3 大雪に対する防災力向上の方向性


3 大雪に対する防災力向上の方向性

<1> 豪雪地帯の現状

「豪雪地帯対策特別措置法」に基づき指定された豪雪地帯は,平成23年4月1日時点で,533市町村(全国の市町村数の30.9%),面積は全国の約半分を占めているが,人口は,総人口の15.3%と少なく,またその減少傾向が全国平均と比べて顕著である。また,高齢化率も全国平均と比べて高く,高齢化・過疎化が進んでいる。さらに,除雪の担い手となる建設業者数も減少しており,豪雪地帯における地域防災力の低下が課題となっている。

図表2-1-5 人口増減率及び高齢化率 図表2-1-5 人口増減率及び高齢化率の図表

<2> 近年の大雪による被害状況と除雪時の安全対策の重要性

平成22年度の大雪においては,死者131人,重傷者636人の人的被害が発生した。平成23年度の大雪においても,平成22年度の大雪を上回る死者132人,重傷者870人の人的被害が発生し,各年とも,除雪作業中の事故や高齢者の事故が多く,除雪時の安全対策が重要になっている。

図表2-1-6 平成22年度大雪による人的被害の状況 図表2-1-6 平成22年度大雪による人的被害の状況の図表
図表2-1-7 平成23年度大雪による人的被害の状況 図表2-1-7 平成23年度大雪による人的被害の状況の図表

<3> 今後の雪害対策の方向性

内閣府及び国土交通省では,学識経験者・関係機関及び地方公共団体の関係者を委員とする「大雪に対する防災力向上方策検討会」を設置し,主に平成22年度の大雪から得られた教訓及び平成23年度の大雪対応から,豪雪地帯の雪害対策について検討してきた。

本検討会では,除雪作業中の安全対策の徹底,地域コミュニティの共助による雪処理,空き家の除雪に関する対策等について,以下のような雪害対策の在り方を取りまとめ,共助・公助による地域除雪の取組事例集,除雪作業中の安全対策の徹底のための普及啓発のチラシ,空き家等の除雪・除却等の事例集等を作成した上で,関係機関に周知している。

(除雪作業中の安全対策の徹底)

地域全体の犠牲者を少なくするためには,自らの命は自ら守る意識を持ち,除雪作業中の安全確保を行うことが非常に重要である。

例えば,複数人で除雪作業を行うことや除雪作業中に携帯電話を携行すること,命綱・ヘルメットの着用やはしごの固定を行うこと等,住民が除雪作業中に潜む危険を理解し,適切な対応を行いつつ,安全な作業を行う必要がある。

このため,市町村が主体となって,広報誌,パンフレット等除雪作業の危険性と対応策を周知する資料を配布する等,住民の安全意識を高める啓発活動を継続的に行うことが極めて重要である。

図表2-1-8 除雪作業中の事故防止についての啓発リーフレット 図表2-1-8 除雪作業中の事故防止についての啓発リーフレットの図表

(地域コミュニティの共助による雪処理等)

豪雪地帯は,全国に比べて高齢化が進んでおり,自ら除雪作業を行うことが困難な世帯が多い状況にある。

そのため,自治会等地域コミュニティや近隣住民と協力した地域一斉雪下ろし等の取組の推進,域内外のボランティア等の雪処理の担い手による協力,広域連携による雪処理の担い手の確保,情報交換,災害時要援護者の支援体制の整備等が重要であり,様々な対策を組み合わせて進めることが望ましい。

(空き家等の除雪に関する対策)

近年,空き家の戸数が増加しており,除雪をされない空き家等からの落雪による物的,人的被害の問題が生じている。

空き家等の除雪については,所有者自身が主体的に実施することが基本であるが,市町村においても平時から所有者を特定し,所有者の責任において除雪を実施させる取組を行うことが望ましい。

そのような取組にもかかわらず,所有者が不明である等の理由で空き家等の除雪を市町村が行う必要がある場合には,「災害対策基本法」第64条第1項(応急公用負担等)に基づいて,災害が発生し,又はまさに発生しようとしている場合であり,かつ応急措置を実施するため緊急避難措置としての必要があると認めるときには,市町村長の判断で,雪下ろしのために当該空き家等に立ち入ることが可能であることを内閣府から関係機関に通知した。

また,「災害救助法」が適用されている市町村においては,倒壊して隣接する住家に被害が生じるおそれがあり,住民の生命又は身体に危害が生じるおそれのあるときには,障害物の除去として除雪を行い,国や都道府県が費用を負担することができる。

さらに,市町村のなかには,条例を制定して空き家の管理に努めている事例がある。秋田県大仙市では,「大仙市空き家等の適正管理に関する条例」に基づき,周辺に危害のおそれのある空き家の解体を行政代執行により行った。

雪処理の事故の防止のためには,克雪住宅の推進と併せて安全な屋根の雪下ろし技術の習得と,地域共助による雪下ろしを組み合わせた取組を推進することが望ましい。今後,国としてもこのような取組が各地域で推進されるように関係機関等への普及啓発に努めていくこととしている。

また,豪雪地帯では,今後,さらに高齢化・過疎化が進むものと考えられ,除雪の担い手を確保することが一層難しくなる。

本検討会では,一定の方向性を示しているが,豪雪地帯のみならず中山間地域全体が抱える構造的な課題でもあるため,今後,関係者が連携して,一層の防災力向上に向けた取組を行うことが重要である。


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