5 防災まちづくりの推進



5 防災まちづくりの推進

(1)防災まちづくりを推進するための専門調査会提言

 前節の「民間と市場の力を活かした防災力向上」で示したように,中央防災会議の「民間と市場の力を活かした防災力向上に関する専門調査会」は,防災まちづくり分科会と市場・防災社会システム分科会の2つの分科会を設けて検討を進め,平成16年10月に「民間と市場の力を活かした防災戦略の基本的提言」をとりまとめた。
 このうち,防災まちづくり分科会では,先進事例6地域においてモデル調査を実施した。その概要は表3−5−1のとおりである。
 基本的提言は,防災まちづくりに関して次のように指摘をしている。
○ 従来からの防災を主目的とする取組みはもちろん重要であるが,防災まちづくりの活動を日常続けるためには,「防災のために何かをする」取組みだけでなく,「他の目的のため」,あるいは「他の目的と併せて」防災に取り組むといった活動でもよい。
○ 「まちづくり」活動を通じて個人と地域が力をつけ,皆で力を合わせ一人ひとりがその人らしく活動する中で,地域社会を変えていく力をもつことが,地域防災力を高めることにつながる。
○ 先進事例の調査から,防災以外の様々な目的を持ったまちづくり活動が,防災まちづくりにも取り組むようになる発展パターンを以下のとおり見いだすことができた。
〈第一段階〉 地域に「共通の目標」(環境,福祉,教育,防犯等)で自主的な活動が始まる
〈第二段階〉 イベントを通じて,活動が広がりを見せる
〈第三段階〉 ちょっとしたきっかけで「防災」に関する関心が高まる( 図3−5−1
〈第四段階〉 「防災」を意識した活動が日常的に展開する( 図3−5−2
〈第五段階〉 本来の活動のネットワークを通じて防災の取組みが伝播する

<第3段階>飛散防止フィルム張りお助け隊(早稲田地区)

<第4段階>公開耐震補強工事(平塚地区)

○ 防災活動では「内発的」活動が重要。特に耐震化のような課題は,行政の取組みだけでは不十分で,地域の内から「おせっかい」がないと進まないことを認識し,効果的な取組みを模索する必要がある。
○ 防災まちづくりを推進するための方策の主なものは以下のとおり。
 ・まちづくり活動やNPOの活動に対する各種支援策を有効に活用できるよう,支援ガイドブック(まちづくり支援道具箱)を官民連携して作成する。
 ・各地域での先進的な防災まちづくりの取組みを官民で掘り起こし,その活動,成果,課題等を評価し広く紹介するポータルサイトを政府が立ち上げる。
 ・防災まちづくり活動に対し,政府が継続的に適切な助言,講師派遣,相談に応じる体制・窓口を整備し,行政と民間の信頼関係を強化する。
 ・防災まちづくりに関連した地域内及び地域間の交流を支援する仕組みの構築を政府としても検討する。

(2)防災まちづくりワーキンググループ

 専門調査会では,基本的提言に盛り込んだ支援策の実現・具体化に向けた検討を進めるため,平成16年12月に,外部の専門家も含めた防災まちづくりワーキンググループを設置した。
ワーキンググループでは防災まちづくり活動を推進するための方策を検討するにあたり,これまで調査してきたモデル地域に加え,新たな防災まちづくり活動も調査している( 表3−5−1 )。

防災まちづくり事例の概要(1)

防災まちづくり事例の概要(2)

また,このような先進的な事例を整理・分類した結果を活かし,各地の防災まちづくり活動を推進するための方策として,防災まちづくりポータルサイトの構築等の具体策を検討している。

a 防災まちづくりポータルサイトの構築
 防災まちづくりを全国に拡げていくため,これまで防災活動に関わってこなかった個人やまちづくり組織が,防災に関心を持ち,防災活動にも取り組むきっかけとなる様々なツールを内閣府に置くポータルサイトに掲載し,広く利用に供する。掲載内容のポイントは以下のとおりである( 図3−5−3 )。
 [1] 防災に加えて,福祉,緑化,環境共生,教育など,様々な活動を取り込む活動が行われている「防災まちづくり」事例を紹介し,まちづくり活動の延長線上で防災活動が可能なことを知っていただく。
 [2] 防災まちづくりに取り組むために役に立つ道具(情報,人材,資金,ノウハウ)を紹介・提供し,防災まちづくり活動を拡げる。
 [3] ポータルサイトを活用した交流の場を提供することで,「防災まちづくり」を様々な地域に広げ,またネットワーク化する。
b 防災まちづくり支援ガイドブック(まちづくり支援道具箱)の作成
 防災ポータルサイトの一部を,防災まちづくりをいかに行うかを分かりやすく示したガイドブックとして再構成する。これにより,まちづくりに関心を持つ方々などが防災活動に関心を持ち,防災まちづくりの概要を手軽に理解できるよう支援する。また,講習会などに活用することも目指す。

防災まちづくりポータルサイトの構築案


COLUMN  先進的な技術による防災まちづくりの促進
  東京の多摩ニュータウンの特定非営利活動法人(NPO法人)フュージョン長池は,インターネットカメラを活用し,地域の防犯,防災に役立てることを検討している。民間企業と協力し,長池ネイチャーセンター展示室や,高尾山頂上部にインターネットカメラを設置,現代の「火の見やぐら」として,リアルタイムの現場状況をホームページを通じて公開している。このような新たな技術の活用は,従来のまちづくり活動に防災風味を付加し,今後の防災まちづくりの参考になるものがある。

インターネットカメラの中継映像の例


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