3−1 震災対策 (6)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策



(6)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策

a 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の姿

(a) 発生の可能性

千葉県東方沖から三陸沖にかけての日本海溝,三陸沖から十勝沖を経て択捉島沖にかけての千島海溝周辺では,太平洋プレートが陸側のプレートの下に沈み込むことに伴って,マグニチュード7や8クラスの大規模地震が数多く発生している。明治29年(1896年)の明治三陸地震津波では死者約2万2千人,昭和8年(1933年)の昭和三陸地震津波では死者・行方不明者約3千人など,津波により甚大な被害となっている。また,平成15年9月26日には十勝沖地震が発生し,津波は4mの高さにまで達した。この地震では,死者・行方不明者2名となっている。

地震のタイプはさまざまで,プレート境界で発生するものやプレート内部で発生するもの,地震の揺れの割りに大きな津波が発生するいわゆる「津波地震」などの地震がある。宮城県沖地震は約40年間隔で発生しており,この他の地震も含めて発生の切迫性が指摘されている。

(b) 被害想定

日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策を検討するため,平成15年7月28日に開催された中央防災会議において「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」の設置が決定された。

同専門調査会においては,平成15年(2003年)十勝沖地震の発生等を踏まえ,十勝沖をはじめとした北海道周辺の千島海溝・日本海溝で発生する海溝型地震に関して地震動の強さや津波の高さ等必要な事項について特に検討するため,「北海道ワーキンググループ」が開催された。専門調査会は平成18年1月までに17回開催され,地震学の最新の知見に基づいて,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震像について検討を進め,防災対策の検討対象とする地震について整理するとともに(表2−3−7),地震の揺れの強さ(図2−3−25),津波の高さ分布(図2−3−26)等から,地震による揺れや津波,火災等による人的被害や建物被害,経済被害等の被害想定を行った(表2−3−8)。更に,これらを踏まえた日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策について検討を行い,平成18年1月に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会報告」をとりまとめ,公表した。

表2−3−7 防災対策の検討対象とする8地震 防災対策の検討対象とする8地震の表
図2−3−25 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の震度分布(震度の最大の重ね合わせ) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の震度分布(震度の最大の重ね合わせ)の図
図2−3−26 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の海岸での津波高さの最大値 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の海岸での津波高さの最大値の図
表2−3−8 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定の表

b 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法

(a) 法律の目的

日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関し,その地震災害,特に津波災害については,広い地域において甚大な被害が予想されることから,一層の防災対策を進める必要があるとして,議員立法により平成16年4月に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が公布され,平成17年9月に施行された。

同法においては,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による地震災害を防ぐため,著しい被害が生ずるおそれのある地域を「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として指定し,津波からの避難対策も含め必要な防災対策に関する計画を策定するとともに,観測施設等の整備や科学技術水準が向上することにより,当該地域における海溝型地震の予知体制が確立した場合には,東海地震と同様に大規模地震対策特別措置法を適用することとされている。また,積雪寒冷地域において地震防災施設等の整備等を行うに当たっては,積雪寒冷地域における地震防災上必要な機能が確保されるよう配慮されなければならないこととされている。

(b) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の指定

専門調査会において,推進地域の指定基準について検討が行われ,地震の揺れについては建物の全壊が生じるとされる「震度6弱以上が想定される地域」,津波については「大津波(3m以上)若しくは満潮時に陸上の浸水深が2m(漂流物が多いと見込まれる地域については1.2m)以上の津波が予想される地域のうち,これらの水位よりも高い海岸堤防がない地域」を対象とすることとし,これらに加え,市町村が連携して防災体制をとる必要がある地域についても,防災体制の観点から基準に含めることとした。関係道県知事に意見照会を行った結果,平成18年2月20日,1道4県130市町村が推進地域として初めて指定された。

その後の市町村合併にあわせ,随時推進地域の再指定を行っている(平成21年4月1日現在,1道4県119市町村)(図2−3−27, 附属資料23 )。

図2−3−27 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の図

c 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の概要

(a) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱

専門調査会の報告を受けて,中央防災会議は,推進地域外も含め全国的な視点から総合的な地震防災対策を推進するための「予防対策から発災時の応急対策,復旧・復興対策までを視野に入れたマスタープラン」としての「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱」を平成18年2月に決定した。

この大綱では,<1>津波防災対策の推進,<2>揺れに強いまちづくりの推進,<3>積雪・寒冷地域特有の問題への対応等のポイントから,対策をとりまとめた。

(b) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画

推進地域が指定されたことを受け,中央防災会議では,特別措置法の規定に基づき,「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」を平成18年3月に決定した。この基本計画は,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する基本的方針や,重要事項について定めたものである。

(c) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領

大綱を受け,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による発災後の広域の応急対策活動を的確に実施するため,防災関係機関がとるべき行動内容について規定した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領」が,平成19年6月の中央防災会議で決定された。

(主な内容)

  • 現地対策本部の設置
    現地における被災状況のとりまとめや,被地内における災害応急対策の調整を迅速かつ的確に実施するため,現地対策本部を置くことができるものとし,設置場所は地震ごとに最も大きな被害が見込まれる道県内としている。
  • 救助・救急・医療活動及び消火活動の基本方針
  • 交通の確保・緊急輸送活動の基本方針
  • 物資の調達,供給等に関する活動の基本方針

(d) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震防災戦略

平成20年12月の中央防災会議において,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震防災戦略が決定された(図2−3−28)。

本戦略においては,死者数を4〜5割減,経済被害額を1/4減させることを減災目標とし,それを達成するため,住宅・建築物の耐震化等の対策について具体目標を定めて実施することとしている。

特に,日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震では津波による死者が多いことから,住民の避難意識の向上及びその保持を促すため津波ハザードマップの作成・周知,津波避難訓練の実施等を推進するとともに,津波による被害を防ぐための海岸保全施設の整備を進めることとしている。

図2−3−28 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震防災戦略 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震防災戦略の図

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.