平成25年版 防災白書|第1部 特集 5 まとめ


5 まとめ

今回の特集では,国及び地方公共団体だけでなく,住民,地域コミュニティ,企業,災害ボランティア等の多様な主体によって実施されている災害による被害の軽減に向けた取組について分析を行った。

国及び地方公共団体においては,住民等の命を守るため,住宅,多数の者が利用する建築物及び公立学校の耐震化については,目標を定めたうえで,その達成に向けて耐震化の促進が図られている。病院については,災害拠点病院及び救命救急センターについては,ほぼ全ての建物について耐震化が進んでいるが,一般の病院全体の耐震化を推進することが必要である。防災拠点施設等や国の庁舎については,その災害時の役割の重要性や首都直下地震が発生した際に政府の業務継続を確保するため,更なる耐震化の促進が必要である。公共インフラについては,災害時の応急活動を支える重要な基盤となるものであり,重点的に取組を進めていく必要がある。

地方公共団体相互の応援協定の状況をみると,阪神・淡路大震災を契機に隣接する地域ブロックでの締結見直しが進んでいることがわかった。南海トラフ巨大地震等の大規模広域災害を念頭に,都道府県,市町村,さらには,国も含めた全国規模での広域応援体制の確立が急がれている。また,地方公共団体と企業等との協定については,分野によって締結状況も様々であるが,今後全ての分野にわたって,必要に応じて協定の締結を進めるべきである。

備蓄については,各地方公共団体ごとに,被害想定をもとに備蓄量を定め,計画的により一層備蓄を推進することが必要である。また,児童生徒等を想定して備蓄をしている学校の割合は,飲料水,食糧については3割程度であり,取組を促進していく必要がある。

防災訓練については,一つの地方公共団体当たり年数回程度実施されているが,多様な災害形態,地域特性,参加者等を踏まえて行う必要があることから,より一層の取組の強化が必要である。

住民における取組をみると,大地震に備えて携帯ラジオ,懐中電灯等の準備でさえ6割の住民しか実施していないことがわかった。日頃から災害による被害を軽減するための取組が行われるよう普及啓発を図ることが重要である。また,災害に備え非常用食糧の備蓄を行っている住民は,5割以下であることがわかった。若年層も含め住民全体のより一層の備蓄を高めるための取組が必要である。

地震保険については,加入者が増加傾向にあるものの,全世帯に占める割合は1/4程度に過ぎないことから,今後さらに加入を進める必要がある。

災害ボランティア,企業,地域コミュニティにおける取組をみると,東日本大震災後,災害ボランティアに参加する者の数が大きく増加したほか,企業の防災意識や社会貢献意識が高まっているとともに,事業継続に向けた取組が進んでいることが分かった。

消防団は,地域の防災活動の要になっているが,社会環境の変化に伴い,団員の減少,高齢化等が進んでいるが,女性の消防団員数が増加していることがわかった。自主防災組織については,組織数及び活動カバー率の上昇が緩やかであるが,地域によって活動カバー率に差があることがわかった。

このほか,住民,自主防災組織,事業者等多様な主体が,地域コミュニティにおける防災計画を作成している事例,自らが主体となって防災訓練を実施している事例等被害の軽減に向けた自発的な防災活動に関する取組も活発になってきている。これらは,今後の地域における自発的な取組の参考となるものである。

首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の大規模地震の発生が懸念される中,国及び地方公共団体における取組をさらに強化し,ソフト,ハード対策を組み合わせた防災・減災対策を進めていくことや地域住民,事業者,災害ボランティア等との連携による取組の強化等により,地域の防災力の向上を図っていくことが,ますます重要となっている。このため,今回明らかになった課題を踏まえ,各分野を防災の観点から総点検し,必要な資源を割り当てる「防災の主流化」を図り,災害に対して「強く」「しなやか」な社会を国全体として構築していくことが望まれる。


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