2−5 災害復旧対策等の実施



2−5 災害復興対策等の実施

 災害からの復旧・復興においては,災害復旧事業等による公共的施設の復旧整備等による単なる原状回復にとどまらず,より安全性に配慮した地域振興のための基礎的な条件づくりとともに,被災地復興の計画的実施,復旧・復興に不可欠である地域経済の復興対策,被災者の自立した生活再建の対策等について,法律・税制・予算措置等による様々な措置を講じることとしている。

(1)災害復旧事業
a 主な災害復旧事業
   道路・港湾等の公共的施設等が被災した場合においては,公共の福祉の確保を図る観点等から,その迅速な復旧が望まれる。国が実施する主な災害復旧事業は, 表2−2−4 のとおりであるが,できる限り速やかに実施されることが必要であり,原則として直轄事業については2か年,補助事業については3か年で事業を完了させることとしている。
 
主な災害復旧事業
 また,国は災害復旧事業を実施するために大きな財政負担を負う被災地方公共団体に対して,災害関係地方債の許可及びこれに対する財政融資資金の貸付,普通交付税の繰上げ交付,特別交付税における災害に伴う特別の財政需要の算定等の措置を講じ,財政負担の軽減を図っている。
b 激甚災害制度
 前述の措置に加えて,国民経済に著しい影響を及ぼし,かつ,当該災害による地方財政の負担を緩和し,又は被災者に対する特別の助成を行うことが特に必要と認められる災害が発生した場合には,中央防災会議が定める基準に基づき,当該災害を政令で「激甚災害」に指定し,災害復旧事業に対する国の補助率のかさ上げ等,特別な助成措置を講じ,地方公共団体や被災者の負担軽減を行っている。

(2)復興対策
a 復興計画の作成
 大規模な災害により甚大な被害が発生した場合には,被災者の生活再建や地域の復興を迅速かつ円滑に推進するため,被災地方公共団体は早期に的確に対応する必要があるが,そのためには事前にその備えをしておくことが重要である。
このため,国においては,地方公共団体が災害の態様や地域の特性に合わせて復興対策を迅速かつ的確に検討できるよう,現状や問題点を様々な角度から調査・検討し,復興支援方策の充実を図っているところである。
b 被災者生活支援対策
 災害により被害を受けた場合に,災害により死亡した者の遺族に対する災害弔慰金,災害により著しい障害を受けた者に対する災害障害見舞金が支給されるほか,「被災者生活再建支援法」(平成10年法律第66号)に基づき,自然災害により生活基盤に著しい被害を受け,経済的理由等により自立して生活を再建することが困難な被災世帯に対しては,被災者生活再建支援金が支給される。
c 被災者生活再建支援法について
(制度拡充(平成16年4月1日)に至る経緯)
   阪神・淡路大震災後,被災者の生活再建支援制度の創設が議論される中,現行の被災者生活再建支援法が議員立法により制定され,平成10年11月に施行された。この際,住宅の再建支援については,今後の検討課題として,同法附則第2条において,「住宅再建支援について検討を行い,必要な措置を講じる」と規定されるとともに,衆議院災害対策特別委員会における附帯決議においては,「施行後5年を目途に総合的な検討を加え,必要な措置を講じる」とされた。
   これらを踏まえ,平成11年1月に国土庁(当時)に「被災者の住宅再建支援の在り方に関する検討委員会」が設置された。同委員会は,避難所,仮設住宅のタイプの多様化,既存の空き住宅ストックの活用等の方策を示すとともに,全住宅に加入を義務付ける住宅再建のための相互支援制度については,強制加入に対する国民の理解,徴収事務等の負担等の課題が指摘されたため,今後検討することが必要との報告書を平成12年12月にとりまとめた。
その後,平成14年7月には,中央防災会議に設置された防災基本計画専門調査会が「防災体制の強化に対する提言」において,「行政としては,住宅の所有・非所有に関わらず,真に支援が必要な者に対し,住宅の再建・補修,賃貸住宅への入居等に係る負担軽減などを含めた総合的な居住確保を支援していくことが重要。国は,現行の支援に加えて,安定した居住の確保のための支援策を講じるべきである。」との報告を同会議に行った。
   また,平成15年7月全国知事会議は,「自然災害被災者支援制度の創設等に関する緊急決議」を採択し,都道府県が新たに資金を拠出して,公的支援による住宅再建支援制度を創設することを決定した。
(制度の創設)
  このような状況を踏まえ,居住安定支援制度創設を含む被災者生活再建支援制度の拡充が平成16年度政府予算案において認められ,平成16年2月の閣議決定を経て「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案」として国会に提出され,同年3月に衆議院及び参議院においていずれも全会一致で可決成立し,関係政令,内閣府令も併せて改正され,新制度は同年4月1日から施行されている。
(法改正の趣旨)
  自然災害で住宅が全壊したこと等により,住宅の再建,補修,賃貸住宅への入居等を余儀なくされる被災者に対し,自助努力のみでは円滑な居住の確保が図られないおそれがある場合に必要となる経費の負担軽減を図ることで,被災者の安定した居住確保のための支援を行う趣旨から,居住安定支援制度を創設し,被災者生活再建支援制度の拡充を図った。
  また,これまでの施行状況等を踏まえ,既存の被災者生活再建支援制度についても所要の改正を行った。
(主な改正内容)
 ○居住安定支援制度の創設
     居住安定支援制度を創設し,住宅の再建・補修,賃貸住宅への入居等に際し,被災者が現実に負担する経費(解体・撤去費,ローン利子等の居住関係経費)を幅広く支援対象とした。
 ○被災者生活再建支援金の支給限度額の引き上げ
   居住安定支援制度に係る居住関係経費を被災者生活再建支援法の対象とし,当該費用の最大支給額を200万円とすることから,支援金全体の支給限度額を100万円から300万円に引き上げた。
 ○支給対象世帯の拡大
   支給世帯となる被災世帯を,従来の全壊世帯に加え,大規模半壊世帯を居住安定支援制度の支給対象とした。
 ○長期避難解除世帯特例
   避難指示等が解除されないまま通算3年以上経過した場合であって,当該避難指示等が解除された後2年以内に,従前居住していた市町村内に居住する世帯に対しては,必要となる移転費,物品購入・修理に必要な経費(長期避難解除世帯特例経費)に対し,70万円を上限として支援することとした(支援金全体の支給上限の範囲内)( 図2−2−2 )。

被害者生活再建支援制度の拡充の概要

(平成16年度の取組み)
   平成16年度からは上記のとおり,居住安定支援制度の創設を含む被災者生活再建支援法が改正施行されたが,平成16年度は,観測史上最多の10個の上陸台風や,新潟県中越地震,福岡県西方沖を震源とする地震等,多くの災害が発生し,支援法の適用災害は,6月佐賀県突風災害,7月新潟・福島豪雨災害,7月福井豪雨災害,台風第15号豪雨災害,台風第16号豪雨等災害,台風第18号豪雨等災害,台風第21号豪雨災害,台風第22号豪雨災害,台風第23号豪雨災害,10月新潟県中越地震災害,2月三宅島噴火災害(帰島関連分)及び3月福岡県西方沖を震源とする地震災害の計12災害,適用区域は延べ4県(全域),34市,20町,3村に及び,法施行以来最大の適用規模となっている( 表2−2−5 )。

被災者生活再建支援制度に係る支援金の支給について(その1)

被災者生活再建支援制度に係る支援金の支給について(その2)

○浸水等による住宅被害の認定について
  浸水による住宅被害の認定方法については,平成13年6月の「災害の被害認定基準について」及び同年7月の「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」により,基準が示されているところであるが,各地で発生した,一連の豪雨,台風等の災害による家屋の浸水被害の状況等を踏まえ,畳が吸水し膨張した場合は「床」の損傷として取り扱う等,住宅被害の認定にかかる被災者生活再建支援法の弾力的な運用を図ることとする通知を行い,同法の積極的な活用を図っている( 表2−2−6 )。

被災者生活再建支援法の弾力的運用について(通知の概要(H16.10.28)

○被災者生活再建支援金の申請方法の簡素化について
  従来,支援金の精算を行う際には,一部の経費を除き,対象となる経費の領収書の添付が求められていたが,被災者の事務負担を軽減する観点から,領収書の添付は不要とし,申請方法を簡素化し,予め必要な経費を前払いする概算払いの仕組みとあわせて,被災者の早期の生活再建が進むよう工夫を行った。
d 居住対策
   災害により住宅を失った被災者が,一日でも早く恒久住宅に入居できるよう,国においては公的賃貸住宅の量的確保に加え,持ち家に関しては住宅金融公庫等による融資による措置を講じている。また,地震保険や地震等による損害を対象とする各種共済の世帯加入率は約3割に達しているものの,なお一層の普及を図ることが必要である。とりわけ地震保険については,利用を促進するために,平成13年10月1日より建物の耐震性能に応じた割引制度が導入されるとともに,今後の地震保険の契約高の増加に対応するため,平成17年4月以降,1回の地震等によって支払われる保険金の限度額が4兆5,000億円から5兆円に引き上げられた。

COLUMN  地震保険
   日本は世界有数の地震国であり大小の地震が頻繁に発生している。最近も新潟県中越地震や福岡県西方沖地震が発生している。地震が発生した際に早期復興を図り,経済社会を維持,発展させていくためには,地震災害に対する国民の自助努力による備えが不可欠である。また,特に地震災害に対して私有財産である住宅・家財を保全し,被災後の生活を早期に立て直すためには,自助努力による備えが大切である。
 明治以降大きな地震災害が発生する度に,地震による損害を補償する保険の創設の必要性が叫ばれたが,地震はきわめて大きな損害をもたらす可能性があり,そのリスクを民間の損害保険会社のみで分担することは困難である。
 そこで,昭和39年の新潟県地震を契機として,昭和41年に「地震保険に関する法律」が制定され,政府が再保険を引き受けることとし,政府と民間の損害保険会社が共同で運営する地震保険制度が設けられた。通常,再保険契約は,民間の保険会社間で行われるが,この地震保険制度では民間の損害保険会社と政府の間でも再保険契約が結ばれている。
 地震保険は,地震災害専用の保険で,保障される損害は,地震・噴火またはこれらによる津波を直接または間接の原因とする火災・損壊・埋没または流失によって,居住用建物または生活用動産(家財)について生じた損害である。また地震保険契約は火災保険に付帯する方式での契約となるので,火災保険への加入が前提となり,限度額は火災保険の30%〜50%の範囲で決めることとなる。
 平成15年度末の地震保険の加入率は17.2%にとどまっている。今後,地震保険についての確かな情報を国民に伝えることなどを通じて,加入率を高めていくことが求められている。
 また,地震災害の損害を補償するものとして,農業協同組合が実施する,建物または家財などの損害を補償する建物更生共済等がある。
 なお,風水害による住宅,家財の損害については,民間保険会社の住宅総合保険等の商品においても,補償範囲とされている。

表1 平成16年度の主な自然災害による地震保険支払い見込み

平成16年度の主な自然災害による地震保険支払い見込み

(参考)最近の主な自然災害による地震保険支払い状況

最近の主な自然災害による地震保険支払い状況

表2 平成16年度の主な自然災害による建物更生共済支払い見込み

平成16年度の主な自然災害による建物更生共済支払い見込み

表3 平成16年度の主な風水害による保険金支払い見込み

平成16年度の主な風水害による保険料支払いの見込み

e 市街地の復興対策
 災害後の被災者の生活確保・再建及び地域の経済活動の継続・復興のためには,これらの活動を支える市街地の復興が不可欠となる。
市街地の復興のため,土地区画整理事業,市街地再開発事業等が実施され,さらに防災上の理由から住宅を集団で移転する場合には,防災集団移転促進事業等が行われることとなるが,国においてはこれらに対し助成措置を講じている。
  また,被災者の生活と密接に関連するライフライン,道路等の都市基盤施設については,迅速な復旧を行うことが基本であるが,災害によって脆弱性が明らかにされた施設については,単なる原状復旧ではなく耐震性の強化等を含む,より安全性に配慮した都市基盤施設の復興を実施していくことが必要となる。
f 地域経済の復興対策
 地域の経済状況は,その地域の住民の雇用,収入その他の生活基盤の安定の面で,非常に大きく係わってくるものであり,また地方公共団体の復興財源の確保にも大きな影響を与える。
地域経済の復興においては,前提となる都市基盤施設の早期復旧,防災まちづくり等を計画的に推進するとともに,被災中小企業者対策として政府系中小企業金融機関の災害復旧資金の貸付や,信用保証協会による信用保証の特例措置等の制度が設けられているほか,農林漁業者に対してはその経営の安定を図るため各種の支援制度がある( 表2−2−7 )。

主な被災者支援処置

その他,総合相談体制の整備,金融面での支援といった個々の事業者を対象とした施策や,イベントやプロジェクトの企画・誘致,観光・地場産業の振興等の地域全体に波及効果を及ぼすような措置を講じていくことになる。
g 災害の被害認定基準
  災害の被害認定基準のうち,住家の全壊・半壊に係る認定基準は,平成13年6月28日付の内閣府政策統括官(防災担当)通知により改正された( 表2−2−8 )。

災害の被害認定基準

  また,内閣府において,関係省庁の協力を得て,基準の改正に併せ「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」を作成し,全ての地方公共団体に配布するとともに,関係省庁と連携を図りながら,研修会等の様々な機会を通じて運用指針等の周知に努めている。
 


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