1−2 パキスタン等大地震



1−2 パキスタン等大地震

(1)災害の発生と被害の概要
 2005年10月8日午前8時50分(日本時間午後12時50分),パキスタン北東部のカシミール地方で,M7.6(米国地質調査所発表)と推定される強い地震が発生し,パキスタンを中心に,インド,アフガニスタンにおいて甚大な被害を及ぼした。
 米国地質調査所によると,震源はパキスタンの首都イスラマバード北東約95kmで,震源の深さは約10kmである。この地震による死者は約7万5千人,負傷者は約7万6千人にも上った (表4−1−2) 。震源付近は,人命損失だけでなく,家屋,道路等のインフラに壊滅的な被害を受けた。また,震源地は山岳地帯であったため,点在する集落をつなぐアクセス道路が寸断され,救援活動に大きな支障をきたした。

パキスタン等大地震による被害

(2)国際社会の主な対応
 特に甚大な被害を受けたパキスタン政府に対し,各国,国際機関,NGO団体が支援活動を展開した。緊急援助物資の供与や緊急救助,医療チームの派遣等のほか,国際社会が連帯した取組として,次のような対応がなされた。
①国連緊急アピール(2005年10月11日)
 国連はこの大規模地震被害に対し,国連緊急アピールを発表した。各分野からの報告に基づき,当面の支援活動に必要な資金として,約9億7,700万ドル(後に約10億8,700万ドルに増額)の支援を呼びかけた。
②国際捜索救助活動
 12カ国からのチーム(日本のほか,英国,フランス,ドイツ,トルコ,中国,ロシア,オランダ,シンガポール,韓国,ギリシャ,ポーランド)が,パキスタン政府や国連災害評価調整(UNDAC)チームと協力しつつ,捜索救助活動を行った。
③復旧・復興のためのパキスタン政府主催主要ドナー・国際機関会議(2005年11月19日,イスラマバード)
 国際社会から,アナン国連事務総長をはじめとする,53カ国,20機関の代表が出席した。会議で表明された支援の総計は約58億ドルとなり,日本も参加した世界銀行・アジア開発銀行(ADB)等の共同ニーズアセスメント調査で明らかとなった総額約52億ドルの復旧・復興ニーズが満たされる見通しとなった。
(3)我が国の主な対応
①無償支援
 緊急支援として,震災直後に,国際機関を通じた協力及び二国間協力あわせて,2,000万ドルの無償支援を実施した。うち,国際機関を通じた協力800万ドルとして,国連世界食糧計画(WFP,250万ドル),国連児童基金(UNICEF,250万ドル),国連難民高等弁務官事務所(UNHCR,100万ドル),世界保健機関(WHO,100万ドル),国際移住機関(IOM,100万ドル)への供与を,このほか,1,200万ドルをパキスタン政府に対して供与した。
 また,国連緊急アピールを踏まえ,2006年2月,冬季の厳しい気候条件の中,被災地において依然として緊急人道支援へのニーズが大きいことから,国際機関経由で2,000万ドルの追加支援を行った。その内訳は,国連開発計画(UNDP,500万ドル),WFP(245万ドル),UNICEF(200万ドル),国連人口基金(UNFPA,130万ドル),国連教育科学文化機関(UNESCO,130万ドル),国連人間居住計画(UN-HABITAT,15万ドル),赤十字国際委員会(ICRC,500万ドル),国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC,280万ドル)である。
 さらに,2006年1月,病院,学校等の再建及び資機材調達のため,40億円(約3,500万ドル)のノン・プロジェクト無償の供与を決定した。
②国際緊急援助隊の派遣
 救助チーム,医療チーム,自衛隊部隊をパキスタンに派遣した。救助チームとしては,49名(外務省,警察庁,消防庁,海上保安庁,JICA,医師,看護師)を派遣し,捜索・救助活動を実施した。また,二次にわたり,各21名,合計42名の医療チーム(外務省,医師,看護師,薬剤師,医療調整員,JICA)を派遣した。2005年10月30日までに合計2,271名を診療した。自衛隊については,約260名の要員が陸上自衛隊のヘリコプター計6機により,被災者や緊急支援物資等の搬送支援を実施した。
③緊急援助物資の供与
 2,500万円相当の緊急援助物資を供与した。毛布,テント,浄水器,発電機,ポリタンク,スリーピングマット,プラスチックシート,簡易水槽等が,2005年10月11日,パキスタン政府に引き渡された。
④円借款
 2005年11月19日の復興会議において,総額112億2,000万円(約1億ドル)までの円借款の供与を表明し,2006年1月5日,イスラマバードにおいて書簡の交換が行われた。これは,震災に係る救援及び救急復興のためのパキスタン政府の計画を財政面から支援するため,震災後6ヶ月の救援活動及び今後18ヶ月の緊急復興事業(環境,運輸,教育,保健,上下水セクター等)に充当される。
⑤NGO等の活動
 ジャパン・プラットフォーム(JPF)は,拠出された政府資金約4.4億円を活用し,JPF傘下のNGO団体を通じて緊急人道支援活動を実施した。また,パキスタン政府の要請を受け,JPFが,12月中旬より,AJK(パキスタン側カシミール)で越冬支援用のキャンプ「キャンプ・ジャパン」の運営を実施した(ムザファラバード市郊外)。実施経費は,外務省から供与される日本NGO支援無償資金を充当した(12月末現在,約1.2億円)。
⑥その他
 パキスタン政府の要請に応じて行われた復旧・復興支援に係る共同ニーズアセスメント調査(世界銀行,アジア開発銀行(ADB)等,10月24日〜11月6日実施)に我が国からJICA及び国際協力銀行(JBIC)が参加し,被災地を訪れ調査を実施した。
 また,JICAは,被災地での復旧・復興支援の方向性を探るため,「パキスタン国北部地震復旧・復興プロジェクト形成調査団」(JICA,内閣府,国土交通省など10名で構成)を10月22日から11月21日までパキスタンに派遣した。
 本調査団は,災害後の緊急支援・救急活動の段階から復旧・復興支援への円滑な移行の促進を目的とし,地震による被害状況,生活基盤への影響について現地調査を実施した。また,他のドナー国等との情報交換を行い,具体的な事業のニーズを確認し,日本の地震の経験・知見を活かした協力の可能性を検討した。
 本調査の結果を受けて,インドとパキスタンを結ぶ道路にある落橋した橋梁(ジェーラムバレー橋梁)の復旧事業,ムザファラバード市の復旧復興計画作成などの支援事業の実施が決定された。
 また,神戸を拠点とする国際復興支援プラットフォーム(IRP)事務局(詳細は後述)は,被災地で活動している関係国連機関と連携しながら復興支援を行うため,10月21日から31日まで被災地に職員を派遣した。現地では,UNDP,国際労働機関(ILO),UN-HABITAT,国連環境計画(UNEP),WHO等の関係国連機関と共に,ぺシャワール,マンセーラ,バラコート,シャングラ,バタグラムなどを対象とした国連の早期復興のためのニーズ評価活動に参加するなど,緊急対応終息期から発災後9-12ヶ月の間に必要となる,主にリスク軽減の分野におけるニーズ把握調査を行った。

コラム


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