平成26年版 防災白書|第1部 第1章 第4節 4-5 雪害対策


4-5 雪害対策

(1)雪害の現況

我が国は、急峻な山脈からなる弧状列島であり、冬季には、シベリア方面から冷たい季節風が吹き、日本海には南からの暖流があるため、特に、日本海側で多量の降雪・積雪がもたらされ、屋根の雪降ろし中の転落、雪崩や暴風雪災害のほか、降積雪による都市機能の麻痺、交通の障害といった雪害が毎年発生している。

(2)雪害対策の概要

雪崩は、その速度が極めて速く(概ね、表層雪崩で100~200km/h、全層雪崩で40~80km/h)、衝撃力は場合によっては100t/m2(鉄筋コンクリートの建物を倒壊する力)に相当することもあり、一度集落を襲うと被害が甚大なものとなる。このため、集落を保全対象とした雪崩対策事業を推進するとともに、危険箇所の住民への周知徹底、警戒避難体制の強化、適正な土地利用への誘導等の総合的な雪崩対策を実施している。豪雪地域には日本全国の人口の約2割近くに当たる人々が生活を営んでいるが、集落を対象とした雪崩危険箇所は、国土交通省の調査によれば2万501箇所以上あり、このほか、林野庁が林地を対象として行った調査によれば約7,000箇所が報告されている。

なお、降積雪時には、雪降ろしの中の転落事故や屋根雪の落下等による人身事故の防止、雪崩警戒体制の強化に取り組むこととしているほか、道路の交通確保のための除雪事業や除排雪経費が著しく多額にのぼる地方公共団体については所要経費の一部を特別交付税で措置することとしている。

平成25年11月末からの大雪等においては、東北・関東地方を中心とした1都7県に対する自衛隊の災害派遣や、長野県の4市町、群馬県の9市町村、山梨県の21市町村、埼玉県の7市町への災害救助法の適用のほか、道路に係る20道府県に対する除雪補助追加配分及び4県89市町村への除雪費補助の臨時特例措置、特別交付税の繰上げ交付、雪捨て場としての河川敷地の拡大、除雪機械支援、被災中小企業者・被災農業者への支援対策等を行った。

また、新潟県において、特に被害が甚大であった山梨県及び埼玉県からの要請に基づき、両県に対し道路等の除雪支援等を行ったほか、静岡県、長野県及び長野県内7市町村において、山梨県からの要請等に基づき、同県に対し情報収集・災害支援調整のための職員派遣、道路等の除雪支援等を行うなど、地方公共団体による広域連携が図られた。

(3)豪雪地帯対策の概要

降積雪が多く、産業の振興及び民生の安定向上のために総合的な対策を必要とする地域については、「豪雪地帯対策特別措置法」に基づき、豪雪地帯として、平成25年4月1日時点で、24道府県の532市町村が指定されている(図表1-1-67)。その面積は全国土面積の約51%に当たる約19万km2であるが、人口は総人口の約15%に当たる約1,963万人(平成22年10月1日現在(国勢調査))が生活している。

豪雪地帯では、人口の減少傾向が全国平均と比べ顕著であり、また、高齢化率も全国平均と比べて高く、過疎化が進んでいる。さらに、除雪の担い手となる建設業者数も減少しており、豪雪地帯における地域防災力の低下が課題となっている。

豪雪地帯では、「豪雪地帯対策特別措置法」に基づき豪雪地帯対策基本計画を策定し、各種の雪害対策を含む豪雪地帯対策が講じられており、平成24年の「豪雪地帯対策特別措置法」改正により、同計画に新たな対策として、「除排雪の体制の整備」、「空家に係る除排雪等の管理の確保」、「雪冷熱エネルギーの活用促進」、「集中的降雪時の道路交通の確保」が追加された。

(4)今後の雪害対策の方向性

近年の降積雪における被害をみると、毎年人的被害が発生しており、平成18年豪雪において152名もの多数の死者が発生したことを始めとして、平成22年度、平成23年度及び平成24年度は毎年100名を超える死者の人的被害が発生したほか、住宅被害、電力、ガス、水道等のライフラインの被害、交通障害、農林水産業への被害が発生した。毎年、除雪作業中の事故や高齢者の事故が多く、除雪時の安全対策等が重要となっている(図表1-1-68)。

このため、これまでの大雪から得られた教訓や大雪対策を踏まえ、除雪作業中の事故防止に向けた安全対策の徹底、地域コミュニティの共助による雪処理活動、空き家等の除雪対策、降雪により走行不能となる車両に起因した連鎖的滞留の防止等の取組を行ってきたところである。

また、平成25年3月に北海道において暴風雪が発生し、吹き溜まりやホワイトアウト現象により、雪の中で立ち往生した車中における一酸化炭素中毒や走行不能となった車両を離れて徒歩で移動中の凍死等により9名が亡くなった。このため、日頃からの暴風雪への対処方法の住民への十分な周知・啓発、暴風雪に関する予報・警報の住民へのわかりやすい発表、これらの情報の住民への迅速かつ確実な伝達等が必要である。また、豪雪地帯の住民への周知に加え、豪雪地帯の訪問者への啓発も重要である。

平成26年2月には、特に関東甲信地方を中心として、過去の最深積雪の記録を大幅に上回る記録的な大雪に見舞われ、車両の立ち往生等による道路の通行止めや鉄道の運休が相次ぎ、最大で約6,000世帯が孤立するなどの甚大な被害が発生した。

今回の大雪を踏まえた教訓として、今後、注意報、警報、特別警報を含む一連の防災気象情報の提供のあり方について検討するとともに、立往生車両のドライバー等への交通情報の提供方策の検討、豪雪地域と豪雪地域以外の地方公共団体間での広域連携体制の強化を図ることが重要である。

図表1-1-67 豪雪地帯及び特別豪雪地帯指定地域

図表1-1-67 豪雪地帯及び特別豪雪地帯指定地域

図表1-1-68 平成25年冬季の大雪による人的被害の状況

図表1-1-68 平成25年冬季の大雪による人的被害の状況

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