2−1 国連防災世界会議



2 国連防災世界会議と世界の防災への取組

2−1 国連防災世界会議

(1)会議の概要
 阪神・淡路大震災から10年の節目にあたる2005年1月18日から22日にかけて,兵庫県神戸市において,「国連防災世界会議」(World Conference on Disaster Reduction (WCDR))が開催された。本会議は,我が国をはじめとする141ヵ国の共同提案による会議開催に関する決議案が2003年12月の第58回国連総会において全会一致で採択され,国連主催の会議として開催されたものであり,1994年5月に横浜で開催された国連防災世界会議以来2回目の開催となった。
 インド洋で未曾有の地震津波災害が発生するなど,世界で防災への関心が高まる中,会議には,国連加盟国168ヵ国(うち閣僚級以上の参加は38ヵ国),国連機関等国際機関78機関やNGO161団体,マスメディアの代表者,総勢4千人以上が集い,また,同時に開催された一般参加が可能なパブリックフォーラムに4万人以上が参加した。本会議では,我が国の村田防災担当大臣(当時)が全体議長として選出された。
 国連加盟国の代表団が集まる政府間会合では,開会式において,アナン国連事務総長がVTRメッセージを届け,過去10年間に災害による死者数が5割増大しているとして,予防や減災の観点からの防災投資の価値を訴えた。また,開会式には天皇皇后両陛下がご臨席され,天皇陛下はおことばの中で,国境を越えて過去の災害経験に学び,将来に備えることの重要性を訴えられた。政府間会合には小泉内閣総理大臣も出席し,阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた我が国の防災体制の強化を説明し,これを活かして国際防災協力を推進することを表明した。
 また,会議では,世界各国から集まった様々な分野の専門家によるテーマ別会合が多数開催され,世界の災害経験や優良事例の共有,国際レベルからコミュニティレベルに至る防災課題についての議論が繰り広げられた。さらに,多様な主体による一般向けのシンポジウム,展示ブース,ポスター展示が開催され,この中で,阪神・淡路大震災の経験と教訓を広く国内外に発信する5日間連続の阪神・淡路大震災総合フォーラムが実施された。
 さらに,会議では,直前に発生したインド洋での地震津波災害を踏まえ,小泉内閣総理大臣の提案を受け,専門家レベルによるテーマ別会合及び政府間レベルの特別会合が開催された。専門家レベル特別会合では,我が国気象庁長官が議長を務め,インド洋における津波早期警戒体制の構築に当たって,インド洋沿岸各国の国内体制の強化と国際的な協力体制の構築の観点から検討すべき事項を整理した。また,政府間レベル特別会合では,被災国から被害の状況が紹介されるとともに,インド洋地域の津波早期警戒のあり方等について活発な議論・報告が行われ,会議議長(村田防災担当大臣(当時))により,「インド洋災害に関する特別会合の共通の声明〜より安全な未来に向けたリスク軽減〜」がとりまとめられた。
(2)会議成果
 国連防災世界会議では,1994年の国連防災世界会議で採択された横浜戦略の点検作業を踏まえ,「災害に強い国・コミュニティづくり」をテーマとして,今後10年の国際社会における防災活動の基本的な指針となる「兵庫行動枠組2005-2015」が採択された。兵庫行動枠組では,世界共通の防災目標として,世界の災害被害の大幅な削減に向け,持続可能な開発の取組に減災の観点を取り入れること等を掲げ,5つのテーマについての優先行動を設定するとともに,横浜戦略と異なり,その実施とフォローアップの方針についても合意している。
 また,会議では,兵庫行動枠組の具体化のための行動を世界に広く呼びかけるメッセージを発出するため,日本の提案により,「兵庫宣言」が採択された。
 これらの会議成果の主な内容は次のとおりである。
①災害が持続可能な開発の大きな障害になっているとの共通認識のもと,持続可能な開発のあらゆる政策に防災の視点を組み入れることを主要な目標に掲げている。
②災害予防の文化を醸成することの重要性を謳い,災害リスクを軽減する事前の備えにもっと光が当てられるべきとの主張が盛り込まれている。
③コミュニティレベルの防災意識の強化が強調され,一人一人が,地域が直面する災害リスクを把握し,災害への備え,災害時の行動を身につける大事さを訴えている。
④災害に国境はないことから,類似の災害経験を有する地域同士が知識や技術を共有し,パートナーシップを広げていく必要があり,地域機関の役割強化の重要性を強調している。
(3)会議成果の実施とフォローアップ
 国連防災世界会議を意味ある会議とするためには,世界の災害被害の実質的な軽減に向け,兵庫行動枠組を踏まえ,各国,国際機関等により具体的な行動が起こされ,適切にフォローアップされる必要がある。兵庫行動枠組の中にも,防災に関する優先行動の実施とフォローアップに関する事項が盛り込まれており,国,地域機関,国際機関,国連国際防災戦略(UN/ISDR)の各主体の取組方針が示されている。また,兵庫宣言においては,各国は,今後10年で世界を災害リスクからより安全な姿にして将来の世代に手渡す共通責任があり,会議成果の実現は将来への投資としてのたゆまぬ努力にかかっていることを認識し,あらゆる関係者に行動を呼びかけている。
 会議に参加した小泉内閣総理大臣も,演説の中で,会議成果の実施とフォローアップの重要性を強調し,我が国としても,世界全体で災害に強い国・コミュニティづくりが促進されるよう,幾多の災害を経験して培った防災に関する知識や技術を最大限活用し,国際防災協力を積極的に推進することを表明した。
 会議成果の実施とフォローアップに当たっては,各国のオーナーシップに基づく取組とこれを支援する国際的なパートナーシップが重要であるが,これらを促進する上で,UN/ ISDRが中心的な役割を担うことが期待されている。
 UN/ISDRは,関係機関タスクフォース会議を通じ,兵庫行動枠組をより効率的,効果的に実施するための戦略的な方向性を協議したり,兵庫行動枠組の5つの優先行動の各分野における関係機関の活動や支援の状況のとりまとめを行うなど,UN/ISDRに参加する国連機関等国際機関との連携を深めている。
 また,UN/ISDRでは,テーマ別や地域別の取組も推進しており,具体的には,兵庫行動枠組を具体化する活動として,神戸を拠点とした国際復興支援プラットフォーム(IRP)の活動(詳細は後述)やボンを拠点としたUN/ISDR早期警報推進プラットフォームの活動,防災技術集等の防災に関する情報集(ポートフォリオ)の編纂などを進めている。
 こうしたUN/ISDRを中心とした兵庫行動枠組の実施とフォローアップに関する活動の重要性については,2005年8月に国連総会に提出されたアナン国連事務総長の報告にも位置づけられており,各国に対してさらなる行動の呼びかけを行っている。これを受け,2005年12月の第60回国連総会において採択されたUN/ISDRに関する決議において,兵庫行動枠組及び兵庫宣言を支持するとともに,国際社会における実施の徹底を呼びかけた。
 また,同じアナン国連事務総長報告において,兵庫行動枠組の実施をより強力に支援し,関係機関のニーズに応えるため,UN/ISDRシステムの改革の必要性が示され,具体的な検討が進められている。
 兵庫行動枠組の実施には,各地域の地域機関も重要な役割を果たしている。アジアでは,アジア防災センターや,UN/ISDR,国連開発計画(UNDP),国連人道問題調整部(OCHA)の各地域事務所及び国連アジア・太平洋経済社会委員会(UNESCAP)等で構成するUN/ISDRアジアパートナーシップが強化された。アジア防災センターは,日本及び韓国並びにUN/ISDR等と共同で,2006年3月にソウルで「アジア防災会議2006」を開催し,アジア各国の兵庫行動枠組の実施状況について情報を共有するなど,アジアにおける地域防災協力の強化に貢献している。

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