コラム バングラデシュ・サイクロン被害に見る災害予防の重要性(アジア防災センター調査より)


2007年11月15日夜,バングラデシュ南部に上陸した大型サイクロン「シドル(SIDR)」は,死者・行方不明者4,000人以上,被災者800万人以上という大きな被害をもたらした(詳細は本文参照のこと)。

従来から,バングラデシュは,国土の50%以上が海抜7m以下と低地が多く,ひとたびサイクロンに起因した高潮が発生すると住民の避難場所は限られることから,1970年には30万人,1991年には14万人の死者を出していた。これを受け1991年以降,国際的な支援を受けながら住民避難用サイクロンシェルターの建設,早期警戒システムや堤防の整備などの防災対策が進められてきた。その結果,今回のサイクロン被害は,大幅に軽減されているともいえる。

現地における被災直後の調査により,これらの対策が実際,どのように奏功したのか,以下のとおり確認した。

1.早期警戒体制と住民の避難状況

・1991年のサイクロン被害を踏まえ,政府や赤新月社によりボランティアを活用した警戒プログラムが整備され,今回も警報は,サイクロン襲来の3日前より中央政府から市町村レベル,更に住民レベルにまで伝達され,避難が行われた。

・しかしながら,一部の住民は,警報により住民はサイクロンの襲来を覚知したものの,家畜を放置したまま避難することを躊躇し避難に遅れたケース,更には2007年9月のインドネシアでの地震時に発令された津波警報は空振りであったにも拘らず,避難の最中に家財や家畜の盗難に遭った経験のある住民が,今回の警報を信用せずに避難しなかったケースも見られた。

2.サイクロンシェルター,堤防,植林の有効性

・1991年のサイクロン被害を受け,沿岸部を中心にサイクロンシェルターが約2,000か所に設置されている。今回のサイクロンでは,500人用シェルターに,約2,000人が避難し,直立したまま一夜を過ごすことで,避難住民は助かったというケースも見られた。

・海岸沿いに土盛りの堤防(高さ5〜6m程度)が設置されており,これによる高潮の抑止効果が確認できた。しかしながら一部では破堤して大被害をもたらした箇所も見受けられる。

・1970年のサイクロン被害を受け,暴風や高潮対策のために沿岸部において植林が行われているが,これらの樹林帯は効果を発揮していることを確認できた。

今回のサイクロンは,1970年に死者30万人をもたらしたサイクロンより勢力は大きかったにもかかわらず,死者数が2桁減少している。このことから,シェルターや堤防の設置,警報・避難プログラムなどの事前の災害予防対策が大きな効果を挙げているものと考えられる。

今後の更なるサイクロン被害軽減のために,次のような対策が必要だと考えられる。

・早期警戒情報が各市町村の末端まで伝達されていたにも拘らず,住民の避難行動は必ずしも迅速でなかったことから,警報の重要性の普及啓発。

・サイクロンシェルターの更なる増設。また,家畜を飼っている住民が安心して避難できるよう,シェルターの近くに家畜が避難するための小高い丘(キッラ)を設置。

・壊れた堤防や道路を早期に修復するとともに,被災者の生活を支えるため,復興事業における被災者の雇用,復興資金を提供した被災者の自立復興を支援。

・樹林帯が防災機能を発揮したことが確認されたので,地域の気候や土壌にあった樹種により,更なる植林。

1970年(30万人死亡)、1991年(14万人死亡)及び2007年のサイクロンの経路図 図1 1970年(30万人死亡),1991年(14万人死亡)及び2007年のサイクロンの経路
累積シェルター設置数と死者数の経緯を示したグラフ


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