2−3 地域コミュニティ防災への多様な主体の参加と連携を広める



2−3 地域コミュニティ防災への多様な主体の参加と連携を広める

(地域コミュニティ防災の新たな担い手の育成)
 災害被害を軽減する大きな力は,直接災害に立ち向かわなければならない地域コミュニティに根ざしたものでなければならない。こうした認識は,昨年1月の国連防災世界会議(兵庫県神戸市)で採択された世界の防災活動の指針である「兵庫行動枠組2005-2015」の中心テーマでもあり,今や,地域コミュニティにおける防災活動の推進は世界共通の課題となっている。
 今般の平成18年豪雪では,高齢化,過疎化による地域コミュニティの変容が課題として挙げられた。かつての「結(ゆい)」や「地縁」に根ざした互助の取組は,災害被害を軽減するための大きな力であった。地域コミュニティに災害に対する共同体意識を根付かせる継続的な取組が必要である。
 そうした工夫の一つとして,国民運動の推進に関する基本方針においても,日常的に行われている環境,福祉,防犯,消費者保護,青少年育成,社会教育,地域慈善,国際交流といった種々の活動の中に,防災の要素を取り入れていくことが示されている。
 こうした活動を広める主体として,自治会や町内会をはじめ,PTAや公民館,婦人会・女性会,消費者団体,商店街や青年会議所など,地域に根ざした主体の幅広い参加が求められるとともに,地方公共団体やこれらの地域団体,大学やマスコミなどが連携した協働のための枠組みや組織づくりが期待される。
 また,多様な主体の参加を促進する仕掛けづくりが必要であり,例えば,災害発生時の避難訓練を中心とする旧来型の防災訓練から一歩進んで,災害への備えの活動を組み入れていくなどの工夫も必要である。本年4月に決定された平成18年度総合防災訓練大綱(中央防災会議決定)においても,防災訓練が,国民の一人一人が防災に関する正しい知識を身につけ,また,地域,学校,職場等との連携した防災活動を促進し,「日常においていかに備え,災害時に何をするべきか」を考える機会となるよう工夫するとされている。

(消防団,水防団の新たな取組)
 従来からの地域コミュニティ防災の中核である消防団や水防団については,団員数の減少や高齢化が深刻な課題となっているが,今後とも住民の幅広い層からの参加者を確保する必要がある。
 消防団では,郵便局職員,公務員,農協職員,大学生,女性等の入団促進を図るとともに,消防団の全ての活動ではなく,特定の活動のみに参加する機能別団員・機能別分団等を導入する工夫が進められている。例えば,松山市消防局では,本年4月より,全国初の大学生の機能別消防団員(通称「大学生防災サポーター」)を発足させ,大規模災害時の避難所対応(情報連絡,物資管理・配布,外国人被災者の通訳,応急救護)の任務を担うこととしている。
 また,平成17年の水防法改正により,より幅広い民間の活力を活用するため,水防協力団体制度を創設し,予め指定された公益法人や特定非営利活動法人が水防団に準ずるような水防活動を行うことができるようにしている。

(防災ボランティアへの期待)
 新たな共助の力として,今や防災ボランティア活動はなくてはならない存在である。災害時におけるボランティア活動は災害の状況や危険性に応じた適切な対応が求められるが,民間ボランティアの意欲と力,専門性が被災地の支援活動に最大限活かされるよう,行政とボランティア,ボランティア同士,そして被災者とボランティアとの連携が適切になされる環境整備をさらに進めていく必要がある。また,平時からの災害に強いまちづくりに地域に根ざした多様な分野のボランティア活動が関わることも重要である。

(地域企業による貢献)
 災害被害を軽減する上で,地域企業の役割も重要である。企業は,従業員や顧客の安全を確保するとともに,事業活動の継続を通じて社会や経済の安定に貢献する役割が期待される。さらには,平成17年4月のJR西日本福知山線列車脱線事故では,事故現場近くの企業が従業員及び資機材等を活用し,応急活動に貢献したように,地域企業の持てる資源は災害時の貴重な力となりうるものであり,地域の安全への貢献につながる。
 例えば,大手町,丸の内,有楽町地区の企業が設立した「東京駅周辺防災隣組」は,帰宅困難者対策,ビルの耐震診断,ガラス飛散防止対策の促進など,地域の防災のために積極的な活動を展開しており,先進的な取組事例として高く評価される。
 さらに,企業の強みを活かせるよう,予め行政や地域コミュニティと協定を結び,災害時に円滑に活動が行われる環境を整備しておくことも効果的である。最近では,建設業者や輸送業者のほか,生協やコンビニエンスストア,外食事業者,ガソリンスタンドなど,多様な分野での協力が進められている。こうした,地方公共団体と地域企業が連携した取組は,全国で模索されている。
 以上のような多様な団体が主体となった地域コミュニティで進められる新たな取組が全国に波及するよう,政府でも,優良な先進事例を紹介するなどの取組を進めることとしており,これらを参考に,地域に根ざした具体的活動を促進する国民運動への各界各層の積極的な参加がより一層求められる。

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