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平成25年版 防災白書|第1部 第3章 2 2-2 災害発生時の対応及びそれへの備え


2-2 災害発生時の対応及びそれへの備え

災害発生時においては,発災直後の情報の収集・連絡,活動体制の確立と並行して,人命の救助・救急,医療,消火等の初動の応急対策活動を迅速かつ的確に講ずることが求められる。

災害応急対策は,「災害対策基本法」上も,一次的には基礎的な地方公共団体である市町村において災害対策本部を設置して対応することとなる。風水害,津波,火山の噴火のような場合であって発生が予測できるときは,市町村長が避難勧告や避難指示を発令して災害に備えることとなる。また,地震のように突発的に災害が発生した場合には,直ちに,被害の把握,人命救助等の初動の応急対策活動を実施するとともに,災害の状況に応じて,避難所の開設,水・食料等の確保,応急仮設住宅の建設等の応急対策活動を実施することとなる。

これらの活動に対して,災害の状況に応じて,地方公共団体間の相互応援協定等に基づく応援がなされるだけでなく,国,地方公共団体,公共機関等がそれぞれ相互に密接な連携のもとに協力して実施することとなる。

災害応急対策活動を実施するに当たっては,以下のような体制を国又は地方公共団体で整備している。

(1)緊急事態における初動対応

応急対策を講ずる上で最も重要となる情報収集・連絡体制の確立に関しては,官邸の内閣情報集約センターが窓口となり,24時間体制で情報の収集・伝達等の対応に当たることとし,関係省庁における情報の共有化を図っている。

大規模災害や社会的影響の大きい災害が発生した場合,緊急参集チームが官邸危機管理センターに緊急参集し,政府としての初動措置に関する情報の集約等を行うこととしている。

また,内閣府においては,被害規模の早期把握に関して,地震規模により異なるものの地震発生後概ね10分で被害を推計する「地震防災情報システム(DIS)」を整備し稼働させている。一方,被害規模の早期把握のため,各省庁はそれぞれの立場において現地の関係者からの情報を集約するほか,警察庁,消防庁,国土交通省,海上保安庁,防衛省においては,航空機(ヘリコプター等),船舶や各種通信手段の活用等により情報収集を行うこととしている。

発生した災害の規模に応じて,関係省庁間での情報共有,対策の調整を行うために,災害対策関係省庁連絡会議を開催するほか,大規模な被害が生じている場合には,内閣府特命担当大臣(防災)を本部長とする非常災害対策本部を,著しく異常かつ激甚な被害が発生していると認められる場合には,内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部を設置することができる。なお,東日本大震災を踏まえて,効率的な応急対策を実施するため,政府は情報の収集・分析や被災者の生活環境の改善に係る総合調整等の機能を充実させるとともに,併せて人員も増加し,緊急災害対策本部の体制を強化した。

さらに,被災地のより詳しい状況把握と的確な災害応急対策を講ずるため,状況により,内閣府特命担当大臣(防災)又は内閣府副大臣を団長とし,関係省庁の要員で構成する政府調査団を派遣することとしている。

(2)救急・救助体制

地方公共団体の対応能力を超えるような大規模災害の場合,警察庁,消防庁,海上保安庁及び自衛隊の実動部隊を広域的に派遣し,救急・救助活動を行う。

警察庁においては,東日本大震災を踏まえ,大規模災害発生時に被災地等において活動する部隊を拡充し,即応部隊と一般部隊からなる警察災害派遣隊(即応部隊規模:約1万人(広域緊急援助隊警備部隊約2,600人,同交通部隊約1,500人,同刑事部隊約1,500人,広域警察航空隊約500人,機動警察通信隊約1,200人,緊急災害警備隊約3,000人))を編成した。

消防庁においては,大規模な災害の際に全国の消防機関が相互に出動し効果的な消防応援活動を行うための部隊である緊急消防援助隊(平成25年4月1日現在の登録部隊数4,594隊(消火部隊1,633隊,救助部隊412隊,救急部隊1,043隊他))を的確かつ迅速に出動可能としている。また,被災地の消防の応援を行う体制を構築するため,緊急消防援助隊の編成及び資機材の充実強化を図っている。

また,海上保安庁においては,海上における災害に係る救助・救急活動を行うこととしており,さらに可能な場合は,必要に応じ,被災地方公共団体の活動を支援することとしている。

さらに,防衛省・自衛隊においては,都道府県知事等の要請に基づく災害派遣により,救出・救助等の災害応急対策活動を行うこととしている。

なお,平成24年度の自衛隊の災害派遣は520件に上り(救急患者の搬送件数も含む。),延べ約1万2,000人の人員が派遣された。

図表1-3-6 実動部隊の派遣体制 図表1-3-6 実動部隊の派遣体制の図表
(3)広域医療搬送等

<1> 広域医療搬送の目的と概要

広域医療搬送は,重傷者のうち,被災地内での治療が困難であって,被災地外の医療施設において緊急に手術や処置等を行うことにより,生命・機能の予後改善が十分期待され,かつ搬送中に生命の危険の少ない病態の患者を,被災地外の医療施設まで迅速に搬送し治療することを目的としている。

広域医療搬送の概要は,i.地震発生後速やかに被災地外の拠点に参集した災害派遣医療チーム(DMAT)が,航空機等により被災地内の航空搬送拠点へ移動,ii.被災地内の航空搬送拠点に到着したDMATの一部は,被災地内の災害拠点病院等で広域医療搬送対象患者を選出(トリアージ)し,被災地内航空搬送拠点まで搬送,iii.航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)にて,搬送した患者の広域搬送の順位を決定するための再トリアージ及び必要な追加医療処置を実施,iv.搬送順位にしたがって,被災地外の航空搬送拠点へ航空搬送し,航空搬送拠点から救急車等により被災地外の医療施設へ搬送して治療,という流れになっている。

SCU内で処置を行うDMAT (平成24年9月1日広域医療搬送実動訓練) SCU内で処置を行うDMAT (平成24年9月1日広域医療搬送実動訓練)の写真
自衛隊機へ患者を搬送するDMAT (平成24年9月1日広域医療搬送実動訓練) 自衛隊機へ患者を搬送するDMAT (平成24年9月1日広域医療搬送実動訓練)の写真

<2> 広域医療搬送計画

大規模災害発生後,速やかに広域医療搬送を実施できるよう,事前計画を策定している。現状においては,「東海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画,「東南海・南海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画及び「首都直下地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画における広域医療搬送計画が策定されている。

また,広域医療搬送の体制等に関する検討を関係省庁等が連携して行っており,その結果は図上訓練,総合防災訓練等を活用して検証し,改善に努めている。

図表1-3-7 広域医療搬送概要図 図表1-3-7 広域医療搬送概要図の図表

<3> 人工透析の提供体制の確保等

災害時における人工透析の提供体制の確保等については,厚生労働省において,「厚生労働省防災業務計画」(平成13年2月14日厚生労働省発総第11号)に定めるとともに,都道府県及び公益社団法人日本透析医会に対し,人工透析の提供体制の確保を図るよう要請してきている。今後も,都道府県及び公益社団法人日本透析医会と連携して,大規模な災害発生時にも対処できる人工透析の提供体制の確立に向けた取組を行う。

(4)広域的な応援体制

地方公共団体においては,あらかじめ関係地方公共団体により締結された広域応援協定等に基づき速やかに応援体制を整えることとしている。また,必要に応じて,被災市町村は他の市町村に対して,被災都道府県は他の都道府県に対して応援を求めることができる。さらに,平成24年の「災害対策基本法」の改正により,甚大な災害が生じた場合等において,地方公共団体間の応援では,円滑な災害応急対策が実施されないような状況においては,国に対して,他の都道府県が被災都道府県を応援するよう要求できることとなった。

国土交通省においては,TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊,約5,300人規模)や土砂災害専門家の活動計画を確立し,大規模自然災害が発生し,又は発生するおそれがある場合において,被災地方公共団体等が行う,被災状況の迅速な把握,被害の発生及び拡大の防止,被災地の早期復旧等,災害応急対策に対する技術的な支援を行うこととしている。

平成24年は九州北部豪雨等,被災地域へ延べ1,075人・日の隊員を派遣し,的確な被災地支援活動を行った。

また,TEC-FORCE隊員の養成及び増員並びに災害対策用の資機材の充実を図った。

(5)円滑な物資供給体制の構築に向けた取組

<1> 災害に強い物流システム構築に向けた取組

東日本大震災の支援物資物流においては,早期に物流事業者・物流事業者団体が参加していなかったこと等により,円滑な輸送や物資集積拠点の運営等に支障が生じた。そのような教訓を踏まえ,国土交通省では,平成23年度に,有識者,物流事業者・団体から構成されるアドバイザリー会議を開催し,支援物資物流に係る課題について整理・分析し,支援物資物流システムの基本的な考え方について報告書を取りまとめ公表した。また,首都直下地震,南海トラフ巨大地震の発生による被害が懸念される4ブロック(関東,東海,近畿,中四国・九州)において,学識経験者,関係自治体,物流事業者等で構成される「民間の施設・ノウハウを活用した災害に強い物流システムの構築に関する協議会」を設置し,支援物資の広域的な受入拠点(広域物資拠点)としての活用を想定する民間物流施設(民間物資拠点)を395箇所リストアップするとともに,官民の協力協定の締結・拡充の促進等の取組を実施した。

平成24年度は,東北地域において,新たに「東北地域における災害に強い物流システムの構築に関する協議会」を立ち上げ,震災時に支援物資物流に直接に携わった関係者の経験を基にして全国に展開すべき知見を整理した。また,平成23年度から取組を進めている上記4ブロックに対応する地域では,引き続き協議会を開催し,各地域で想定される大規模な災害の被害想定を基にして,支援物資物流に関するシステムの検証等を実施した。さらに,全国で民間物資拠点を新たに539箇所(延べ934箇所)リストアップする等の取組を進めた。

さらに,平成23年度及び平成24年度において,民間物資拠点を対象にした非常用電源設備,非常用通信設備の導入支援を実施した。

今後は,平成24年度に各地域で取りまとめた知見等を「マニュアル」等のかたちで統一化すること等に取り組むこととしている。

民間物流事業者の協力による支援物資搬入作業の様子 民間物流事業者の協力による支援物資搬入作業の様子の写真

<2> 食料等の供給における震災応急業務体制の整備

農林水産省においては,東日本大震災の教訓等を踏まえ,災害発生時における応急用食料や物資の支援・供給に関する組織体制や具体的手順等を整理した省内マニュアルを作成し,震災応急業務の体制整備を行った。

今後とも,定期的に訓練等を実施するとともに,マニュアルの点検・見直しを行っていくこととしている。

<3> 生活必需物資等の供給における震災応急業務体制の見直し

経済産業省においては,東日本大震災の経験を踏まえ,災害時に必要とされる生活必需物資リストの見直しを行い,関係団体等との連絡体制を構築した。

また,必要な情報の欠落等により物資調達・輸送活動が混乱・停滞したため,問題の解決に向け,平成23年度から24年度にかけて,支援物資供給の効率化事業を実施した。事業者・地方公共団体へのヒアリングやデータの収集・分析を行うとともに,物流事業者・被災地方公共団体・有識者等で構成された検討会において,情報共有の在り方等について議論を重ねた。その結果として,共有すべき情報項目の整理や標準フォーマットやマニュアルの策定等を行った。現在,関係府省庁において,策定したフォーマットを基に,災害時の物資調達・輸送活動時における具体的な情報共有方法に関する検討を行っている。

さらに,政府が民間企業に対して,支援物資の提供を迅速・円滑に依頼する体制を整えるため,平成24年度に,流通事業者,有識者等で構成された検討会において,大規模災害に備えた政府の情報収集体制の在り方に関して議論を行った。本検討会での議論を基に,国内の大手メーカー,卸売業,及び小売業に対して,政府は,生産又は配送拠点の情報,当該拠点における生活必需品等物資の情報を集約する取組を試行的に実施した。

<4> 災害時を想定した流通サプライチェーンの強靭化

東日本大震災においては,商業流通網の混乱等から,被災地のみならず全国で局地的に生活必需品等の商品・物資不足が発生し,大きな社会不安が発生した。これを受けて,経済産業省においては,今後の首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の大規模災害を想定し,食品や日用雑貨等生活必需品に関して,災害時であっても円滑な配送・在庫配置・店舗販売が行われ,消費者に物資が届くようにすることを念頭に,小売業の事業継続計画(BCP)の策定状況や上記のような大規模災害を想定した策定の在り方等について,平成24年度に調査を行った。

<5> 災害に強い石油・LPガスサプライチェーンの構築に向けた取組

東日本大震災において石油やLPガスのサプライチェーンが地震や津波による大きな被害を受けた教訓を踏まえ,経済産業省においては,平成24年度に,災害時における石油・LPガスの迅速な供給を確保するため,「石油備蓄法」の改正,石油製品の形態での国家備蓄の増強,製油所,油槽所,SS(サービスステーション),LPガス充填所の災害対応能力の強化に取り組んだ。

「石油備蓄法」の改正では,i.経済産業大臣が災害時にも備蓄放出を判断できるよう,海外からの石油・LPガスの輸入不足の場合に限定されていた備蓄放出要件の見直し,ii.石油会社・LPガス会社が災害時に共同して石油・LPガスを供給する計画(災害時石油供給連携計画,災害時石油ガス供給連携計画)の策定義務化,iii.災害時の地域の石油供給の拠点となるSSの届出義務化(中核SS)等を措置した。

国家備蓄については,国内消費量1日分の石油製品(ガソリン,灯油,軽油,A重油)の備蓄を平成24年度に完了した。

サプライチェーンの災害対応能力強化の取組としては,製油所,油槽所,SS,LPガス充填所における非常用発電機導入や耐震強化等への支援を行った。引き続き石油・LPガスのサプライチェーンの災害対応能力強化の取組や在り方について検討していくこととしている。

(6)情報収集・伝達体制

大規模な災害が発生した際,政府として迅速な災害応急対策がとれるよう,気象庁からの地震・津波情報,関係省庁等からのヘリコプターにより撮影された被災映像,指定公共機関,地方公共団体,その他防災関係機関からの被害情報等,災害に関する情報を総合的に収集し被害規模を把握するとともに,これらの情報を直ちに総理大臣官邸,指定行政機関等へ伝達するためのシステムが構築されている。

まず,地震の情報については,気象庁は,全国約660地点に震度計と約280地点に地震計を設置してオンラインで地震の観測データを収集し,その他の機関の観測データとあわせ地震活動等総合監視システム(EPOS)により処理・解析して,緊急地震速報や地震情報を発表している。

また,消防庁は,震度情報ネットワークシステム整備事業等により全国の都道府県,市町村の約2,900地点に設置した震度計等から観測される震度情報を即時に情報収集し,広域応援体制確立の迅速化等に利用している。

一方,独立行政法人防災科学技術研究所は,全国約1,700箇所に強震計を設置し,地震情報を通信ネットワークで収集・配信するための設備を整備しており,地震発生時には気象庁が行う震度情報の発表に活かされる等,初動対応等に活用されている。

次に,津波の情報については,気象庁は,全国の沿岸約80箇所に津波観測施設を設置しているほか,関係機関(国土交通省,海上保安庁,国土地理院,地方公共団体等)が設置している観測施設からのデータも活用し,全国の沿岸約170箇所で津波の監視を行っている。また,沖合の津波監視については,国土交通省が整備したGPS波浪計や,気象庁や関係機関(海洋研究開発機構,防災科学技術研究所)が設置したケーブル式海底津波計に加え,気象庁が新たに整備した3箇所のブイ式海底津波計と合わせて約50箇所の沖合観測施設からのデータを活用している。気象庁は,地震計のデータやこれらの津波の監視に用いているデータを基にEPOSにより処理・解析して,地震により日本沿岸に津波が到達するおそれがある場合や,津波を観測した場合には,津波警報・津波注意報,津波予報,津波情報を発表している。

この他,防災科学技術研究所や海洋研究開発機構では,緊急地震速報や津波警報の高度化に貢献するため,海底地震・津波観測網を整備し,観測の充実を行うこととしている。

雨量・風速等の情報について気象庁は,局地的な気象情報の観測を行う地域気象観測システム(AMeDAS),降水の強さ・風の3次元分布を観測する気象ドップラーレーダー,東アジア・西太平洋域の雲の分布・高度等を広く観測する静止気象衛星等を活用して観測データを収集し,数値解析予報システムにより解析,予測等を行っている。

気象庁で解析・処理された情報は,気象庁本庁及び大阪管区気象台に設置された気象情報伝送処理システムを介して内閣府,警察庁,消防庁,海上保安庁,防衛省等の中央府省庁と共に,国土交通省地方整備局,地方公共団体に伝達されている。

また,国土交通省は,河川の水位,雨量,洪水予報,水防警報等の河川情報をリアルタイムに収集し,ウェブサイト「川の防災情報」や地上デジタル放送のデータ放送において,提供している。

(7)防災無線通信網

防災関係機関では,災害応急対策や救助・救命等に係わる重要な通信を確保するために,専用無線通信網を整備している。これらの無線通信網は,電気通信事業者回線が途絶した場合であっても迅速かつ確実に災害情報を伝達し,また,商用電源が停電した場合であっても予備電源等により機能を維持することを目指して整備がなされている。最近は,映像や電子データの伝送を可能とするため,通信回線のデジタル化が進められている。

我が国の防災無線網には,中央防災無線網,消防防災無線網,都道府県防災行政無線網,市町村防災行政無線網等がある(図表1-3-8)。

図表1-3-8 防災関係通信網の概念図 図表1-3-8 防災関係通信網の概念図の図表

<1> 中央防災無線網

中央防災無線網は,大規模な災害が発生した場合においても,政府による災害情報の収集・伝達を確実に行うことを目的として整備されており,総理大臣官邸や指定行政機関等(30機関),指定公共機関(56機関)及び地方公共団体(47都道府県5政令市)とのネットワークに加えて,災害発生時には現地災害対策本部等との臨時ネットワークを構築することができる(図表1-3-9)。

中央防災無線網では,電話,ファクシミリ,災害映像伝送,総合防災情報システム,ファイルサーバの利用が可能である。

中央防災無線網を構成する地上系固定通信回線,衛星通信回線,移動無線回線の概略は以下のとおりである。

  • 地上系固定通信回線

    首都圏では,マイクロ波無線による大容量の固定通信回線を構築している。さらに,国土交通省の水防道路用通信回線網(マイクロ波無線)と中央防災無線網との相互接続及び設備共用により,47都道府県と総理大臣官邸及び防災行政機関との間の通信回線を確保している。

  • 衛星通信回線

    東京都心から離れたところにある指定公共機関等については,衛星により通信回線を構築している。また,首都直下地震に対する地上系固定通信回線のバックアップとして,首都圏の指定行政機関や指定公共機関等に衛星通信装置を配備している。加えて,災害発生時に現地災害対策本部等との臨時ネットワークを構築するために,可搬型の衛星通信装置を全国20拠点に配備している。

  • 移動無線回線

    電気通信事業者の通信回線が,災害や輻輳等により使用できない状況下においても,閣僚や災害対策要員等との連絡手段を確保するために,移動無線電話を整備している。移動無線電話は,首都圏4箇所に基地局を設置し,公用車及び閣僚や災害対策要員等の自宅に移動無線電話装置を配備している。

    図表1-3-9 中央防災無線網の概念図 図表1-3-9 中央防災無線網の概念図の図表

<2> 消防防災無線網

消防防災無線網は,消防庁と都道府県との間を結ぶネットワークで,地上系回線及び衛星系回線で構成されている(図表1-3-10)。

  • 地上系回線

    国土交通省の無線設備と設備を共用して通信回線を構成しており,消防庁から全都道府県に対し電話,ファクシミリによる一斉伝達を行うほか,災害情報の収集・伝達に活用されている。

  • 衛星系回線(衛星通信ネットワーク)

    消防庁と全都道府県との間を結んでおり,通常の音声通信のほか,一斉伝達,データ通信,映像伝送等が可能で,地上系を補完する無線通信網として位置づけられている。

    図表1-3-10 消防防災無線の概念図 図表1-3-10 消防防災無線の概念図の図表

<3> 都道府県防災行政無線網

都道府県防災行政無線網は,都道府県が災害情報の収集・伝達を行うために,都道府県とその出先機関,市町村,防災関係機関等との間を結ぶネットワークで,各機関によって地上系又は衛星系(衛星通信ネットワーク)の回線により構成されている(図表1-3-11)。

図表1-3-11 都道府県防災行政無線の概念図 図表1-3-11 都道府県防災行政無線の概念図の図表

<4> 市町村防災行政無線網

市町村防災行政無線網は,市町村が災害情報を収集し,また,地域住民に対し災害情報を周知するために整備している通信網である。市町村の庁舎や学校,病院等の防災関係・生活関連機関,車両等の間を結ぶ通信網と,市町村庁舎から屋外拡声子局や家庭内の戸別受信機に対し情報を周知するための同報系通信網によって構成されており,豪雨等の災害発生時における住民への情報伝達手段として活用されている(図表1-3-12)。

また,消防庁においては,弾道ミサイル攻撃に関する情報や,津波警報等の緊急情報を,人工衛星等を通じて市町村に瞬時に伝達し,同報系の防災行政無線等にも接続可能な全国瞬時警報システム(J-ALERT)を整備・運用している。

図表1-3-12 市町村防災行政無線の概念図 図表1-3-12 市町村防災行政無線の概念図の図表

<5> 防災相互通信用無線

防災相互通信用無線は,地震災害,コンビナート災害等の大規模災害に備え,災害現場において警察庁,消防庁,国土交通省,海上保安庁等の各防災関係機関相互間で,無線通信により直接,被害情報等を迅速に交換し,防災活動を円滑に進めることを目的として整備されたもので,国,地方公共団体,電力会社,鉄道会社等で導入されている。

<6> その他

総務省においては,地方公共団体等における被害情報の収集や災害応急対策の実施に必要な通信手段の不足に備え,被災地方公共団体等から災害対策用移動通信機器の貸出要請があった際に,東京,大阪等の各拠点から,移動無線機を速やかに搬出できるよう体制を整備している。

(8)防災情報の活用

収集・伝達された防災情報は,防災関係機関が密に連携し災害対応に取り組むため広く共有される必要がある。内閣府では,災害発生時に被災状況を早期に把握し,迅速かつ的確な意思決定を支援するため,防災関係機関内で防災情報を地理空間情報として共有する「総合防災情報システム」の整備を進めている。

総合防災情報システムにおいて取り扱う防災情報は大きく3つに分類される。

一つ目は,施設情報や基盤地図情報,災害リスク情報等,主に予め登録された情報である。これには,国土地理院が整備する電子国土基本図や「だいち」により撮影された平常時の衛星画像等の背景地図,病院・避難施設・学校等の施設情報や危険物施設等の重要施設のほか,地域防災計画等に定められている緊急輸送ルートやヘリポート,活動拠点等がある。

二つ目は,他機関から自動的に受信する観測情報である。これには,気象庁から配信される気象,地震・津波情報,河川情報等がある。

三つ目は,災害に応じて収集・公表される情報を入力した防災情報等である。これには,関係省庁が取りまとめる被害報告,水道や通信等の被災状況,交通インフラの情報等がある。

これらの情報は地震発災直後には緊急災害対策本部設置の判断等に活用されるほか,応急・復旧期には関係機関により報告される被害報や活動状況等を地図上に重畳し,関係省庁会議等において情報共有される。今後,他機関システムとの連携強化,インターネットを通じた防災情報の提供を進める。

図表1-3-13 総合防災情報システムにおいて共有される情報のイメージ 図表1-3-13 総合防災情報システムにおいて共有される情報のイメージの図表
(9)行政機関の業務継続体制

中央省庁等の首都中枢機関は,首都直下地震対策大綱において,首都直下地震等の発災時に首都中枢機能の継続性を確保する観点から,業務継続計画を策定することとされている。平成25年3月末現在,平成24年9月に設置された原子力規制委員会を除き,各省庁においては,業務継続計画が策定され,内容の更なる充実を図るため,同計画の見直しを進めているところである。また,今後,政府全体の業務継続計画を策定することとしている。

一方,地方公共団体は,災害時に災害応急対策活動や復旧・復興活動の主体として重要な役割を果たしつつ,地域の住民生活に不可欠な通常業務を継続することが求められている。内閣府では,平成22年4月,「地震発生時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説(第1版)」を策定し,地方公共団体における業務継続の取組を支援しているところである。

東日本大震災では,地震・津波により,地方公共団体の庁舎や首長,職員が大きな被害を受け,行政機能の維持や災害応急対策活動に著しい支障が生じた。しかしながら,地方公共団体における業務継続計画の策定率は,近年,伸びているものの,平成23年4月現在,都道府県で38.3%,市町村で4.3%と低水準に留まっている(図表1-3-14)。

内閣府においては,上記手引きの改訂等を通じ,引き続き,地方公共団体の業務継続体制の充実・強化を支援していくこととしている。

図表1-3-14 地方公共団体の業務継続計画の策定状況 図表1-3-14 地方公共団体の業務継続計画の策定状況の図表

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