1−5 東日本大震災


1-5 東日本大震災

(1)警察庁における対応

警察庁,各管区警察局,岩手・宮城・福島県警察を始めとする各都道府県警察においては,「緊急災害警備本部」等を設置して情報の収集,被災者の救出救助,行方不明者の捜索,被災者支援,被災地における警戒・警ら活動,交通規制等の活動に当たった。

また,機動警察通信隊は,災害発生直後から警察通信の確保に当たり,警察庁,官邸等へ現場映像の伝送等を実施した。全国の警察では,岩手・宮城・福島県警察に対し,それぞれの県公安委員会からの援助要求を受けて,広域緊急援助隊員等を派遣し,関係機関と連携をとりながら,生存者の探索・救助,行方不明者の捜索,被災者の避難誘導,緊急交通路の確保,避難所等での被災者支援,遺体の検視・身元確認,生活の安全と秩序の維持のためのパトロール・取締り等の活動を実施した。

さらに,原子力災害の発生に伴い,避難誘導,避難困難者の搬送,原子炉建屋への放水活動,福島第一原子力発電所の半径20キロメートル圏内における警戒・警ら・捜索活動,警戒区域等設定に伴う検問,一時立入りの支援,犯罪の取締り等を実施した。

(2)総務省における対応

総務省においては,発災後直ちに対策本部を設置し,情報の収集・連絡体制を整備した(後に,災害応急対策,災害復旧等を推進するため,非常災害対策本部に移行。)。

また,被災17市町からの申請を受けて,災害による被害を軽減するために役立つことを目的とする臨時災害放送局(FM放送)の開設を臨機に許可する(岩手県4件,宮城県8件,福島県3件及び茨城県2件)等の措置を講じた。

(3)消防庁における対応

消防庁においては,災害対策本部を設置し,震度6弱以上を観測した都道府県に対して適切な対応及び被害報告について要請するとともに,震度6弱以上を観測した都道府県及び該当県内各消防本部に直接被害状況の問い合わせを実施した。

また,被害の甚大さを踏まえ,3月11日に消防庁長官から緊急消防援助隊に対して,平成15年の緊急消防援助隊の法制化以降,初めて「消防組織法」第44条第5項の規定に基づく出動指示を行い,6月6日までの88日間で,岩手・宮城・福島の主な被災3県を除く44都道府県から延べ3万1,166隊(延べ人員:10万9,919人)の緊急消防援助隊を出動させ,被災者の救出救助,行方不明者の捜索等を実施した。

(4)NHKにおける対応

NHKにおいては,次のとおり放送受信料を免除した。

青森県 3,632件 6,125千円 岩手県 3万1,237件 59,195千円 宮城県 11万4,777件 210,023千円 福島県 15万6,783件 275,413千円 茨城県 6,675件 11,490千円 千葉県 714件 1,272千円 栃木県 204件 393千円 新潟県 71件 138千円 長野県 739件 1,299千円
(5)法務省における対応

法務省においては,日本司法支援センター(法テラス)で,通常の情報提供業務・民事法律扶助業務に加え,以下の取組を実施した。

・法テラスの常勤弁護士が,避難所に赴き,被災者に対する生活再建等に関する法制度等の情報提供。

・日本弁護士連合会等と共催で,被災者等に対する無料の電話相談。

・被災地の弁護士会等の関係団体と連携協力して,岩手県,宮城県及び福島県の避難所等を中心に,弁護士による出張・巡回相談。

法務省においては,災害被災者の支援としては,以下の取組を実施した。

・毛布,マスク,簡易トイレ等の物資を被災地に運搬して提供。

・法務省所管施設への被災者受入れ等の支援。

・職員を派遣して被災住民の支援を行うとともに,メンタルヘルスケア等の心理相談を実施。

・矯正施設に勤務する医師により,被災者の診療等を実施。

また,「法務局震災相談フリーダイヤル」の設置や避難所等において特設相談所を開設すること等により,被災者からの登記・戸籍等に関する相談を行った。

さらに,法務局・地方法務局の人権相談窓口はもとより,避難所等においても特設相談所を開設し,震災に伴って生じる様々な人権問題について相談に応じた。

津波により戸籍の正本が滅失した4市町の戸籍については,法務局で保存している戸籍の副本等の資料に基づいて,再製データの作成を行った。

外国人の出入国管理業務としては,以下の取組を実施した。

・「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」第3条第2項の規定に基づく法務省告示(平成23年3月16日法務省告示第123号)の対象となる外国人について,在留期間の満了日を,特段の手続を要することなく,一律に平成23年8月31日まで延長する措置を実施。

・上記告示に該当しない外国人でも,本震災により被害を受け,地方入国管理局長宛て申出を行うことにより,同法第3条に該当すると判断された外国人については,在留期間の満了日を平成23年8月31日まで延長する措置を実施。

・海外からの緊急救助隊の上陸審査に当たり,入国審査官があらかじめ作成した仮上陸許可書を交付することで,旅券への上陸許可証印を省略する等簡便・迅速な方法により実施。

・外国人又は代理人が被災のために遠隔地に一時避難している場合について,避難先の最寄りの地方入国管理官署において在留資格関係諸申請を受理。

・外国人の安否確認のため被災外国人の親族や在日外国公館等に対して各種情報を提供。

・被災市町村の外国人登録事務に係る業務処理を代行。

・成田空港(第1・第2ターミナル)に出入国関係の相談カウンターを設置し,一時帰国を希望する外国人の相談対応を実施。

(6)財務省における対応

財務省においては,青森県,岩手県,宮城県,福島県及び茨城県における被災者について,関税に関する法律に基づく申請等の期限の延長や証明書交付手数料等の還付又は免除を実施した。

また,国税庁告示をもって,青森県,岩手県,宮城県,福島県及び茨城県について国税の申告・納付期限の延長を行ったほか,納税者からの申請に基づき,国税の申告・納付期限の延長,納税の猶予,軽減免除等を行った。さらに,震災発生後速やかに,災害に関する税務上の取扱い等について周知・広報を行うとともに,被災した納税者等が全国の避難所等に避難している状況を踏まえ,税に関する相談等について,避難所等の最寄りの税務署で対応できる体制の整備を図った。

(7)文部科学省における対応

文部科学省においては,3月11日に文部科学省災害応急対策本部を設置し,その後非常災害対策本部へ格上げした。

また,3月11日から,政府調査団として,文部科学省職員を派遣した。3月15日から,文部科学省職員(建築技術者)による調査団を現地に派遣し,学校施設等の安全点検を実施した。

(8)厚生労働省における対応

厚生労働省においては,水道施設の復旧について,特別立法によって国庫補助率の大幅な嵩上げ(1/2→80/100〜90/100)を図るとともに通常は対象としていない給水装置の一部を対象施設に追加する等の補助対象範囲の拡充を行った。

また,津波により街全体が壊滅的な被害を受けた地域については,今後復旧,復興計画を策定していく必要があるが,この取組に対する技術的支援等を行う枠組みとして,「東日本大震災水道復興支援連絡協議会」を平成23年7月25日に設置した。

(9)農林水産省における対応

農林水産省においては,3月11日に農林水産大臣を本部長とする「農林水産省地震災害対策本部」を設置し,3月12日には,農林水産業被害に関する相談窓口を開設したほか,農林水産省ホームページを通じた情報提供の充実等を順次行った。

農林水産省地震災害対策本部の下では,様々な緊急対応を実施した。具体的には,被災地における食料等の供給確保を図るため,3月11日以降,農林水産省内に設置された食料調達チームの下で,継続的に関係団体等に対して食料等の支援に関する協力を要請し,被災県の要請に基づく食料等の調達を行った。

食料については,3月11日から4月20日までの間の政府調達において,200社を超える食品メーカー等の協力の下,食料2,584万食,育児用調製粉乳5万3,000缶,飲料762万本(381万L)が支援され,ピーク時には1日154万食分の食料を被災地向けに調達した。

また,食材以外の不足物資については,水産庁の漁業取締・調査船を活用する形で,3月17日から4月6日までの間に重油800kL,軽油420kLを被災地に輸送するとともに,3月17日から28日までの間に木炭20tとコンロ1,300個を宮城県と福島県に供給した。

さらに,3月20日から3月28日までの間,東北森林管理局から岩手県と宮城県に薪ストーブ113台を提供した。

これらの支援物資の供給のほか,被災したため池,集落排水施設等の応急復旧・二次災害防止対策を講じるとともに,飼料関係団体の協力の下,被災地域への飼料等の緊急輸送を行った。

また,金融関係では,被災した農林漁業者に対する資金の円滑な融通や震災以前に借り入れた資金の償還猶予等を関係機関に依頼した。

(10)中小企業庁における対応

中小企業庁においては,全国の政府系中小企業金融機関等に特別相談窓口を設置し,災害復旧貸付の適用,既往債務の返済条件緩和等の措置を行った。

また,全国の被災中小企業者等を対象として,災害復旧貸付の金利引下げを行った。

(11)海上保安庁における対応

海上保安庁では,地震発生直後に本庁及び各管区海上保安本部等に災害対策本部等を設置するとともに,巡視船艇・航空機・特殊救難隊等を派遣させ,海上部及び陸上部の孤立者の救助,行方不明者の捜索,緊急輸送路の確保,被災港湾の測量,航路標識の復旧,漂流船舶の曳航救助,航路障害物の除去,被災者支援等を実施した。この震災に,平成24年2月27日時点で巡視船艇延べ1万3,044隻,航空機延べ4,004機が対応している。

(12)国土交通省における対応

国土交通省においては,発災後直ちに非常体制をとり,緊急災害対策本部を設置し,状況の把握に努めるとともに,技術的支援等(高度技術支援,現地支援,被災状況調査支援,応急対策支援,情報通信支援等)を行うため全国の地方整備局等から緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)を現地へ派遣した。また,TEC-FORCEとともに,各地方整備局等が保有している災害対策用機械(災害対策用ヘリコプター,照明車,排水ポンプ車,衛星通信車等)も各地方整備局から派遣し,TEC-FORCEの各活動及び被災地支援のために活用した。派遣は発災当日の3月11日から開始し,TEC-FORCEについては,延べ1万8,115人・日の派遣を実施した。また,災害対策用機械(災害対策用ヘリコプターを除く)については,延べ2万7,456台・日の派遣を実施した(平成24年3月4日時点)。

本震災では大規模な地震津波により太平洋沿岸部が広域にわたり浸水し,十分な被災状況の調査や被災者の捜索・救難活動が満足にできない状況となったため,関係機関と協議し,地形や湛水状況等周辺状況を考慮したうえで,排水ポンプ車の設置場所や台数,工程等効率的な排水計画を立て,緊急排水を実施した。

また,大きな津波被害を受けた沿岸部への緊急輸送道路の確保のため,南北の幹線である東北道,国道4号から太平洋沿岸主要都市へのアクセスルートを開く「くしの歯」作戦を実施し,3月12日には11本,15日までに15本の東西ルートを啓開した。さらに,被災した自治体に対し途絶した通信回線を確保するため衛星通信車やKu-SATを設置し,動画像の共有や電話・FAXによる連絡調整等が可能な環境を整えるととともに,被災自治体にリエゾンを派遣し,救援物資の調達や行政支援等,広範にわたる自治体支援を行った。

さらに,河川,海岸,道路,港湾,空港等の所管行政施設の緊急復旧等を迅速に実施するとともに,震度5強以上を観測した市区町村においては,土砂災害危険箇所の点検を行い,必要な箇所については応急対策を実施した。

国土地理院においては,発災後直ちに非常体制をとり,災害対策本部を設置して,航空機による撮影を実施し,空中写真,浸水範囲概況図等を関係機関へ提供するとともに,ホームページにて公開した。

また,電子基準点観測データ及び人工衛星データ(干渉SAR)による地殻変動(沿岸部の沈降等)情報をホームページ等で公開するとともに,地震調査委員会に報告した。

さらに,航空レーザ測量を実施し高精度な標高データを取得することで,数値標高モデルの作成や被災後のデジタル標高地形図を整備するとともに,復旧工事等に必要な位置の基準を整備するため復旧測量等を実施し基準点の成果改定を行った。また,復興事業の効率的な実施や,復興計画の策定を促進することを目的とした災害復興計画基図を作成し,関係機関へ提供した。

(13)気象庁における対応

気象庁は,3月11日14時46分に非常体制をとるとともに,気象庁非常災害対策本部を設置した。16時20分には,この地震による甚大な被害に鑑み「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。気象庁本庁及び各気象台においては,緊急地震速報(警報)及び津波警報・注意報を迅速に発表・伝達し,その後も津波観測に関する情報,余震活動の状況等を適宜発表して,災害応急活動を支援した。また,震度5強以上を観測する等揺れの大きかった地域については,地盤の緩みを考慮し,土砂災害を対象とする大雨警報・注意報や都道府県と共同で発表する土砂災害警戒情報の基準の引き下げを行い,さらに,堤防や排水施設等が地震や津波の影響を受けた地域については,通常より浸水害や洪水害が発生しやすい状況を考慮し,浸水害を対象とする大雨警報・注意報及び洪水警報・注意報,河川を指定し国土交通省又は都道府県と共同して行う洪水予報の基準を引き下げて,これら暫定基準による運用を開始した。

また,地盤沈下地域に対する潮位情報の発表,地震解説資料の作成・発表,災害時気象支援資料の関係機関への提供等を行った。本庁及び各気象台等においては3月12日以降,気象庁機動調査班(JMA‐MOT)を派遣し,津波や地震の状況等に関する現地調査を実施した。そして,3月13日に本地震に関する特設のホームページを開設し,地震・津波や気象の状況に加え,被災者や復旧・復興担当者を支援する情報を発信した。

一方,本地震では地震・震度・津波観測施設や気象観測施設,庁舎等が被害を受けたことから,気象庁本庁及び各気象台では,庁舎や観測機器等の早期の点検,被害状況の把握及び早期復旧に努めた。特に,観測施設そのものが被災したり,電力又は通信回線の普及が当面見込めない観測所については,代替観測施設の設置,太陽電池の設置及び携帯電話や衛星回線を活用することで観測を再開した。また,気象庁の地上気象観測網を補完するため,「気象業務法」第6条第3項に基づき,気象観測施設の設置の届出がされている株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの観測データについて,同条第4項の規定に基づき気象庁への報告を求めることとした。


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