国連防災世界会議に参加した小泉内閣総理大臣は,今後とも,情報や知識の共有,人的技術的貢献,財政面からの復興支援の全てにおいて,最大限の国際的な協力を行っていくことを表明し,会議成果の「兵庫行動枠組」の実施とフォローアップの重要性を強調しつつ,その具体化に向け,以下のような我が国の国際防災協力に関する考え方を世界に発信した。
国連における防災協力機能の強化〜会議成果の効果的なフォローアップ〜
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(a) 技術協力
[1] 研修
開発途上国の技術者や行政官等を研修員として我が国に受け入れ,防災分野の専門的知識・技術の移転を行うことを目的として,様々な研修を行っている( 表4−3−9 )。
また,JICAは,開発途上国において当該国及びその周辺国の技術者等を対象とした第三国研修を実施している( 表4−3−10 )。
[2] 専門家,青年海外協力隊及びシニア海外ボランティアの派遣
JICAは,開発途上国に専門家を派遣し,現地での防災に関する技術移転を行っている( 表4−3−11 )。
また,技術・技能を有する青年男女が開発途上地域住民と生活を共にしつつ,当該地域の経済及び社会の発展に協力するための青年海外協力隊派遣事業を実施している。
さらに,豊富な知識,経験,技術を有し,かつ途上国の発展に貢献したいというボランティア精神を有する中高年を海外に派遣するシニア海外ボランティア派遣事業を実施している( 表4−3−12 )。
[3] 技術協力プロジェクト
JICAは,専門家の派遣,研修員の受入れ及び機材の供与という3つの協力形態を組み合わせて一つの事業として実施する技術協力プロジェクトを実施している( 表4−3−13 )。
[4] 開発調査事業
開発途上国における開発計画の推進に寄与するため,我が国は開発調査事業として,様々な防災事業に関連する可能性調査あるいは基本計画の策定等について協力を実施している( 表4−3−14 )。
[5] 国際緊急援助
開発途上国を中心とした海外で大規模な災害が発生した場合,相手国政府の要請により国際緊急援助隊の派遣や緊急援助物資の供与などの国際緊急援助を行う。
国際緊急援助は,被災国政府等から日本に対して援助要請があった場合,要請の内容,災害規模,種類等に応じて援助の内容,規模について検討を行い,関係省庁との協議を経て決定する。
国際緊急援助隊は救助チーム,医療チーム,専門家チーム及び自衛隊の部隊等からなり,被災国の要請,災害の種類・規模等に応じて単独または適宜組み合わせて派遣されている( 表4−3−15 , 表4−3−16 )。
また,被災者の救援のために,毛布,テント,浄水器,簡易水槽,発電機,医薬品,医療機材などの緊急援助物資を供与している。これらの物資を迅速かつ確実に供与するため,物資の備蓄倉庫をシンガポール,ロンドン,マイアミに設置している。
平成15年2月の中国新疆ウイグル自治区の地震では,15万ドルの緊急無償資金協力および約1,270万円相当の物資援助(テント,毛布,簡易水槽,発電機等)からなる総額約3,000万円の緊急援助が行われた。
平成15年5月のスリランカにおける洪水災害では,約1,980万円相当の物資援助(テント,プラスチックシート,ポリタンク,発電機等)と10万ドルの緊急無償資金協力が行われた。
平成15年5月に発生したアルジェリアの地震では,国際緊急援助隊救助チーム,同医療チームおよび同専門家チーム(建物の耐震診断等)を派遣した。救助チームは,ブメルデス県ゼンムリにおいて生存者1名を救出した。
(平成16年12月に発生したインドネシア・スマトラ島沖大地震及び津波被害に対する我が国対応は前述)
(b)無償資金協力
無償資金協力とは,被援助国(開発途上国)に返済義務を課さないで資金を供与するものである。この無償資金協力の中で,海外での災害発生時において被害状況を迅速に把握し,物資の購入等のため必要な資金を供与する緊急無償資金協力を実施している。さらに,防災及び災害復旧関連の施設や機材の整備等に対しても無償資金協力により援助が行われている。
災害対策分野に関する平成15年度無償資金協力の実施額は約182億円で,一般プロジェクトと食糧援助が中心である。
(c)有償資金協力
有償資金協力(円借款)は,被援助国(開発途上国)に対し長期低利の緩やかな条件で,開発資金を貸し付けるものである。防災関係の有償資金協力としては,治水(洪水対策)や耐震補強事業に対するものなどがある。
これまでの防災分野の実績ではインドネシアとフィリピンへの継続的な供与が多く,その殆どは洪水対策である。また,中国およびブラジルには洪水対策への比較的規模の大きな援助が行われている。平成15年度に中国に対して供与が決定された長江中流域の植林計画は,植林を通じ土壌流出による長江の洪水災害を抑制することを目的としたものである( 表4−3−17 )。