平成25年版 防災白書|第1部 第3章 2 災害対策に関する施策の取組状況


2 災害対策に関する施策の取組状況

2-1 事前防災

災害による被害の発生を未然に防止し,あるいは軽減するためには,災害に強い国づくり,地域づくりのための施策を進めるとともに,防災に関する調査・研究・観測を通じた最新の科学的知見を反映した防災対策の取組が重要である。また,国民一人一人が,平時及び災害発生時において「自らが何をすべきか」を考え,災害に対して十分な準備をするよう促すため,防災訓練等の実施が重要である。

(1)防災に関する科学技術の研究の推進

災害対策を効果的に講じるため,科学技術の分野において,以下のような方針を策定し,防災に関する科学技術の研究を推進している。

我が国の科学技術基本政策の方針を記した「第4期科学技術基本計画」(平成23年8月閣議決定)においては,科学技術政策により目指すべき国の姿として,<1>震災から復興・再生を遂げ,将来にわたり持続的な成長と社会の発展を実現する国,<2>安全かつ豊かで質の高い国民生活を実現する国,<3>大規模自然災害等,地球規模の問題解決に先導的に取り組む国,<4>国家存立の基盤となる科学技術を保持する国等を掲げた上で,「震災からの復興,再生の実現」等を,東日本大震災から力強く復興,再生を遂げ,将来にわたり,持続的な経済成長と社会の発展を実現するための主要な柱として位置付けるとともに,「我が国が直面する重要課題への対応」として,それと同等に取り組むべき課題を掲げている。これらの課題の達成に向けて重点的に推進すべき施策の基本的方向性としてこれまでの分野別の重点化から重要課題の達成に向けた施策の重点化への転換,重要課題の達成に向けたシステム改革,世界と一体化した国際活動の戦略的展開等に取り組むこととしている。

さらに,官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上,政府研究開発投資を対GDP比の1%,第4期基本計画期間中の政府研究開発投資の総額の規模を約25兆円とすることを目標として明示している。

また,文部科学省に設置されている地震調査研究推進本部においては,「新たな地震調査研究の推進について-地震に関する観測,測量,調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-」(平成21年4月)等の方針に基づき,活断層調査の総合的推進,地震調査研究の重点的推進を図っている。

(2)災害に強い国づくり,地域づくり

地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土と地域を目指して,国土保全,地域づくりを推進するとともに,主要な交通・通信機能の強化,構造物・施設,ライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。

風水害,土砂災害,地震・津波災害,火山災害等の自然災害から国土並びに国民の生命・身体及び財産を保護するため,治山・治水,海岸等の国土保全施設の整備や老朽化した社会資本の適切な維持管理に取り組んでいる。

また,大規模災害に対しても多様な輸送手段の選択が可能となるよう,高速道路のミッシングリンクの解消等による道路ネットワークの強化や鉄道施設の耐震化,耐震強化岸壁の整備,空港施設の耐震化等を進めている。

今後発生が懸念される大規模地震においても建物等の倒壊による大きな被害が想定されていることから,住宅・学校・病院等の建築物やライフライン,インフラ施設等の構造物の耐震化,天井等の非構造部材の脱落防止対策等を推進している。また,大規模な盛土造成地について,地震発生時に地すべりや崩壊のおそれのある区域を特定し,液状化対策を含めた総合的な宅地の耐震対策を推進している。

さらに,地震被害に対する都市の防災性向上のため,根幹的な公共施設等の整備を推進している。都市公園事業及び街路事業等の活用による避難地・避難路の整備の推進,都市防災総合事業等を活用し,避難地,避難路周辺の不燃化を促進し,延焼遮断帯の形成を図っている。

津波対策について,海岸保全施設等の整備に加えて,海岸防災林の整備,土地のかさ上げ,津波避難ビルや避難路・避難階段の整備等を行っている。

風水害を始めとした災害発生時には,災害に関する情報や避難勧告等の情報を正確かつ円滑に伝達するため,防災行政無線,テレビ,ラジオ,携帯電話等多様なメディアの多重活用,災害時の通信遮断を回避するためのネットワークの多重化や優先迂回路等の整備等,情報通信手段の確保を図っている。

農山漁村については,決壊時に甚大な被害を及ぼすおそれのあるため池の整備等のハード整備と防災情報提供システムの整備等のソフト対策の一体的な実施による農用地及び農業用施設等の防災・減災対策を実施している。また,避難路としても機能する林道,災害時の避難地や災害対策拠点として活用するための漁村広場や公園,緊急物資輸送に資する漁港の耐震岸壁,災害対策上必要な施設の整備を実施している。

また国土形成計画(広域地方計画)について,東日本大震災を受け,国土審議会防災国土づくり委員会において,平成23年7月に「災害に強い国土づくりへの提言」が取りまとめられたことを踏まえ,各広域地方計画について総点検を実施したところであり,引き続き,災害に強い地域づくりの取組等を進めていく。

(3)防災拠点施設

首都圏における大規模地震・津波災害の発生に備え,緊急災害対策本部が官邸に設置できない場合の代替施設の1つである「災害対策本部予備施設(立川広域防災基地内)」及び緊急災害現地対策本部が設置されることとなる「東京湾臨海部基幹的広域防災拠点施設(有明の丘地区・東扇島地区)」が維持,管理及び運用されている。また,首都圏以外の地域における大規模地震・津波災害の発生に備え,被災地の災害応急対策に係る連絡調整を実施する緊急災害現地対策本部の設置場所を既存施設の中から順次選定している。

その他の防災拠点施設については,各施設の管理者において整備や耐震化,設備機能強化等を進めている。地方公共団体が主体となり防災拠点施設の整備等を実施する場合は,その用途や機能に応じて,国土交通省の社会資本整備総合交付金等により,国が支援をしている。

(4)防災訓練

<1> 防災訓練の意義,必要性

災害が発生した場合においては,国の行政機関,地方公共団体,その他の公共機関等の防災関係機関が一体となって,国民と連携しつつ対応することが求められる。

防災関係機関の災害への対応に関して,災害対策基本法,防災基本計画,その他の各種規定等に基づき防災訓練を行うことが定められている。

防災訓練の実施に当たっては,平成23年3月の東日本大震災の教訓や南海トラフ巨大地震の被害想定等を踏まえ,災害発生時の応急対策に関する検証・確認による災害対応力の向上とともに,国民の防災意識の高揚を図る必要がある。

中央防災会議では,毎年度,訓練を実施する際の基本的な考え方と,政府,地方公共団体等が連携・協力して行う総合防災訓練の概要等を示した「総合防災訓練大綱」を決定しており,政府,地方公共団体等の各防災関係機関は,この大綱に基づいて各種訓練の推進を図っている。

<2> 平成24年度に政府が実施した主な防災訓練

首都直下地震を想定し,首都中枢機能の停止に伴う各種障害等への対応を協議する緊急災害対策本部会議等の訓練(平成24年9月1日,「防災の日」政府本部運営訓練)や緊急災害対策本部事務局の機能を検証するロールプレイング形式の図上訓練(平成25年1月10日,政府図上訓練)を実施した。また,南海トラフ巨大地震を想定し,広域医療搬送に関するDMAT及び患者輸送,広域搬送拠点臨時医療施設運営等支援等の総合的な実動訓練(平成24年9月1日,広域医療搬送訓練)や地震に伴う津波による被害の軽減を図るため,防災関係機関等が協力・連携した「津波防災訓練」(平成24年9月2日),さらには,中部ブロックにおいて,政府現地対策本部の設置・通信連携及び関係省庁,地方公共団体等関係機関との実動訓練(平成25年2月7日,広域連携防災訓練)等を実施した(附属資料24)。

<3> 平成25年度に政府が実施を予定している主な防災訓練

東日本大震災の教訓や平成24年度実施訓練のフォローアップ結果等を踏まえ,平成25年度総合防災訓練大綱を以下のように定めた(図表1-3-5)。

9月1日の「防災の日」に行う政府本部運営訓練について初めて南海トラフ巨大地震を想定して実施するとともに,首都直下地震発生時における総理以下,全閣僚の安否確認と参集手段の確保を図る図上訓練を初めて実施する等,実践的・効果的な訓練の推進,多数の主体が参加・連携する訓練等を通じて災害対応力の向上に取り組むこととした。

図表1-3-5 平成25年度総合防災訓練大綱 図表1-3-5 平成25年度総合防災訓練大綱の図表

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