4−3 避難指示解除に向けての動き



4−3 避難指示解除に向けての動き

a 三宅島帰島プログラム準備検討会
    上記火山ガス検討会報告で示された長期的目安(以下「目安」という。)を念頭に置きながら,島内の観測点ごとの二酸化硫黄濃度を観察してきたところ,島内には,既に目安に達した地区,目安に概ね達しているが今後の推移を注意深く見守る必要がある地区,目安に達していない地区が存在することが分かった。今後,これらの測定結果をさらに見守る必要があるものの,本格的な帰島が可能な状況になった場合に,速やかに帰島が実現し島民の生活再建が行えるよう,今から具体的な準備や検討を行うことが必要ではないか,という認識から,平成15年10月,内閣府政策統括官,東京都副知事,三宅村長の三者会議が開催された。その結果,帰島にあたっては相当な準備期間が必要であることから,帰島が決定した際に速やかな帰島が実現されるよう,現時点において帰島に向けて必要となる各種対策や課題を検討するべく,内閣府,東京都,三宅村の関係部課長級職員で構成される「三宅島帰島プログラム準備検討会」が設置された。
 また,国においても,15年10月,「平成12年(2000年)三宅島噴火非常災害対策本部」会議を開催し,「三宅島帰島プログラム準備検討関係省庁等連絡会議」を設置することとし,上記検討会と並行して,関係省庁等において検討を進めることとした。
 同検討会では,帰島に際して必要となる各種対策や課題について,できる限り幅広く捉え,島民の方々が,帰島に向けた判断をされる場合に,参考にしていただけることも念頭において,帰島に際して必要と思われる対策,スケジュール,役割分担等について検討した。
 検討を進めるにあたっては,[1]火山ガスによる健康影響を最小限に抑えるために安全確保策を検討する「安全分科会」,[2]災害復旧の仕上げと居住環境の整備に係る事項を検討する「基盤分科会」,[3]帰島後における当面の生活に係る事項を検討する「生活分科会」の3つの分科会を設けた。
 各分科会では,帰島にあたって重要なことは,自らの安全を守るのは自分自身であること(自助),島民一人ひとりの主体的な取組みと島民相互が協力しあうこと(共助)であり,行政はこれらの取組みを支援する(公助)との基本認識を踏まえ,検討を進めた。
 報告では,各分科会における検討結果を踏まえた各種の対策を,「必要と考えられる取組一覧」として明示した。この中で,実施時期について,避難指示解除に向けた一定の判断がなされ,具体的な帰島時期を視野に入れ,帰島に向けた本格的準備活動を行う「準備期間中」,その前の段階である「準備期間前」,さらに「帰島後」の3段階に分けて整理をした。
b 帰島に関する意向調査
  三宅村は,三宅島帰島プログラム準備検討会の最終報告の説明会を平成16年4月から5月にかけて都庁,立川,南大沢等,計10か所で開催し,延べ780人の住民が参加した。
  その後,本報告を踏まえた上で,三宅村は,村民の「帰島に関する意向調査」を同年5月17日から6月10日まで実施し,平成16年4月1日現在の住民基本台帳登録世帯の83.5%からの回答を得た。調査の結果は,「火山ガスのリスクを受容しても帰島する」との意向が回答の約7割を占めるなど,村民が一刻も早い帰島を待ち望んでいる結果となった。
c 三宅島の火山活動に関する火山噴火予知連絡会統一見解
  平成16年6月30日,気象庁は三宅島の火山活動に関し,「三宅島の火山活動は,最近1年半以上大きな変化はなく,現在程度の火山ガスの放出は当分継続する可能性があると考えられますが,現段階で,火山活動が活発化する兆候はみられません。」との火山噴火予知連絡会統一見解を発表した。
d 帰島に関する基本方針
  三宅村は,上記の帰島に関する意向調査結果及び火山噴火予知連絡会統一見解等を踏まえ,平成16年7月20日に三宅村長が東京都知事と会談し,「村民の帰島の意向を踏まえ,安全対策等を講じた上で,平成17年2月に,避難指示を解除する」意向を伝えた。三宅村長は,防災担当大臣にも同趣旨の意向を伝え,その後,知事,大臣それぞれが三宅村の判断を尊重するとともに,三宅島への帰島に向けての支援に万全を期す旨のコメントを発表した。
 これらを踏まえ,三宅村は同日,「帰島に関する基本方針」を公表した。
 
○帰島に関する基本方針の概要(三宅村)
1.前 提
  三宅島の火山活動は,全体として最近1年半以上大きな変化はなく,現在程度の火山ガスの放出は当分継続する可能性があると考えられるが,現段階で,火山活動が活発化する兆候は見られない。(平成16年6月30日発表,火山噴火予知連絡会統一見解)
2.村民の状況
 [1] 意向調査では,火山ガスのリスクを受容しても帰島したいとの意向が回答の約7割
 [2] 村民は,ほぼ4年にわたる避難生活で精神的,経済的負担が限界にきている
3.基本的な考え方
  基本的な考え方は『火山ガスとの共生』
 [1] 帰島は,村民個々の自己責任に基づく判断
 [2] 村は,火山ガスの監視・観測,情報伝達,避難体制の整備,健康管理・医療管理の確保を実施
 [3] 危険な区域(火口周辺・高濃度地区等)は,立ち入り禁止,居住制限等を村条例で規定
 [4] 三宅島帰島プログラム準備検討会報告の着実な推進
4.避難指示の解除
  平成17年2月に災害対策基本法に基づく避難指示の解除
5.今後の取り組み
  方針決定後,避難指示解除までに帰島の準備をするため,村は,直ちに都庁内に「帰島対策本部」,三宅村に「現地対策本部」を設置        等

e 帰島対策関係省庁等連絡会議
  平成16年7月21日,政府は,三宅島噴火非常災害対策本部の第6回会議を開催し,前日に発表された三宅村の「帰島に関する基本方針」を受け,東京都,三宅村と協力して村民の方々が円滑に帰島できるよう支援を行う場として「三宅島帰島対策関係省庁等連絡会議」を設置した。同連絡会議において,「三宅島帰島プログラム準備検討会」最終報告を踏まえつつ,実際の帰島に向けた支援の連絡調整が実施された。

○帰島に向けた三宅村への主な支援策

1.村民の安全確保対策
 ○高感受性者世帯(呼吸器系疾患のある人,新生児・乳児,妊婦など)を対象として小型脱硫装置(火山ガスに含まれる二酸化硫黄を空気中から除去するもの)の整備に補助金を交付することとし,平成16年度補正予算に計上。
 ○三宅小学校,三宅中学校,三宅高校,みやけ保育園,及び中央診療所の各災害復旧工事にあわせて,脱硫装置の設置を補助。
2.島内の基盤整備対策
 ○村営住宅建替え等の補助単価を引き上げ,平成16年度に,既存村営住宅の復旧(150戸)と新規建設(60戸)を実施。
3.村民の生活再建対策
 ○平成16年度に,災害廃棄物処理事業として廃自動車(概ね3,500台)等の処理を補助。
 ○平成17年度税制改正により,被災代替家屋等にかかる固定資産税の特例措置を創設。
 
f 三宅村帰島計画等
  三宅村は,平成16年9月17日に帰島に関するスケジュール及び取組みの概要を取りまとめた「三宅村帰島計画」,住民が帰島準備や引越しをする際の手続きや受けられる支援について,想定問答形式で取りまとめた「帰島・生活再開の手引き(三宅村村民用帰島マニュアル)」を公表した。

○三宅村帰島計画,帰島マニュアルの概要

1.「三宅村帰島計画」
   [1] 帰島のスケジュール
      帰島に向けた村方針の決定から,島内での生活が再開されるまでを以下のとおり想定
    [避難指示解除前の準備]
  ○第一次帰島準備期(〜10月):帰島準備に向けた安全を確保する期間
  ○第二次帰島準備期(11月〜1月):避難指示解除に向けて生活の基本となる諸機能を確保する期間
    [避難指示解除後の対応]
  ○本格帰島期(2月〜4月;概ね3ヶ月間):大半の島民が帰島するまでに必要な期間
  ○生活再開期(5月〜7月):通常の生活が本格的に再開される期間
  [2] 帰島に向けた基本方針
     火山ガスに対する安全確保対策,集落の安全対策・インフラ整備等,生活再建対策の3つの基本方針を柱に実施
  ○火山ガスに対する安全確保対策
    火山ガスの監視・観測体制や火山ガス情報の伝達体制,村民の避難体制,健康管理,高感受性者への対応,高濃度地区対策等,火山ガスに対する安全確保対策を実施
  ○集落の安全対策・インフラ整備等
   砂防ダム・流路工等の整備等による居住地の安全確保,村営住宅の復旧・新設等による居住場所の確保,教育施設の復旧,公共施設の復旧,村道の復旧等による安全な交通網の確保,ライフラインの復旧等,今回の噴火災害により被災した基盤施設等の復旧事業を早急に実施していくことで,帰島後に安心して暮らせる住環境を整備
  ○生活再建対策
   帰島後に村民が安定した生活を再開するために,生活,福祉・教育・災害廃棄物,産業・雇用に関する各種資金の貸付や支援の実施
2.「帰島・生活再開の手引き(三宅村村民用帰島マニュアル)」
  住民が帰島準備や引越しをする際の手続きや受けられる支援について,想定問答形式でとりまとめた手引き

g 帰島手順説明会
  三宅村では,「帰島に関する基本方針」及び「三宅村帰島計画」に基づいて,帰島に係る引越手順等の説明会を平成16年11月20日から23日にかけて都内4か所で開催し,延べ799人の住民が参加した。説明会は,避難指示解除に係る引越手順を定めた「三宅村引越計画」のほか,帰島後できるだけ早期に「被災者生活再建支援金」を支給できるようにするための申請受付,避難指示解除後の都営住宅等の取扱いなどについての説明が行われ,いよいよ帰島に向けて,本格的な準備段階となった。


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