平成25年版 防災白書|第1部 第1章 6 6-4 原子力防災の改善


6-4 原子力防災の改善

(1)原子力災害対策の体制整備

東京電力(株)福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を踏まえた新たな原子力災害対策を構築するため,平成24年9月19日の原子力規制委員会の設置に合わせ,「原子力基本法」,「原子力災害対策特別措置法」等の関連法令が改正され,政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築された(図表1-1-15参照)。

原子力災害対策に係る施策は,政府全体が一体的に取り組み,これを推進することが必要である。このため,政府全体の原子力防災対策を推進するための機関として,内閣に「原子力防災会議」が設置され,原子力規制委員会委員長が会議の副議長に位置づけられた。また,大量の放射性物質の放出等,原子力緊急事態が発生した場合に設置される「原子力災害対策本部」においては,原子力規制委員会委員長がその副本部長に位置づけられ,原子力施設に係る技術的・専門的事項の判断については,原子力規制委員会が一義的に担当することとなった。

また,このような新たな原子力災害対策の体制整備に伴い,平成24年9月6日,我が国の防災に関する方針をまとめた防災基本計画の原子力災害対策編が改正された。さらに,原子力災害発生時の対応について,原子力規制委員会を含めた関係省庁の具体的な活動要領を定めるため,平成24年10月19日に開催された第1回原子力防災会議において,原子力災害対策マニュアルが了承された。同マニュアルにおいては,政府としての具体的な要員配置や対応手順等が定められ,原子力規制委員会が,総理官邸内に設置される原子力災害対策本部の事務局の中枢となり,情報収集・情報発信,事業者の事故収束活動の監督,避難等の周辺住民に対する防護措置に係る専門的判断等を行うこととされた。

図表1-1-15 政府の原子力防災体制 図表1-1-15 政府の原子力防災体制の図表
(2)原子力災害対策指針の策定

「原子力災害対策特別措置法」では,原子力規制委員会は,事業者,国,地方公共団体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため,原子力災害対策指針を定めることとされている。このため,原子力規制委員会において,発足後速やかに同指針の議論を開始し,平成24年10月31日に同指針を策定した。同指針においては,以下のような点について規定した。

  • 住民の視点に立った防災計画を策定すべきであるという考え方
  • 原子力事業者における災害の防止に関する必要な措置を講ずる責務の明確化
  • 即時避難を実施するためのPAZ(施設から概ね5kmを目安),状況に応じて避難等を実施するためのUPZ(施設から概ね30kmを目安)の設定
  • 避難を含めた防護措置の実施基準となるEAL(緊急時活動レベル),OIL(運用上の介入レベル)の導入
  • PAZにおいて,原子力規制委員会の一義的な判断の下,即時避難と同時に安定ヨウ素剤の投与指示を行い,住民等が服用すること
  • 避難の際の要援護者に対する配慮の必要性
  • 緊急時環境放射線モニタリングの実施及び事業者の拡散予測結果の確認・検証
  • 複合災害等を想定した訓練の実施や諸設備の整備
  • オフサイトセンターの要件の明確化
    <1>PAZ圏外,UPZ圏内の設置
    <2>耐震性や非常電源,放射線防護設備等の機能強化
    <3>UPZ以遠における代替オフサイトセンターの確保 等

その後も,緊急時における防護措置の判断基準やそれに応じた防護措置,スクリーニングや安定ヨウ素剤の予防服用等の被ばく医療等について,内容の充実を図るべく,原子力規制委員会委員,外部有識者,原子力規制庁職員等から成る検討チームを設け,検討を行った。それを受けて,原子力規制委員会において,平成25年1月30日には,原子力災害対策指針の改定原案を取りまとめ,パブリックコメントを行った上で,同年2月27日,同指針の改定を決定した。同指針に基づく地域防災計画については,同年4月末時点で,対象となる地方公共団体のうち4分の3以上が策定を終えており,地域の原子力防災体制の充実・強化を図るため,引き続き地方公共団体の取組を支援していくこととしている。また,防災資機材やオフサイトセンターの整備支援に必要な予算を計上し,地域における原子力災害対策の体制整備を図った。


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