5−3 鉄道災害対策



5−3 鉄道災害対策

(1)鉄道災害の現況
 我が国の鉄道災害は,安全対策を着実に実施してきた結果,列車の高速化・高密度化が進む中でも長期的には減少する傾向にあるが,一度事故が発生すると多数の死傷者を生じるおそれがある。近年の主な鉄道事故としては,平成12年3月の帝都高速度交通営団日比谷線の列車脱線・衝突事故(死者5人,負傷者64人),平成14年2月のJR九州鹿児島本線の列車衝突事故(負傷者134人),同年9月の名古屋鉄道名古屋本線列車脱線事故(死者1人,負傷者34人)や,平成14年11月に発生した大阪市内の鉄軌道内で救助活動中の消防隊員が走行列車に接触する事故(死者1人,負傷者1人)がある。
 特に,平成17年は,3月の土佐くろしお鉄道列車脱線事故(死者1人,負傷者10人),4月のJR西日本福知山線列車脱線事故(死者107人,負傷者549人),12月のJR東日本羽越線列車脱線事故(死者5人,負傷者32人)と,被害の大きな鉄道事故が続発した。
 4月のJR西日本福知山線列車脱線事故に対し,政府においては,事故発生直後より官邸連絡室を設置(12時には官邸対策室に改組)したのをはじめ,国土交通省において北側国土交通大臣を本部長とする福知山線事故対策本部を設置するなど,関係省庁において事故への対応体制を整備するとともに,事故当日13時には関係省庁局長会議を開催し,警察広域緊急援助隊,災害派遣された自衛隊及び緊急消防援助隊が密に連携して支援することなどを確認し,その実施に努めた。
 また,12月のJR東日本羽越線列車脱線事故に対し,政府においては,国土交通省において北側国土交通大臣を本部長とする羽越線事故対策本部を設置するなど,関係省庁において事故への対応体制を整備するとともに,警察広域緊急援助隊を派遣するなどして,被災者の救助活動等に万全を尽くした。
(2)鉄道災害対策
a 鉄軌道交通環境の整備
 国土交通省が,施設の保守について鉄軌道事業者を指導している。
 また,平成15年2月に発生した韓国テグ市の地下鉄火災を踏まえ,消防庁と国土交通省と共同で,「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し,我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を行った。
b 鉄軌道交通の安全のための情報の充実
 気象庁は,鉄軌道交通の安全に係わる気象現象,予報,警報等の情報を適時・適切に発表している。
c 鉄軌道の安全な運行の確保
 国土交通省において,迅速かつ的確な運行指令体制づくり,乗務員等に対する科学的な適正検査の定期的な実施について,鉄軌道事業者を指導している。
 また,大阪市で発生した救助活動消防隊員の列車接触事故を受けて,消防庁は国土交通省と連携し各地域における消防機関と鉄道事業者との緊密な連携・協力体制の確保を図っている。
d 鉄軌道車両の安全性の確保
 国土交通省において,車両の技術上の基準への適合性を確認するとともに,事故事例に応じた対策を鉄軌道事業者に指導している。
e 踏切道における交通の安全の確保
 事故防止に関する知識を広く一般に普及するとともに,踏切道の立体交差化,踏切保安設備の整備等を計画的に推進している。
f 事故調査体制の整備
 営団日比谷線列車脱線衝突事故等を背景として,国土交通省は平成13年10月,航空・鉄道事故の原因究明のための調査,事故等の防止施策についての勧告等を行うための常設・専門の組織として「航空・鉄道事故調査委員会」を設置し,事故調査体制の強化を図っている。
(a)JR西日本福知山線列車脱線事故(平成17年4月25日)
 同調査委員会では,委員,鉄道事故調査官を現地に派遣するなどして調査にあたり,再発防止対策等の検討が早急に必要であると考えられることから,9月6日に調査の経過報告を行うとともに,自動列車停止装置(ATS)等の機能向上,事故発生時における列車防護の確実な実行,列車走行状況等を記録する装置の設置と活用,速度計等の精度確保について国土交通大臣に対して建議を行った。現在は事故原因等についての最終的な結論を得るため,引き続き調査を進めている。
(b)土佐くろしお鉄道列車脱線事故(平成17年3月2日),JR東日本羽越線列車脱線事故(平 成17年12月25日)
 同調査委員会では,両事故に対し,委員,鉄道事故調査官を現地に派遣するなど,現在事故原因等について調査を進めている。
g 平成17年の鉄道事故を踏まえた再発防止対策
(a)JR西日本福知山線列車脱線事故(平成17年4月25日)
 国土交通省は,JR西日本に対し4月28日に「安全性向上計画」の策定を指示,5月31日の同計画提出後,取組状況等を確認するための保安監査を実施し,11月15日に同計画の着実な実施に向けた勧告を行った。一方,JR,大手民鉄及び公営事業者に対しては,5月6日に列車ダイヤ,ATS等鉄道施設及び車両に係る総点検の実施を指示した。また,この事故を契機に,急曲線における速度超過防止用ATS等の緊急整備,運転士の資質向上の検討,技術基準の見直し等法令改正も含めた鉄道輸送の安全性向上策を推進していくこととしている。
(b)JR東日本羽越線列車脱線事故(平成17年12月25日)
 国土交通省は,翌26日に全国の鉄軌道事業者に対し,鉄道輸送の安全確保及び風速計に係る緊急総点検の実施を指示した。また,同事故の重大性にかんがみ,鉄道強風対策協議会を開催し,鉄道における気象観測,運転規制,防風対策のあり方等,強風対策についてソフト・ハードの両面から検討を進めている。

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