1−1 世界における最近の自然災害



第4章 世界の自然災害と国際防災協力

1 世界の自然災害の状況

1−1 世界における最近の自然災害

 2005年4月以降に世界で発生した主な自然災害は 表4−1−1 のとおりであり,そのうち被害の大きなものは次のとおりである。
(1)中国の洪水
 中国の東南部や内陸部では,2005年5月末から6月,7月にかけて断続的に大雨に見舞われた。これらに起因して発生した複数の洪水により,総計,死者262人,行方不明者113人,被災者3,770万人の被害となった。
(2)インドの洪水・地すべり
 6月下旬から7月にかけて,インドの東部,西部の両沿岸部で大規模な洪水が発生した。6月下旬から7月上旬の大雨では226人が死亡,13人が行方不明,被災者は40万5千人に及んだ。また,7月24日の洪水とそれに起因して発生した地すべりにより,マハーラーシュトラ州などにおいて,死者1,397人,行方不明者106人,被災者290万5千人が発生し,また,家屋,農地,インフラ等に甚大な被害が及んだ。
(3)中国,ベトナムの台風
 中国東南部では9月上旬,台風タリムにより,洪水,地すべりが発生し,死者129人,行方不明者30人,被災者1,962万4千人の被害がもたらされた。また,9月下旬には,台風ダムレイが中国,ベトナム両国を襲い,死者68人,行方不明者16人,被災者631万9千人に及ぶ被害が発生した。
(4)中米,米国のハリケーンとハリケーン・カトリーナ
 2005年には,多数かつ大型のハリケーンや熱帯性暴風雨が米国,中米地域を襲った。大西洋,カリブ海及びメキシコ湾地域で発生した熱帯性暴風雨の数は28個(年平均11個)であり,そのうち15個がハリケーンへと発達(年平均6個)し,いずれも観測史上最多となった。
 7月7日から9日にかけて,ハリケーン・デニス(最大時カテゴリー4(5段階分類で2番目に強い))が,ハイチ,キューバ,ジャマイカを通過し,米国に上陸した。ハイチでは死者40人,キューバでは16人,米国では5人,全被災国における被災者は802万3千人に上った。日本政府はハイチ政府に対し,1,000万円相当の援助物資(毛布,発電機等)を供与した。また国連世界食糧計画(WFP)がキューバにて実施中の緊急食糧配布事業を支援することを目的として,10万ドルを拠出した。
 8月23日にバハマ南東で発生した熱帯性低気圧は,25日,ハリケーン・カトリーナとなり,米国フロリダに一度上陸した後,メキシコ湾を通過中の28日にはカテゴリー5へと発達した。29日には,カテゴリー3の上限に値する勢力,最大風速約57m/sで,ルイジアナ州に再上陸し,徐々に勢力を落としながら米国南東部を通過した。これに伴い,高潮,洪水が各地で発生し,メキシコ湾沿岸部の広域(ルイジアナ州,ミシシッピ州,フロリダ州,ジョージア州,アラバマ州)において,米国の災害史に残る甚大な人的・経済的被害がもたらされた。特に被害の大きかったルイジアナ州ニューオーリンズ市は,市の80%が浸水した。
 ハリケーン・カトリーナによる死者は合計1,336人,行方不明者4,000人以上,被災者数百万人にも上るとの報告がなされているが,全体像は不明である(米国国家ハリケーンセンター報告書,2005年12月)。また,家屋,建物,商業施設,インフラ,そして沿岸地域にある石油関連施設も壊滅的な打撃を受け,原油価格の高騰を招いた。被害額は,数百億から千数百億ドルにも達すると試算されている(国連国際防災戦略(UN/ISDR)及びルーバン・カトリック大学疫学研究所(CRED)発表データでは約1,250億ドル,米国国家ハリケーンセンター報告書では保険対象の財産損失推計200〜600億ドル)。
 これに対し,国際社会では,世界の130以上の国々,10以上の国際機関が米国に対して資金や援助物資の提供を表明した。その中には2004年に津波の被害を受けたインドネシア,スリランカなどの被災国も含まれる。日本政府はこの被害に際し,資金及び援助物資の供与を行った。資金供与としては,被災者支援のため,米国赤十字社に対して20万ドルの資金を供与した。また,米国赤十字社に対して30万ドル相当の援助物資(毛布,スリーピングマット)の供与,米国国際開発庁(USAID)の要請を受け,ミシシッピ州緊急事態管理庁に20万ドル相当の発電機,コードリールの供与を実施した。
 10月にはハリケーン・スタン及びウィルマが中米諸国を襲った。10月4日から9日にかけて,ハリケーン・スタンは,カテゴリー1,最大瞬間風速33m/sと強力ではなかったが,雨量が多く,グアテマラ,エルサルバドル,メキシコ,コスタリカ,ニカラグアで洪水,地すべりを引き起こした。グアテマラでは死者669人,行方不明者844人,エルサルバドル,メキシコ両国では死者がそれぞれ69人,15人となった。また,被災者はこれらの国々を合わせて,約240万人に上った。数十万戸の家屋が被害を受け,農地への影響も大規模なものとなった。
 日本政府は,グアテマラ政府に対し総額1,200万円相当の援助物資(毛布,浄水器等)と78万ドルの無償資金協力及び国連世界食糧計画(WFP)を通じた緊急食糧配布事業に20万ドル拠出した。また,エルサルバドル政府に対しては,1,200万円相当の援助物資(スリーピングマット,毛布等)を供与した。
 10月下旬,中米及び米国を襲ったハリケーン・ウィルマ(最大時カテゴリー5),熱帯性暴風雨・アルファにより,メキシコでは100万人以上が避難することになった。
(5)インドネシアの鉄砲水,地すべり
 2006年1月1日,インドネシアの東部,中部ジャワ地域で,鉄砲水と,これに起因した地すべりが発生した。この被害による死者は154人に達し,8千人を超える住民が避難した。家屋,建物,インフラ等にも大きな被害を与えた。
 日本政府はインドネシア政府に対し,総額約1,200万円相当の緊急援助物資(テント,毛布等)を供与した。
(6)フィリピンの地すべり
 2月17日,フィリピンのレイテ島において大規模な地すべりが発生し,死者139人,行方不明者980人,被災者1万8,862人の被害がもたらされた。
 日本政府はフィリピン政府に対し,約2,500万円相当の緊急援助物資(テント,毛布等)を供与した。また,フィリピン政府(公共事業道路省)の要請を受け,国土交通省からマニラに派遣されている独立行政法人国際協力機構(JICA)専門家2名が,公共事業道路省が実施する復旧,被災者支援活動に関して2次災害危険度の調査を支援した。

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