2−4 国際復興支援の取組



2−4 国際復興支援の取組

(1)国際復興支援プラットフォーム(IRP)の設立
 世界各地における自然災害による被害の中には,過去の教訓が活かされず,繰り返し同じ地域が同様の被害にあう事例が多くみられる。自然災害に見舞われたとき,単に原状を回復するだけでは,同じような自然現象が繰り返された場合,同様の被害が発生することになってしまう。地震災害が多発する地域での耐震性の乏しい住宅の倒壊による被害,洪水や土砂災害等の常襲地帯への居住地域の拡大による毎年繰り返される被害などはその一例といえる。
 しかし,不幸にして被災したそのときこそ,将来に備えた防災力を高め,災害に強い地域をつくる絶好の機会でもある。そのためには,復興段階において,それまでコミュニティが抱えていた災害に対する脆弱性を検証・確認し,いかに次の災害に備えるか,つまり災害予防の観点を取り込んだ復興計画に基づいて被災地域の復興開発を図る必要がある。災害復興の過程において次の災害に備えた災害に強い地域づくりを,多様な分野,多様な主体間の連携,調整により包括的に推進する活動が災害被害の軽減のために重要であり,こうした活動を支援できる国際協力の仕組みが構築される必要がある。
 こうした点にかんがみ,兵庫行動枠組において,災害リスク軽減のための優先すべき課題として,災害復興過程における災害予防の観点の取り込みの必要性が位置づけられ,このための国際支援の枠組みの強化を図ることが盛り込まれた。
 また,こうした取組を進めるため,国連防災世界会議において,小泉内閣総理大臣は,国連における世界の災害復興事例のデータベースづくりなどの国際協力に力を入れていくことを表明した。これを踏まえて,2005年5月,我が国をはじめUNDP,UN/ ISDR, OCHA,ILO,アジア防災センター(ADRC),世界銀行,国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)など核となる機関の連携により,より良い災害復興のための国際支援の枠組みである「国際復興支援プラットフォーム(International Recovery Platform:IRP)」の活動を展開していくことが合意され,兵庫県がHAT神戸(神戸東部新都心)にこれらの活動の拠点を提供し,アジア防災センターが支援する形で活動が開始された。
 このIRPの活動は,兵庫行動枠組を踏まえ,被災後の復興のためのネットワークと枠組みを構築すること,復興面での教訓の発信や復興に向けた共通手法・仕組みを開発すること,被災後の復興計画・構想策定に助言や支援を行うこと,より長期の開発計画と確実に連携しながら各国の災害復興への対応力を高めることなどを目指すものである。その優先活動として,①復興に関する知識の集積・発信,②復興に関する人材の育成,③大規模災害後の復興支援を関係機関が連携して推進することを掲げており,インド洋地震・津波災害やパキスタン等大地震等の実際の被災地復興に役立つ協力活動を展開することとしている。
(2)IRPの主な活動
 IRPによる2005年度の主な活動は次のとおりである。
①国際防災復興協力セミナーの開催
 2005年5月11日のIRP開設記念式典に続き,13日までの3日間,各国や国際機関の代表者約80名による国際防災復興協力セミナーを開催した。
 セミナーでは,ビデオ会議システムでデリー,ローマ,アンカラ,マニラを結び,各災害被災国の復興事業の現状や課題などを紹介するとともに,よりよい復興に向けてのギャップや課題を特定し,IRPの今後の活動に向けてのビジョンを明確にし,関係機関による協力体制が確立された。また,12日には公開シンポジウムを開催し,セミナー参加者に加え内外の防災関係者等約300名の参加を得て,「よりよい復興への挑戦」をテーマに,基調講演,パネルディスカッションなどを展開した。
②UN/ISDR関係機関タスクフォース会議(IATF)への参加
 2005年5月にジュネーブで開催された第11回UN/ISDR関係機関タスクフォース会議において,IRPがUN/ISDRの重要な分野別活動の1つとして明確に位置づけられ,IATFを通じて国連総会に活動内容が報告されること,IRPの活動を支援する組織の役割及び事業内容の基本的考え方などについて検討がなされた。
 また,同年11月の第12回会合では,IRPの開設以来の活動内容についての報告や具体的な事業内容案等について検討がなされた。
③第1回運営委員会(ステアリングコミッティ)の開催
 9月16日にジュネーブと東京とをビデオ会議システムで結んで,第1回のIRP運営委員会を開催し,IRPの構成や運営体制を正式に確認した。さらに,関係機関の役割や事業内容が基本的に了承された。
④IRPのホームページの開設(www.RecoveryPlatform.org
  専用のホームページを開設し,IRPの設立経緯,5月の国際防災復興協力シンポジウムの報告書,さらに56の復興関係の優良事例を掲載するとともに,各情報源に直接リンクするデータベースを運用している。
⑤復興事例データベース・災害復興支援手引き書の開発
 IRP事務局の事業として,これまでの大災害からの復興に際しての優良事例,教訓をベースに,今後の復興に向けて必要となる知識の集約・情報発信を行うこととしている。そのため,第1段階として,1984年以降の大災害からの復興事例を収集し,これまで国際社会が災害復興を支援する際に特に必要と認識された8つの視点でまとめたデータベースを構築し,情報発信を行うこととしている。さらに,第2段階として,そのデータベースを活用して,災害横断的に8つの視点ごとに解析を加えた復興のための総合手引き書を作成する。
⑥パキスタン等大地震における国連ニーズ評価活動への参加
 パキスタン等大地震で大きな被害を受けたパキスタンの復旧・復興に向けた支援活動の調整を中心的に行っているUNDPをはじめとするIRP関係機関等とともに復旧・復興活動を支援するため,IRP事務局から10月21日から31日まで被災地に職員を派遣した。期間中,国連ニーズ評価活動に参加し,被災地における早期復旧・復興段階に必要となる事項について,関係者ヒアリング等により調査を行った。
⑦第2回国際防災復興協力シンポジウムの開催
 国連防災世界会議1周年,阪神・淡路大震災11周年を記念し,「大災害からの復興に際して学び・考えること」をテーマに,第2回国際防災復興協力シンポジウム(神戸,2006年1月19日,参加者約180名)を開催し,インド洋地震津波被災国,パキスタン,神戸などからの復興報告,パネルディスカッション等を行った。

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