平成25年版 防災白書|第1部 第3章 2 2-3 被災者支援対策


2-3 被災者支援対策

(1)災害時要援護者の避難支援等に関する対策

災害時要援護者対策の推進については,「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」(平成18年3月)により,市町村に対し災害時要援護者名簿の作成,災害時要援護者の避難支援に係る全体計画及び災害時要援護者一人一人の個別計画の策定等を促してきた。しかしながら,市町村において,個人情報保護との関係等を理由として,災害時要援護者名簿の策定が進んでいなかった等の課題があったことが,東日本大震災においても明らかになった。

なお,災害時要援護者名簿について,整備し,更新中である市町村は,平成24年4月1日現在,64.1%にとどまっていた(図表1-3-15)。

図表1-3-15 災害時要援護者名簿の整備状況 図表1-3-15 災害時要援護者名簿の整備状況の図表

このような東日本大震災の教訓等も踏まえ,有識者等からなる「災害時要援護者の避難支援に関する検討会」を平成24年10月から平成25年3月にかけて5回開催して議論を行ったところである。これを踏まえ,

  • 市町村長は,災害が発生し,又は発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって,特に支援を要する高齢者,障害者等の避難行動要支援者の把握に努めるとともに,その避難の支援,安否の確認等のために,避難行動要支援者名簿を作成しておかなければならないこと
  • 市町村長は,避難行動要支援者名簿の作成・活用に必要な限度で,その保有する情報を利用することができること
  • 市町村長は,避難支援等の実施に必要な限度で,避難行動要支援者名簿に記載し,又は記録された情報を,利用することができること
  • 市町村長は,平常時から,避難支援等の実施に必要な限度で,消防機関,都道府県警察,民生委員,市町村社会福祉協議会,自主防災組織その他の避難支援等関係者に対し,本人の同意を得た上で名簿情報を提供すること
  • 市町村長は,災害が発生し,又は発生するおそれがある場合において,避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは,本人の同意がなくとも避難支援等の実施に必要な限度で,避難支援等関係者に対し,名簿情報を提供することができること

等を「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」(第二弾)に盛り込んだところである。

(2)避難所の良好な生活環境確保対策

東日本大震災においては,多数の被災者が長期にわたる避難所生活を余儀なくされる中,発災直後から,物資不足や災害時要援護者への対応等が課題となったほか,避難生活が長期化するにつれて,被災者の心身機能の低下を防止するための対策,施設管理者等主体の避難所運営から避難住民主体の避難所運営の切替えや被災者の生活再建に向けた取組も課題となった。

このような東日本大震災の教訓等も踏まえ,平成24年度においては,有識者等からなる「避難所における良好な生活環境の確保に関する検討会」を平成24年10月から平成25年3月にかけて5回開催して議論を行い,「避難所における良好な生活環境の確保に関する取組指針」(以下,「取組指針」という。)の策定に必要な事項等を取りまとめた。

同検討会の報告書においては,

  • 生活再建に向けた被災者の対応力の向上についても視野に入れつつ,発災後のフェーズに応じて良好な環境を提供すること
  • 避難所は地域支援の拠点としての機能を有すべきこと
  • 被災者の多様性に十分配慮すべきこと

という3点の基本的な考え方に沿って,取組指針に盛り込むべきこと等が取りまとめられた。

(3)災害救助法,災害弔慰金の支給等

「災害救助法」は,一定規模以上の災害に際して,都道府県知事が,応急的に必要な救助(避難所の設置,応急仮設住宅の供与,炊出し等による食品の給与,飲料水の供給,医療及び助産等)を被災者に対して行うものである。また,災害により被害を受けた場合に,市町村が「災害弔慰金の支給等に関する法律」に基づき,

  • 災害により死亡した方の遺族には災害弔慰金を支給
  • 災害により著しい障害を受けた者には災害障害見舞金を支給
  • 災害により負傷又は住居,家財の損害を受けた者には生活再建に必要な資金の貸し付け

を行う。

(4)被災者生活再建支援法及び住家の被害認定

<1> 被災者生活再建支援法

「被災者生活再建支援法」は,平成7年に発生した阪神・淡路大震災が契機となって平成10年に制定された法律であり,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し,被災者生活再建支援金を支給することにより,その生活の再建を支援し,もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としている。

具体的には,一定規模以上の自然災害により住宅が全壊する等の被害を受けた世帯に対し,住宅の被害状況に応じて,基礎支援金(最高額100万円)及び住宅の再建方法に応じた加算支援金(最高額200万円)が支給される。平成24年度における「被災者生活再建支援法」の適用災害は図表1-3-16のとおりである。 なお,この制度に基づく支援金の支給状況は,附属資料30のとおりである。

図表1-3-16 平成24年度における被災者生活再建支援法の適用災害 図表1-3-16 平成24年度における被災者生活再建支援法の適用災害の図表

<2> 災害に係る住家の被害認定等

災害により被災した住宅については,余震等による倒壊の危険性を判定する被災建築物応急危険度判定により,二次災害の防止が図られるとともに,全壊,半壊等の被害の程度を判定する住家被害認定により,被害規模の把握及びり災証明書の発行が行われる。り災証明書に記載される被害の程度に応じて,「被災者生活再建支援法」による支援金の支給をはじめとする様々な被災者支援措置が講じられる。

住家被害認定調査は,「災害の被害認定基準」(平成13年6月28日付内閣府政策統括官(防災担当)通知)(図表1-3-17)により,市町村により実施される。内閣府においては,被害認定調査の標準的な調査・判定方法を示す「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を平成21年6月に一部改定し,浸水被害,地震被害等について,より被害の実態に即した認定が行えるよう運用の見直しを行ったところである。さらに,東日本大震災に際してとられた措置について改めて検討したところである。

図表1-3-17 災害の被害認定基準 図表1-3-17 災害の被害認定基準の図表

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