセッション

3月14日~17日にかけて、「現行HFA優先行動の進捗」、「新たなリスク」、「ポストHFA実施に向けたコミットメント」及び「ポストHFA実施の加速化」の4テーマに沿って、専門家等が個別のテーマについて議論をする34のワーキングセッションが行われた。

日本からは、各省庁や地方自治体等が準備段階から積極的に参画し、半数以上のセッションに日本からのスピーカーが登壇し、東日本大震災をはじめとする幾多の災害から得た我が国の知見や技術、東日本大震災からの復興の現状や取組について各国等に発信する重要な機会となった。

日本が参画した主なワーキングセッションの概要については次のとおり。

ワーキングセッション(1)ワーキングセッション(1)
ワーキングセッション(2)ワーキングセッション(2)
ワーキングセッション(テーマ:国・地方レベルのガバナンスと開発計画)においてパネリストとして登壇する赤澤内閣府副大臣ワーキングセッション(テーマ:国・地方レベルのガバナンスと開発計画)においてパネリストとして登壇する赤澤内閣府副大臣
(6)本体会議場における展示

本体会議場内では、国連、9つのメジャーグループ、障害者グループ等の海外からの団体に加え、関係省庁や関係自治体(東京都及び兵庫県)、宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)、独立行政法人国際協力機構(JICA:Japan International Cooperation Agency)、NHKの協力を得て、本体会議場において展示を行った。日本政府からは、衛星観測技術(気象庁)やICT等の技術を用いた先進的な災害対策(総務省)や、阪神・淡路大震災(兵庫県)や東日本大震災からの復興への取組(復興庁)、防災に関する国際協力等のテーマに沿った展示を行った。本体会議場の外においても、総務省によるICTカー(災害時に被災地へ搬入して迅速に通信環境を構築し、通話やデータ通信を可能とする移動式ICTユニットを搭載した車両)や移動電源車、日産自動車による電気自動車などの屋外展示が行われるとともに、ICTカーが提供する無線LANのネットワークにより、会議参加者のインターネット接続環境に貢献した。また、参加者により、防災に関するトピックやプロジェクト等に関して15分間のプレゼンテーションが行われるイグナイト・ステージが設けられた。

本体会議場における展示の様子(1)本体会議場における展示の様子(1)
本体会議場における展示の様子(2)本体会議場における展示の様子(2)
本体会議場外における屋外展示の様子(1)本体会議場外における屋外展示の様子(1)
本体会議場外における屋外展示の様子(2)本体会議場外における屋外展示の様子(2)
イグナイト・ステージの様子イグナイト・ステージの様子
(7)バイ会談(二国間会談)

第3回国連防災世界会議には、首脳級25名を含む閣僚100名以上が参加したが、この機会を利用して、我が国の安倍内閣総理大臣や閣僚とのバイ会談(二国間会談)が実施された。安倍内閣総理大臣は、3月13日から15日にかけて、ケニア、タイ、トルクメニスタン、スワジランド、バヌアツ、ルワンダ、タンザニア、ジンバブエ、ミクロネシア、カンボジア及びキリバスの首脳と会談し、本世界会議の成功に向けた協力に加え、二カ国間の様々な協力関係の発展等について話し合うとともに、参加各国の副大統領から表敬を受けた。また、安倍内閣総理大臣は、潘基文国連事務総長と会談し、日本と国連との連携の強化等について話し合うとともに、参加国際機関の長等から表敬を受けた。山谷内閣府特命担当大臣(防災)、竹下復興大臣、高市総務大臣、岸田外務大臣、太田国土交通大臣も、それぞれ副大統領、副首相、関係閣僚等とバイ会談を実施した。

(8)総理主催昼食会

会議初日である3月14日午後、安倍内閣総理大臣は、第3回国連防災世界会議に参加している首脳級の要人を招いての昼食会を開催した。

冒頭、安倍内閣総理大臣から、第3回国連防災世界会議への首脳級の参加は防災に対する国際社会の政治的コミットメントを示すものであるとして、ホスト国としての謝意を表明した。

その後、ゲストスピーカーとして、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁より、バヌアツに被害を起こしているサイクロンに言及した上で、防災が極度の貧困の撲滅と経済格差の是正を図る上で非常に重要であり、防災を国際的なアジェンダにし続けている安倍内閣総理大臣の個人的な政治的リーダーシップと日本の努力に謝意を表すとともに、現在、国際社会が直面する主要なリスクとしてエボラ出血熱のような感染症と自然災害を挙げ、いずれも事前の備えが重要である旨を述べた。また、特にポスト2015年開発アジェンダを採択する本年は、防災と保健という重要な課題に取り組む重要な機会であり、防災とユニバーサル・ヘルス・カバレッジの二つの分野における日本のリーダーシップに謝意を示した。

次に、ヘレン・クラークUNDP総裁より、「仙台防災協力イニシアティブ」を高く評価する旨、また、日本の「より良い復興」という基本的考え方に基づく防災協力を評価し、仙台の東日本大震災からの復興には勇気づけられる、防災は個別の対策をとるだけでは不十分であり、開発政策全体に浸透させていくことが必要である旨述べた。

なお、昼食会では、被災地の復興と仙台の魅力を発信するため、仙台の伝統工芸品「仙台箪笥」に盛りつけた料理が提供された。

主催昼食会において冒頭挨拶を行う安倍内閣総理大臣(潘基文国連事務総長、スワジランド国王など首脳級の要人が出席)主催昼食会において冒頭挨拶を行う安倍内閣総理大臣(潘基文国連事務総長、スワジランド国王など首脳級の要人が出席)
(9)日本政府主催歓迎レセプション

3月14日19時頃より、仙台ロイヤルパークホテルにて、第3回国連防災世界会議の参加者(政府、民間、市民団体など約1,000名)を招いて日本政府主催歓迎レセプションを開催した。

冒頭、安倍内閣総理大臣から挨拶を行い、参加者に対する感謝の意を表すとともに、東北6県の肉、魚、日本酒を取りそろえた食材ブースや、東日本大震災により店舗を失った寿司職人が地元の魚で握る寿司を紹介した。また、あわせて、2020年には、オリンピック・パラリンピック東京大会が開催されることを紹介し、東北の復興を後押しする復興五輪として、世界の方々に日本を楽しんでもらう機会である旨アピールした。

続いて、潘基文国連事務総長より、日本政府によるレセプションへの謝意を表明した上で、第3回国連防災世界会議に参加している多数のジャーナリストに対して、いかに防災が重要かというメッセージを全世界に伝えていただきたいこと、また、東日本大震災の被災地である仙台の地で強力な成果文書に合意することにより、持続可能な開発、気候変動対策につながることを強調する旨の挨拶が行われた。

乾杯の挨拶において、山谷内閣府特命担当大臣(防災)より、「より良い復興」を目指す東日本大震災からの復興の努力を紹介し、復興の現状の視察や東北の美しさ、食、文化を堪能するため、被災地への訪問について呼びかけがなされた。

また、会場では、我が国の先進的な防災技術や東日本大震災からの復興などに関する記事が掲載された政府広報誌「We are Tomodachi 防災特集号」が配布されるなど、参加者に対して、日本の取組について発信がなされた。

日本政府主催歓迎レセプションの様子(1)日本政府主催歓迎レセプションの様子(1)
日本政府主催歓迎レセプションの様子(2)日本政府主催歓迎レセプションの様子(2)
コラム:グリーンカンファレンス

第3回国連防災世界会議においては、「グリーンカンファレンス」を目指し、様々な取組を行った。具体的な取組として、国連ISDRは会議での紙の使用を最低50%以上削減することを目標とし、本世界会議のウェブサイトで全ての文書にアクセス可能とする「カンファレンスボックス」を設置し、ペーパーレス化を図った。日本政府は、ポータブルタブレット端末を持たない各国代表のために、会場でiPadをレンタルする等、会議のペーパーレス化に協力した。また、CO2排出削減に関して、ホテルや会議会場間の移動には、シャトルバスの利用を推奨し、仙台市は電動のコミュニティサイクルである「ダテバイク」の無料貸し出しを行った。

会議最終日には、本世界会議においてペーパーレス化を推進し、カンファレンスボックスへは2,500以上のアクセスがあり、結果として約1,000万枚相当の印刷を節約することができたこと等が国連より発表された。


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