平成25年版 防災白書|第1部 特集 4 (3)事業者等の取組例


(3)事業者等の取組例

○ 事業者による地域の防災計画づくり(兵庫県神戸市旧居留地連絡協議会)

神戸市旧居留地連絡協議会は地区内で事業を営む法人の集まりである。会員間の親睦を第一に,近年では“まちづくり”にも積極的に取り組んでおり,「イベント」「広報」「環境」「都市(まち)づくり」「防災・防犯」の専門委員会を設け,多方面の活動を実践している。

この中で「防災・防犯委員会」は,平成7年の阪神・淡路大震災を機に設置したもので,参加企業のネットワークを活かした自主的な防災協力体制を確立することを目的に,行政とも協働して精力的な活動を続けている。

その一環として平成13年には,地域全体の防災力向上を目指して「旧居留地地域防災計画」を策定し,以下の3つの基本理念に基づいた行動を呼びかけている。

<1> 非常時における旧居留地内企業の相互支援をスムーズにする

自分(社)の命と財産は自分(社)でまもることを前提に,個々の対応では不足が予想される部分を補うために,非常時における情報の共有や共同備蓄の体制を構築している。情報共有については5〜10棟程度のビルでグループ(隣組)を構成し,電話回線が使えない事態に陥った場合にも直接伝達できる連絡網を決めている。

<2> 非常時における来訪者を助ける

旧居留地には平日でも来訪者は1万人近くにのぼり,有事の際には救護コーナーや情報提供コーナーの開設,また帰宅が困難な来訪者に対して,行政機関が体制を整えるまでの間,ビル内の会議室や廊下等を一時待避所として提供することなどを取り決めている。

<3> 日頃から防災意識を育み,訓練を怠らない

防災訓練や防犯講習会,市民救命士講習会などを定期的に開催しているほか,昨年は津波対策を含めて「防災マニュアル」を改訂し,協議会のホームページに掲載した。

防災訓練の模様(1) 防災訓練の模様(1)の写真
防災訓練の模様(2) 防災訓練の模様(2)の写真

○ 明海地区事業所が協働する津波緊急避難計画(愛知県豊橋市明海地区防災連絡協議会)

・明海地区の位置づけと地域連携BCPの主体

明海地区は,愛知県三河港の東南部に位置し,昭和30年代後半から臨海工業地帯として発展した。現在では,豊橋市の工業製品出荷額(平成19年工業統計)の約半分,製造業の従業者の約3割(約1万人)を明海地区で占め,地域の産業や経済だけでなく,自動車港湾の機能を持つことでも非常に重要な位置付けとなっている。

明海地区の防災連絡協議会及び三河湾明海地区産業基地運営自治会では,自治会や立地企業が主体となり,地域で企業が連携して明海地区としての産業機能を維持していくことに取り組んでいる。

出典:明海地区事業継続計画(BCP)の構築に向けて(H.22.4明海地区防災連絡協議会)の写真 出典:明海地区事業継続計画(BCP)の構築に向けて(H.22.4明海地区防災連絡協議会)

・明海地区事業継続計画の構築

防災連絡協議会ではアンケートを実施し,事業継続における懸念事項を抽出し,共有化を図った。その後,被災時の救急・救命への対応,緊急帰宅への対応,帰宅困難者への対応,応急復旧への対応などの課題を見いだし,平成22年4月に「明海地区事業継続計画の構築に向けて」を策定,公表した。

・津波緊急避難計画の策定

東日本大震災発災後,津波に対する対策が急務となり,明海地区内では津波に対し自社内の避難場所に収容しきれない従業員が約2,000人いることが判明した。そこで津波避難において「自社内の避難場所へ受入可能な企業」と「自社に避難場所がない企業」とを組み合わせ,参画した60社で5つのグループを形成し,平成24年11月に「明海地区事業所が協働する津波緊急避難計画」を策定し,平成24年12月に企業間での合同避難訓練を実施した。

出典:明海地区内事業所が協働する津波緊急避難計画と避難訓練(H24.11明海地区防災連絡協議会)の写真 出典:明海地区内事業所が協働する津波緊急避難計画と避難訓練(H24.11明海地区防災連絡協議会)

・地域連携BCPの今後について

個別企業の事業継続計画(BCP)は,埋立地特有の脆弱性のために,発災時に計画が機能しない可能性がある。しかし,団地内には様々な資機材があり,自立的な応急復旧能力も保有している。この能力を工業団地の復旧のために互いに出し合い,共通する脆弱性を補填するなど,一企業の枠を超えた工業団地としての地域連携BCPを策定し,中部経済産業局との連携により事業継続力・産業競争力の強化を図っている。

近隣の受入企業へ避難する他社の従業員(H24.12.7) 近隣の受入企業へ避難する他社の従業員(H24.12.7)の写真

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.