平成25年版 防災白書|第1部 第3章 4 国土強靭化の推進について


4 国土強靭化の推進について

我が国は国土の特性として自然災害が数多く発生するが,災害は,それを迎え撃つ社会の在り方によって被害の状況が大きく変わる。「大地震等の発生→甚大な被害→長期間にわたる復旧・復興」という繰り返しを避けるために,東日本大震災をはじめとする過去の教訓に学び,平時から,事前の備えを行うことが重要である。

東日本大震災の最大の教訓は,低頻度大規模災害への備えについて,狭い意味での「防災」の範囲を超えて,国土政策・産業政策も含めた総合的な対応を,いわば「国家百年の大計」の国づくりとして,千年の時をも見据えながら行っていくことが必要であるということである。

そのために,いかなる大規模災害等が発生しようとも,

  • 人命は何としても守り抜く
  • 行政・経済社会を維持する重要な機能が致命的な損傷を負わない
  • 財産・施設等に対する被害をできる限り軽減し,被害拡大を防止する
  • 迅速な復旧・復興を可能にする

ことを基本的な方針とする,「強くてしなやかな(強靭な)」国づくりを進めていくこととしている。この考え方は,諸外国では「レジリエンス」と呼ばれており,災害をもたらす外力からの「防護」にとどまらず,国や地域の経済社会に関わる分野を幅広く対象にして,経済社会のシステム全体の「抵抗力」,「回復力」を確保することを目的としており,既に強靭化(レジリエンス)に向けた計画及び体制の整備が進められ,国家のリスクマネジメントの基本となっている。それらのリスクマネジメントでは,「リスクの特定」・「脆弱性の評価」・「計画策定/強靱化の取組」・「取組の評価」のサイクルを繰り返して,国全体の構造的な強靱化を推進していくこととしている。

強靭化(レジリエンス)に向けた取組を我が国において進めることは,人命を守るだけではなく,いかなる事態が発生しても機能不全に陥らない経済社会のシステムを確保すること等を通じて,我が国の競争力を向上させ,国際的な信頼の獲得をもたらすものであり,政府として,国土の強靭化(ナショナル・レジリエンス(防災・減災))に向けた取組を府省庁横断的に,地方公共団体や民間とも連携して,総合的に推進することとしている。

強靭化(レジリエンス)により備えるべき国家的リスクには,自然災害のみではなく,大規模事故,テロ等を含め様々なものが存在する。これらの国家的リスクに備え,政府横断的な取組を進めていく必要があるが,国土強靭化担当大臣のもと,「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」(座長:藤井聡京都大学教授)を開催し,当面は大規模な自然災害を対象とする強靭化(レジリエンス)の構築について検討(図表1-3-51)を進めている。

検討にあたっては,主として,従来の事業・施策の枠組みでは十分な対応が困難であると思われる低頻度大規模災害によるリスクを前提に,国民生活,国民経済への影響が大きいと考えられる分野を対象として,現在の政府の取組,地域の現状における脆弱性の評価を行った。その際,強靭化(レジリエンス)に関する分野横断的な8の事前に備えるべき目標を明示するとともに,それに照らして45の「起こってはならない事態」を整理し,その事態を回避する施策のパッケージ(プログラム)に従って評価を実施した。これらの評価結果等を踏まえて,5月28日に「国土の強靭化(ナショナル・レジリエンス(防災・減災))推進に向けた当面の対応」が取りまとめられたところである。

本「当面の対応」は,今後各府省庁において強靭化(レジリエンス)に関する施策・事業を検討するうえで基本となるものであり,対応が必要となる施策・事業については,重点化,優先順位付けを行ったうえで,平成26年度予算編成過程等を通じて具体化することとしている。その際には,既存の社会資本の有効活用等に依る費用の縮減,施設等の効率的かつ効果的な維持管理,地域の特性に応じた自然との共生・環境との調和,施策の重点化,民間資金の積極的な活用の方針のもと,施策の具体化にあたることとしている。

図表1-3-51 ナショナル・レジリエンス(防災・減災)の検討範囲 図表1-3-51 ナショナル・レジリエンス(防災・減災)の検討範囲の図表

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