2−4 高齢者等災害時要援護者の命と暮らしを守る



2−4 高齢者等災害時要援護者の命と暮らしを守る

(災害時要援護者対策の課題と対策の進展)
 近年の災害において高齢者の被害が大きな割合を占めており,また,今後の急速な高齢化によりこうした傾向が拡大することが懸念される状況などにかんがみ,災害被害を軽減するために高齢者,障害者等の災害時要援護者対策を充実強化することは喫緊の課題である。特に,災害対策における防災関係部局と福祉関係部局その他の関係団体との連携を深め,要援護者の命を守るための情報(要援護者の所在,情報伝達体制,必要な支援内容等)について,予め適正に共有し,要援護者一人ひとりの避難支援プランを策定するなど,災害時の迅速かつ円滑な避難支援を確保する体制を整備する必要がある。
 このため,内閣府では,平成16年の新潟や福井等における一連の風水害における状況等を踏まえ,関係省庁と連携し,平成17年3月に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」をとりまとめ,①情報伝達体制の整備,②災害時要援護者情報の共有,③災害時要援護者の避難支援計画の具体化について,地方公共団体,特に市町村の取組の促進に努めてきた。さらに,有識者からなる災害時要援護者の避難対策に関する検討会において,新潟県中越地震や昨年の台風第14号,平成18年豪雪等における状況等を踏まえつつ,上記3項目のさらなる充実とともに,④避難所における支援,⑤関係機関等の間の連携に関する検討も加え,本年3月に報告をとりまとめ,上記ガイドラインの改訂を行った。
 今回のガイドラインの改訂では,具体的な対策として,避難所において要援護者用窓口を設置し,要援護者からの相談対応,確実な情報伝達と支援物資の提供等を実施すること,その際,女性や乳幼児のニーズを把握するため,窓口には女性も配置することを掲げている。また,発災による居住環境の急激な変化,孤立や孤独の不安が解消されるよう,災害時における福祉サービスの継続を確保する必要があり,要援護者避難支援連絡会議(仮称)等を通じ,市町村の災害時要援護者支援班,保健・医療機関,保健師,看護師,社会福祉協議会,介護保険制度関係者,自主防災組織,民生委員,障害者団体,関係企業,ボランティア,NPOなどの様々な関係機関等の間の連携を深めることとしている。さらに,要援護者情報の共有を図るため,関係機関共有方式(地方公共団体の個人情報保護条例において保有個人情報の目的外利用・第三者提供が可能とされている規定を活用し,要援護者本人から同意を得ずに平常時から関係機関等の間で共有する方式)の積極的活用などを呼びかけている。
 これらガイドラインに沿った取組の推進には,市町村の役割が重要であり,市町村長の指導力が求められるとともに,地域全体の理解と協力が不可欠であり,行政と地域コミュニティが一体となった支援活動がさらに進められることが期待される。

(外国人への配慮)
 平成16年末のインド洋での未曾有の地震津波災害では,日本人を含む多くの外国人観光客も犠牲となった。我が国では,ビジット・ジャパン・キャンペーンを展開し,日本への外国人観光客の誘致を積極的に進めているが,こうした人々への安全対策を先送りにしてはならない。誘致が,外国人の災害対策とセットで進められるよう,防災部局と観光部局その他の関係団体との連携も,また,今後深めていかなければならない課題である。
 もとより,観光客以外にも,日本に長期滞在する外国人が増加しており,地域の実情に応じた取組も求められる。先進的な地域では,官民の関係団体が連携するなどして,災害対応マニュアルや防災マップの英語や中国語等多言語での提供,外国人向け防災訓練の実施,災害時の多言語での情報の提供,災害時の通訳など外国人支援ボランティアの研修など,さまざまな取組が進められている。
 「世界一安全な国,日本」の復活には,災害から外国人を守る取組により,海外から信頼される安全・安心な社会づくりを進めることも必要である。

(災害時にもユニバーサル・デザインの発想を)
 このように,災害時に避難支援等が必要な高齢者,障害者,外国人,乳幼児,妊産婦等への対策は,安全な社会の基本である。高齢化の進展により災害犠牲者の多くが高齢者となっている現状にかんがみても,「どこでも,だれでも,自由に,使いやすく」というユニバーサル・デザインの考え方を,平常時の社会システムのみならず,災害時にも取り入れ,要援護者のニーズに配慮した対策を進めることが,災害被害を軽減する大きな要素となる。こうした視点を重視し,誰もが安心できる安全な国づくりに,社会の各界各層が一段の認識を深めなければならない。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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