平成25年版 防災白書|第1部 第1章 3 復興状況と復興に向けた取組


3 復興状況と復興に向けた取組

3-1 インフラとまちづくりの再建

(1)公共インフラの本格復旧・復興の状況

今回の地震では,従前の想定をはるかに超える規模の津波が発生し,地震による被害だけでなく,津波や地盤沈下等の被害が著しく大きくなった。このため,災害時の被害を最小化する減災の観点から,構造物による防御のみならず,逃げることを前提とした地域づくりを基本に,ハードとソフトの施策を組み合わせた多重防御による災害に強いまちづくりを推進しており,これらを定めた復興計画のもと,公共インフラの災害復旧を進めるとともに,住宅等の移転やかさ上げ,新たな公営住宅の建設等,復興まちづくりに着手している。

各種インフラ等の復旧・復興状況については,対象18事業(図表1-1-3~図表1-1-5,図表1-1-7の各項目をさらに関連する分野ごとにまとめたもの)について,所管省庁による工程の進捗確認を実施した。その結果,11事業は「概ね平成24年度に目標達成」もしくは「平成24年度に目標達成」,海岸対策等3事業及び災害廃棄物の処理等4事業の一部が「平成25年度に目標達成がずれ込む」となっている。

事業の進捗は,手順やスケジュール等を示した事業計画・工程表を市町村ごとに公表して見える化を図り,PDCAサイクルを用いた事業者による進捗確認や関係者のみならず住民等との情報共有を行っている。

また,復旧・復興事業を進めるに当たり,用地取得を迅速化するための取組,不足する人材や資材を確保するための取組や予定価格に実勢を適切に反映するための取組等,円滑な施工の確保に努めている。

図表1-1-3 被災地域の安全を確保するための各種インフラの復旧・復興状況 図表1-1-3 被災地域の安全を確保するための各種インフラの復旧・復興状況の図表
図表1-1-4 被災地の交通ネットワークの復旧・復興状況 図表1-1-4 被災地の交通ネットワークの復旧・復興状況の図表
図表1-1-5 被災地域の主な産業基盤である農業,林業,水産業の復旧・復興状況 図表1-1-5 被災地域の主な産業基盤である農業,林業,水産業の復旧・復興状況の図表
(2)復興まちづくりの取組と状況

沿岸部の被災市町村においては,復興計画が策定されており,土地区画整理事業や防災集団移転促進事業の個別事業の実施のため,調査や手続きが行われているが,他の震災事例と比較しても大規模となることが予想される。

復興まちづくり事業の加速化を図るため,平成25年1月10日の第5回復興推進会議における総理指示を受け,同年1月29日の第6回復興推進会議において当面の取組等が取りまとめられた。平成24年度補正予算においては,津波被災地域の住民の定着促進のため,取崩し型復興基金の積増し等について震災復興特別交付税の増額措置が講じられた。

図表1-1-6 住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた施策パッケージ(概要) 図表1-1-6 住宅再建・復興まちづくりの加速化に向けた施策パッケージ(概要)の図表

さらに,復興大臣のもとに,省庁横断的な「住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォース」が設置され,平成25年3月と4月に,住宅再建・復興まちづくりの加速化措置を取りまとめたところである。同年3月には,住宅再建等の時期の目安を示すため,各市町村の地区ごと・年度ごとに作成し供給戸数を明示した,「住まいの復興工程表」が公表された。工程表は,今後四半期ごとに更新し,公表することとしている。

具体的には,被災自治体における人員やノウハウの不足を補い,事業を進める必要があることから,全国の自治体からの職員派遣の更なる強化に加え,公務員OB,民間実務経験者,青年海外協力隊帰国隊員等の活用,市町村の発注業務の負担を軽減する発注方式の導入,都市再生機構の活用等に取り組むこととしている。

さらに,用地取得の迅速化として,地方公共団体に対する関係省庁・県の専門家で構成される実務支援チームによる支援や財産管理人制度の円滑な活用,土地収用手続きの迅速化等に取り組むこととしている。さらに,埋蔵文化財発掘調査の簡素化・迅速化として,全国からの発掘担当者の派遣体制の充実等を図るとともに,技術者・技能者の確保対策として,被災地と被災地以外の建設企業が共同する復興JVの導入や発注ロットの大型化等に取り組むこととしている。また,資材不足対策として,公共による公共事業専用プラントの設置等に取り組むこととしている。これらの取組により,復興まちづくり事業の加速化を図ることとしている(図表1-1-6)。

各事業の進捗状況については,平成25年3月末時点で,高台移転等の防災集団移転促進事業の実施が想定される328地区中,325地区において事業着手の法定手続である大臣同意に至っている。また,土地区画整理事業については,想定される59地区中,44地区において事業着手の法定手続である都市計画決定に至っている。

復興住宅について,各県が公表している災害公営住宅の必要戸数は,2万1,743戸であり,このうち,整備に着手した戸数は,平成25年3月末時点で,8,952戸(約41%)となっている。

医療施設については,被災直後に入院の受入制限又は受入不可を行った病院184箇所中,当該制限等から回復した病院は,平成25年3月末時点で,166箇所(約90%)となっている。学校施設については,公立学校施設災害復旧事業に申請した(予定含む)学校2,328校中,復旧が完了した学校は,平成25年3月末時点で,2,148校(約92%)となっている。

図表1-1-7 被災者が安心して生活するために必要な住宅,医療・学校施設等の復旧・復興状況 図表1-1-7 被災者が安心して生活するために必要な住宅,医療・学校施設等の復旧・復興状況の図表

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