このうち,防災まちづくり分科会では,先進事例6地域においてモデル調査を実施した。その概要は表3−5−1のとおりである。
基本的提言は,防災まちづくりに関して次のように指摘をしている。
○ 従来からの防災を主目的とする取組みはもちろん重要であるが,防災まちづくりの活動を日常続けるためには,「防災のために何かをする」取組みだけでなく,「他の目的のため」,あるいは「他の目的と併せて」防災に取り組むといった活動でもよい。
○ 「まちづくり」活動を通じて個人と地域が力をつけ,皆で力を合わせ一人ひとりがその人らしく活動する中で,地域社会を変えていく力をもつことが,地域防災力を高めることにつながる。
○ 先進事例の調査から,防災以外の様々な目的を持ったまちづくり活動が,防災まちづくりにも取り組むようになる発展パターンを以下のとおり見いだすことができた。
〈第一段階〉 地域に「共通の目標」(環境,福祉,教育,防犯等)で自主的な活動が始まる
〈第二段階〉 イベントを通じて,活動が広がりを見せる
〈第三段階〉 ちょっとしたきっかけで「防災」に関する関心が高まる( 図3−5−1 )
〈第四段階〉 「防災」を意識した活動が日常的に展開する( 図3−5−2 )
〈第五段階〉 本来の活動のネットワークを通じて防災の取組みが伝播する
○ 防災活動では「内発的」活動が重要。特に耐震化のような課題は,行政の取組みだけでは不十分で,地域の内から「おせっかい」がないと進まないことを認識し,効果的な取組みを模索する必要がある。
○ 防災まちづくりを推進するための方策の主なものは以下のとおり。
・まちづくり活動やNPOの活動に対する各種支援策を有効に活用できるよう,支援ガイドブック(まちづくり支援道具箱)を官民連携して作成する。
・各地域での先進的な防災まちづくりの取組みを官民で掘り起こし,その活動,成果,課題等を評価し広く紹介するポータルサイトを政府が立ち上げる。
・防災まちづくり活動に対し,政府が継続的に適切な助言,講師派遣,相談に応じる体制・窓口を整備し,行政と民間の信頼関係を強化する。
・防災まちづくりに関連した地域内及び地域間の交流を支援する仕組みの構築を政府としても検討する。