3−12 平成16年(2004年)新潟県中越地震



3−12 平成16年(2004年)新潟県中越地震

(1)災害の状況
 平成16年10月23日17時56分頃,新潟県中越地方の深さ約13kmでマグニチュード6.8の地震が発生し,川口町で震度7,小千谷市,山古志村(現長岡市),小国町(現長岡市)で震度6強,十日町市,堀之内町(現魚沼市),中里村(現十日町市),守門村(現魚沼市),川西町(現十日町市),越路町(現長岡市),刈羽村,長岡市,栃尾市,三島町(現長岡市),広神村(現魚沼市),入広瀬村(現魚沼市),で震度6弱,北中之島町(現長岡市),安塚町(現上越市),見附市,与板町,和島村,出雲崎町,小出町(現魚沼市),塩沢町,六日町(現南魚沼市),大和町(現南魚沼市),津南町,松代町(現十日町市),松之山町(現十日町市)で震度5強を観測したほか,東北地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。最大深度7を観測したのは阪神・淡路大震災以来であった。
 同日18時11分頃,新潟県中越の深さ約12kmでマグニチュード6.0の地震が発生し,小千谷市で震度6強,越路町(現長岡市),小国町(現長岡市)で震度6弱を観測したほか,東北地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。
 同日18時34分頃,新潟県中越の深さ約14kmでマグニチュード6.5の地震が発生し,川口町,十日町市,小国町(現長岡市)で震度6強,川西町(現十日町市),小千谷市,六日町(現南魚沼市),松代町(現十日町市),堀之内町(現魚沼市),広神村(現魚沼市),大和町(現南魚沼市),安塚町(現上越市),入広瀬村(現魚沼市),中里村(現十日町市)で震度6弱,守門村(現魚沼市),浦川原村(現上越市),三島町(現長岡市),出雲崎町,塩沢町,越路町(現長岡市),小出町(現魚沼市),高柳町,長岡市,和島村,西山町,上越市,牧村(現上越市),三和村(現上越市),与板町,湯之谷村(現魚沼市)で震度5強を観測したほか,東北地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。
 同日19時45分頃,新潟県中越の深さ約12kmでマグニチュード5.7の地震が発生し,小千谷市で震度6弱,小国町(現長岡市)で震度5強を観測したほか,東北地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。
 さらに10月27日10時40分頃には,新潟県中越の深さ約12kmでマグニチュード6.1の地震が発生し,広神村(現魚沼市),守門村(現魚沼市),入広瀬村(現魚沼市)で震度6弱,堀之内町(現魚沼市),六日町(現南魚沼市),湯之谷村(現魚沼市),長岡市,小千谷市,栃尾市,三島町(現長岡市),小出町(現魚沼市),越路町(現長岡市),小国町(現長岡市)で震度5強を観測したほか,東北地方から中部地方にかけて震度1以上を記録した。
 この地震により,死者46名,負傷者4,801名,住家全壊2,827棟,住家半壊12,746棟,住家一部破損101,509棟の被害が発生したほか,合計で64,894人に避難指示・勧告が出され,最大で103,178人が避難した。
 土砂災害については,土石流4件,地すべりが131件,がけ崩れ90件発生した。
 ライフライン関係においては,東北・東京・中部電力管内で延べ約309,000戸が停電となったほか,都市ガスについては新潟県内の約56,000戸で供給停止し,上水道については新潟県内の129,750戸が断水した。また,電気通信関係では,新潟県内の約4,500回線の電話が不通となったほか,携帯電話基地局189局が停波した。
 道路については,関越自動車道や国道17号,県管理道路等において多数の段差や土砂崩落等による通行止めが相次いだほか,鉄道についても上越新幹線及び在来線各線において,12月28日に運転が再開されるまで,運転中止が長期間発生した。上越新幹線においては,浦佐駅と長岡駅間で列車が脱線した。
 公共土木施設では,河川413か所,砂防施設等71か所,道路(橋梁を含む)3,091か所,下水道290か所,公園39か所で被害が発生した(福島県,群馬県分を含む)。
 農林水産業関係では,農地3,985か所,農業用施設10,963か所,林地荒廃等227か所,林業用施設508か所,水産関係施設6,419か所に被害が発生した。
 文教施設等では,国立学校施設4校,公立学校施設336校,私立学校施設84校,社会教育・体育,文化施設等139施設,文化財等20件,研究施設等2施設に被害が発生した。
 社会福祉施設等では,老人福祉施設63か所,児童福祉施設197か所,障害者施設46か所,その他福祉施設7か所に被害が発生した。
 医療施設関係では23施設に被害が発生した。

(2)国等の対応状況
 地震発生後ただちに,各省庁の防災担当者が官邸危機管理センターに参集し,自衛隊,警察,消防,海上保安庁,国土交通省などのヘリコプターからの映像や消防の固定カメラ映像を含めて,迅速な情報収集を行うとともに,内閣府の地震防災情報システム(DIS)を稼働させて,建物被害や人的被害などを推計し,概括的な被害規模の把握に努めた。また,村田防災担当大臣のほか,官邸危機管理センターに参集した関係省庁の局長級職員などによる緊急参集チームにより,収集された情報を集約・確認することにより,政府として被害の実態把握と対応方針の決定を早期に行うことができた。
 10月23日に関係8府省の担当者からなる現地合同情報先遣チームを新潟県へ派遣,同日「平成16年(2004年)新潟県中越を震源とする地震に対する現地連絡調整室」を新潟県庁内に設置し,現地での連絡調整及び支援の任に当たった。
 10月24日1時30分より,内閣府において関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は引き続き迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,緊密な連携を図ること,[2]これまでに生じた被害に対する応急対策等適切な対応をすること。[3]事態の推移に応じ必要があれば,今後においても災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと等を確認した。
 10月24日,災害対策基本法に基づく非常災害対策本部(平成16年(2004年)新潟県中越地震非常災害対策本部,本部長:村田防災担当大臣)を設置し,同日9時30分に第1回本部会議を開催,村田防災担当大臣を団長とする政府調査団を新潟県に派遣すること,及び下記の点からなる災害応急対策に関する基本方針を決定し,これに沿って対策を実施していくこととした。
[1]被災者の救出・救助活動に全力を尽くすこと。
[2]緊急消防援助隊,警察広域緊急援助隊,自衛隊の災害派遣による被災地の広域応援を増援するなど,被害の状況に応じて万全の体制を期すること。
[3]県や市町村との連絡調整及び情報収集を密接に行い,被害情報の収集に全力を挙げること。
[4]関係地方公共団体とも連携し,応急対策・復旧等につき,政府一体となった対応を行うこと。
 これを受け,10月24日,村田防災担当大臣を団長とする政府調査団を新潟県へ派遣した。さらに,10月26日には小泉内閣総理大臣による現地視察を実施した。
 10月24日12時45分には第2回本部会議を開催,被災地への物資等の供給等に係る方針を決定した。10月25日17時30分には第3回本部会議を開催,海外からの支援受入れに係る方針を決定した。本部会議は11月19日の第21回本部会議まで開催された。うち,10月30日の第8回本部会議において,12の課題別プロジェクトチームの設置を決定,避難者の住まいの確保について協議・決定された後,課題別プロジェクトチームによる検討が実施された。
 10月25日には「現地連絡調整室」を「現地支援対策室」に格上げし,人員を倍増,10月27日〜11月6日及び11月29日〜12月3日には林田内閣府副大臣を,11月6日〜12日,11月15日〜19日及び11月22日〜26日には江渡内閣府政務官を派遣し,12月3日閉鎖されるまで現地支援を実施した。現地支援対策室には最大で12府省の41名が勤務した。また,同室に機動班を設置,新潟県と調整を行い対応の手薄な市町村に派遣したほか,新潟県知事の要請に応え,今後の応急,復旧・復興対策のハード・ソフト両面において,知事のアドバイザーとなる阪神淡路大震災の対策を経験したスタッフを派遣した。このほか,新潟県小出町居住の親子3人の救出に関し,新潟県知事からの依頼を受け,国土交通省,警察庁,防衛庁,消防庁から地すべり,砂防の専門家等を派遣するなど専門家の派遣も実施した。
 また,10月23日,新潟県が小千谷市,長岡市,十日町市,栃尾市,六日町,中里村(現十日町市),安塚町,見附市,柏崎市,中之島町(現長岡市),越路町(現長岡市),三島町(現長岡市),与板町,和島村,出雲崎町,山古志村(現長岡市),川口町,堀之内町,小出町,湯之谷村,広神村,塩沢町,大和町,川西町(現十日町市),小国町(現長岡市),西山町,守門村,津南町,刈羽村,入広瀬村,松代町(現十日町市),松之山町(現十日町市),高柳町,分水町,栄町,加茂市,寺泊町,燕市,巻町,月潟村,中之口村,弥彦村,吉田町,三条市,柿崎町,吉川町,頸城村,浦川原村,大島村,上越市,三和村,牧村,清里村及び板倉町に災害救助法を適用した。これに基づき新潟県は仮設住宅3,460戸を建設した。さらに,厚生労働省は災害救助法の住宅の応急修理制度の速やかな適用が可能となるよう,「住宅の応急修理の円滑な実施について」の通知をし,対象者の範囲,応急修理の範囲及び手続きについての弾力的な取扱をすることとした。さらに住宅の応急修理費用の限度額を,被災地が豪雪地帯であること等の地域事情に鑑み,60万円に引き上げた。被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度については,適用日を10月23日として新潟県全域に適用した。
 また,11月12日閣議決定・11月17日公布・施行により特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置法に基づき,「平成十六年新潟県中越地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」により新潟県中越地震による災害を特定非常災害として指定し,行政上の権利利益の満了日の延長等権利利益の満3日の延長,期限内に履行されなかった行政上の義務の履行の免責,法人の破産手続開始の決定の特例に関する措置を適用した。
 さらに,平成17年4月12日に閣議決定,同月15日に公布・施行された同政令の一部を改正する政令により,長岡市,柏崎市,小千谷市,十日町市,見附市,栃尾市,魚沼市,北魚沼郡川口町,刈羽郡刈羽村及び同郡西山町の10地区に係る民事調停法による調停の申立ての手数料を免除する措置を講じた。
 また,平成17年4月12日に閣議決定,同月15日に公布・施行された「罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二の災害及び同条の規定を適用する地区を定める政令」により,罹災都市借地借家臨時処理法第25条の2の災害として平成16年新潟県中越地震による災害を,同条の規定を適用する地区として新潟県のうち長岡市,柏崎市,小千谷市,十日町市,見附市,栃尾市,魚沼市,北魚沼郡川口町,刈羽郡刈羽村及び同郡西山町の計10地区をそれぞれ指定して,この地震による災害によってこれらの10地区の借家又は借地上の建物が滅失した場合の借地・借家関係に同法を適用することとし,滅失した建物の借主等の権利の保護を図った。
 この災害について,11月26日閣議決定・12月1日公布・施行の「平成十六年新潟県中越地震による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」により激甚災害として指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特例措置等を適用するとともに新潟県長岡市,小千谷市,十日町市,三島郡越路町,古志郡山古志村,北魚沼郡川口町及び中魚沼郡川西町の区域に係る激甚災害については,中小企業信用保険法による災害関係保証の特例等を適用した。
 なお,この災害と台風第23号については,甚大な被害が発生している被災地方公共団体等が安心して迅速に災害復旧事業等に取り組めるようにするため,特例的な措置として被災地方公共団体からの被害状況の報告を待つことなく,関係各省庁の職員を現地に派遣する等により,被害状況を取りまとめ,激甚災害指定の可否の判断を行った。
 11月19日には,関係行政機関相互の密接な連携と協力の下,災害復旧及び災害からの復興を支援するため,林田内閣府副大臣を議長とする「新潟県中越地震復旧・復興支援会議」を設置した。新潟県からは,多くの家屋や公共施設が被害を受けるとともに多数の被災者が避難するなどの被害の甚大さを踏まえ,国庫補助率の嵩上げ等の財政的支援に関する52項目の要望がなされ,本会議において,最大限実現するよう関係省庁に指示が出された。
 その結果,阪神・淡路大震災の際に講じた特例措置とほぼ同様の措置を講ずるとともに,中山間地という特殊性を考慮して,阪神・淡路大震災の際には講じなかった措置についても必要なものについては措置することとした。これにより要望項目の大半が実現され,そのために必要な経費,約3,000億円が平成16年度補正予算に盛り込まれた。また,運用益で被災者に対しきめ細かい支援を行う3,000億円規模の復興基金の造成については,必要な地方債の許可とその利子支払額に対する交付税措置を行うこととされた。
 さらに,全村避難を余儀なくされ,多くの住民が早期帰村を望む山古志村への復旧・復興支援については,内閣府に「山古志村復旧・復興支援関係省庁連絡会議」を設け,この会議において早期の帰村に向けた復旧・復興支援策について検討し,平成17年3月に山古志村復旧・復興支援プログラムをとりまとめた。
 内閣官房は,10月23日18時,官邸連絡室を設置した。
 内閣府は,10月23日18時,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡を行った。
 総合科学技術会議が11月4日に指定した「平成16年(2004年)新潟県中越地震に関する緊急調査研究」により,関係府省庁等が連携して,「地震災害調査」,「地震時の土砂災害研究」,「地下構造調査等による震源断層・強震動生成機構の解明」等の調査研究を実施した。
 警察庁においては,10月23日18時,「災害警備本部」を,10月24日7時50分には「非常災害警備本部」を設置し,また,関東管区警察局においては,「災害警備本部」を設置して,関連情報の収集,関係機関との連絡調整,警察広域緊急援助隊や警察用航空機の派遣調整等に当たった。さらに,新潟県公安委員会からの援助要求を受けて,33都府県警察の警察広域緊急援助隊(延べ1万3,897人)を始め,災害救助犬要員(延べ39人・26頭),警察用航空機(139機)等を同県内に派遣して,住民の避難誘導,救出救助活動,行方不明者の捜索,交通規制等の災害警備活動を実施した。また,機動警察通信隊は発災直後から衛星回線を速やかに構築し,特に,交通・通信の途絶した山古志村地区において,警察無線・衛星携帯電話等で通信手段を早期に確保した。その他,避難生活が長引く中で,新潟県警察及び特別派遣された女性警察官等からなる「ゆきつばき隊」(延べ3,550人)を編成し,避難住民の要望,相談等の聴取や震災に乗じた犯罪に係る防犯指導と広報活動を行ったほか,同様に特別派遣された自動車警ら隊員等からなる「毘沙門隊」(延べ3,682人)を編成し,被災地域における警戒警ら活動等に当たった。
 防衛庁は,10月23日18時,災害対策室を設置,同日19時には災害対策会議を開催,新潟県知事からの災害派遣要請を受け,10月23日から12月21日までに人員約125,000名,車両約38,000両,航空機約800機により,孤立者の救出活動,避難者の輸送,給水・給食・入浴・医療支援,避難者用の天幕の設営・維持,流木・土砂の除去及び倒壊家屋の撤去等を実施した。
 消防庁は,10月23日17時56分,災害対策本部を設置し,関係機関との連絡調整に当たるとともに,緊急消防援助隊の新潟県への出動を要請した。同隊は累計 480隊 2,121名,防災ヘリ20機により救急搬送活動,物資搬送活動,孤立住民等の救助活動,情報収集活動を実施した。
 海上保安庁では,10月23日18時,災害対策本部を設置,巡視船艇・航空機による被害状況調査及び沿岸状況調査を実施したほか,孤立者救助,人員等の空輸を行った。
 総務省は,10月23日18時30分に災害対策本部を設置,24日10時には非常災害対策本部を設置した。各地方公共団体に対し,生活必需物資の提供及び土木技術職員等専門家の派遣や災害対策担当者等の人的支援を要請するとともに,住民基本台帳事務の取扱いや被災納税者に対する地方税に係る期限の延長措置の適切な運営について各都道府県知事宛に通知した。また,11月19日以降,長岡市,十日町市,小千谷市及び川口町において,特別総合行政相談所を開設,栃尾市及び柏崎市において,特別行政相談所を開設した。また,新潟県並びに新潟県の長岡市,柏崎市,小千谷市,十日町市,見附市,栃尾市,魚沼市,南魚沼市,中之島町,越路町,三島町,与板町,和島村,出雲崎町,山古志村,川口町,塩沢町,川西町,津南町,中里村及び小国町に対し,11月11日,11月末に定例交付すべき普通交付税の一部を繰上げて交付した。
 金融庁は,10月24日,新潟県銀行協会等7団体等に対し地震により災害救助法が適用された市町村の被災者に対し,状況に応じ「災害関係の融資に関する措置」,「預金の払戻及び中途解約に関する措置」,「手形交換,休日営業等に関する措置」等金融上の措置を適切に講じることを要請した。
 外務省は,10月23日18時30分,連絡体制を整備し,外国政府等からの援助の申し出等に対する対応を実施した。義援金・資金拠出については,米国(5万ドル 10/25,10万ドル(物資輸送支援)),韓国(10万ドル),ドイツ(5万ドル(仮設住宅用)),ルクセンブルク(5万ユーロ),チェコ(5万ドル),南部アフリカ開発共同体(SADC,10万円)等からの申入れを受け入れた。物資については,米国(ビニールシート1万枚),モンゴル(毛布520枚)等から支援を受け入れた。
 財務省は,10月23日18時30分,省内の情報収集体制を整備し,提供可能な所管国有財産の情報提供等を実施した。また,11月4日,関税に関する法律に基づく申請等に関する期限の延長等を行うため,中越地震について特定災害に指定し,新潟県の一部の地域を相当な損害を受けた地域として指定,さらに,新潟県の一部の地域について,国税に関する法律に基づく申告等に関する期限の延長を実施した。
 文部科学省は,10月23日18時35分,災害情報連絡室を設置同日19時30分災害応急対策本部を設置,10月24日9時に文部科学省非常災害対策本部を設置し,全国の国立大学病院に対して医療支援を要請した。また,建築の専門家等の派遣による学校施設等の安全点検や児童生徒の心のケアの実施等学校再開に向けた取り組み,児童生徒への支援を行った。また,10月24日地震調査研究推進本部の地震調査委員会が臨時会を開催。今回の地震について分析と評価を実施した。
 厚生労働省は,10月23日19時05分,災害対策本部を設置し,国立病院機構災害医療センター,国立国際医療センターほか,各地の医療センター,病院より医療班を現地に派遣する等により医療支援活動を実施,また,被災者のPTSD対策を含むこころのケア対策を,専門家らを現地に派遣すること等により実施した。また,被災者に対する健康管理体制を支援するため,専門官を現地に派遣するとともに,県外の保健師派遣について調整した。高齢者,障害者等の要援護者への緊急的対応について,関係各機関に要請及び通知を行った。労働・雇用関係においては「新潟県中越地震特別労働相談窓口」を設置する等の対応を実施,労働保険,社会保険関係においても弾力的運用を指示した。
 農林水産省は,10月23日18時,省内及び関係機関の連絡体制を整備し,10月24日11時には災害対策本部を設置した。10月25日に新潟県中越地震食料供給対策チームを発足させ,災害対策用乾パン・乾燥米飯を供給したほか,食料の供給について所管団体との調整を実施した。また,ダム,ため池について点検調査,専門家の派遣による技術的指導及び助言や技術職員の応援派遣を実施した。さらに,被害農林漁業者等に対する経営資金等の融通及び既貸付金の償還猶予等を図るよう関係金融機関に依頼した。
 経済産業省は,10月23日,非常災害対策本部を設置し,緊急援助物資の輸送等について,大手流通各社に対し連絡調整を指示。更に緊急の食料品追加供給を要請したほか,燃料油,LPガス,毛布,日用品等の調達につき関係業界に協力を要請した。また自動車内にて過ごす被災者が多いため需要増が見込まれたるガソリンについて,被災地への移送が円滑に実施されるよう調整を実施した。
 資源エネルギー庁は,電気料金及びガス料金の支払期限の延長等の災害特別措置を認可した。
 中小企業庁は,10月25日,新潟県の政府系中小企業三機関,信用保証協会,主要商工会議所,商工会連合会及び関東経済産業局に対し,災害に係る特別相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融機関に災害復旧貸付の適用,政府系中小企業金融機関及び信用保証協会に既往債務の条件緩和等を指示した。また,11月19日,新潟県48市町村を,信用保証協会のセーフティネット保証(4号)の対象として指定(官報告示)した。
 国土交通省は,10月23日17時56分に非常体制をとり,10月24日7時50分に非常災害対策本部を設置,ヘリコプターの活用等による情報収集を実施,現地に照明車,造水車,衛星通信車,災害対策本部車,排水ポンプ車を現地に派遣した。河川局災害査定官をはじめ被害状況把握のため担当官及び専門家を現地に派遣,災害状況の緊急調査,長岡市妙見地先の土砂崩落により埋没した自動車の救出作業における安全確保についての技術指導,芋川における河道閉塞についての緊急調査等を実施した。また,災害復旧業務の応援のための人的支援も実施,住宅・宅地関係においては被災建築物応急危険度判定業務,被災宅地危険度判定業務の支援も実施したほか,迅速に被災宅地の復旧に資するため,被災宅地の被害状況の詳細把握とその復旧方法を調査するための被災宅地復旧支援隊を延べ1,000人派遣し,その調査資料を基に被災宅地復旧技術検討委員会を設置して被災宅地復旧技術マニュアルを作成し公表した。芋川の河道閉塞対策については,新潟県からの要請を受け一部地区について緊急的に直轄砂防事業にて実施した。大規模に被災した国道291号については,新潟県からの要請を受け,国の直轄権限代行により直轄事業として災害復旧事業を実施した。さらに,「下水道地震対策技術検討委員会」を設置し,「管路施設の本復旧にあたっての技術的緊急提言」をとりまとめ,新潟県に通知した。
 国土地理院は,10月23日18時30分災害対策本部を設置,空中写真撮影や現地緊急測量調査を実施するとともに,災害対策用の地図等を作成した。
 気象庁は,10月23日18時非常体制をとり,地震機動観測班による調査を実施,地震について「平成16年(2004年)新潟県中越地震」と命名したほか,暫定的に,震度5以上の揺れを観測した地域に対して大雨及び洪水の注意報・警報基準を引き下げて運用した。
 環境省は,下水管の破損への緊急対応として,近隣市町村やし尿処理業界に応援を要請し,約100台のバキュームカーを確保した。
 また,新潟県において,3月1日に「震災復興ビジョン策定懇談会」が復興に向けての基本的な方針・考え方をとりまとめ,「復興ビジョン」を公表した。現在,新潟県において,インフラ,産業,福祉,文化など総合的な復興計画を策定中である。
COLUMN 新潟県中越地震に活かされた阪神・淡路大震災の教訓と新たな課題
 新潟県中越地震への対応では,阪神・淡路大震災の教訓,その後の防災体制の強化が活かされた。政府では地震発生直後から,村田防災担当大臣をはじめ,関係府省の担当局長他緊急参集要員が総理官邸の危機管理センターに駆けつけた。大規模災害の発生から30分以内での緊急参集チームの参集体制や危機管理センターは,阪神・淡路大震災時の初動の遅れへの反省から,国の危機管理体制の強化の一環として整備されてきたものである。
 迅速な情報の収集,伝達に努める一方,地震発生が夕暮れ時であり,すぐに暗闇が被災地を包む中,より正確な被害・被災地ニーズの情報を把握するため,政府は関係8府省の担当者からなる現地合同情報先遣チームを直ちに派遣した。
 さらに,村田防災担当大臣を長とする非常災害対策本部を翌朝に設置し,ほぼ連日関係府省の本部員を集めた対策会議を開催し(11月19日までで計21回開催),現地に派遣した林田内閣府副大臣や江渡内閣府政務官ら現地支援対策室とテレビ会議を行うなど随時連絡を取りつつ,被災地への効果的な支援策を検討し,実施に移してきた。
 また,阪神・淡路大震災以降,緊急対応時に被災地方公共団体を広域的に支援するための体制強化が進められ,警察庁,消防庁において,それぞれ警察広域緊急援助隊,緊急消防援助隊といった救急救助等の応急対応を支援する広域的な応援部隊の体制を構築した。新潟県中越地震では,これら広域応援部隊や自衛隊,海上保安庁の迅速な派遣により,応急活動への一体的,効果的な支援が展開された。

新潟県中越地震における応急対応部隊の活動状況

 広域の応援体制の整備は国のみならず,地方公共団体間においても,阪神・淡路大震災以降進められており,例えば,都道府県間の広域防災応援協定については,既存協定の見直しも含め,全国で合計22の協定が締結され,全国全てのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがなされたほか,全国知事会で全都道府県による応援協定が締結された。また,市町村でも,2,305団体が広域防災応援協定を有している(平成16年4月1日現在)。今回の地震災害では,こうした事前の広域防災応援協定によるものも含め,延べ約4万2千名の職員派遣や物資支援がなされるなど,多くの地方公共団体から様々な形で支援がなされた。

新潟中越地震における地方公共団体からの支援

 しかしながら,一方で,余震が続く中,避難先の車中において地震のストレスに起因する疾患による死亡事例が見られたように,避難生活の環境改善が大きな課題となった。このような具体的な12の課題について,政府では非常災害対策本部の下に個別にプロジェクトチームを設置し,関係府省が連携したきめの細かい対応に努めてきた。例えば,避難生活の環境改善については,心のケアの専門家派遣や警察婦警による「ゆきつばき隊」の避難所巡回,周辺の温泉地等への避難支援,自衛隊による家族用テントの提供等多様な対策を講じてきた。

新潟中越地震非常災害対策本部プロジェクトチーム(その1)

新潟中越地震非常災害対策本部プロジェクトチーム(その2)

 今回の地震は,阪神・淡路大震災と異なり,中山間地域,豪雪地帯を襲った地震であったことから,被害状況も異なる様相を呈し,災害特性に応じた対策が求められた。被災した中山間地域では,生活道路が損壊し,集落が孤立する状況が生じた。政府においては,今回の教訓を踏まえ,孤立時の情報通信手段の確保方策や孤立集落に対する救助,避難のあり方等,中山間地域の地震災害に特有の課題に対する防災対策の検討を進めている。
 

COLUMN 芋川における河道閉塞の発生と対策
 山古志村(現長岡市)を中心とした地域では,地震により多くの箇所で崩壊や地すべりが発生した。芋川流域では,5カ所において地すべり等により大規模な河道閉塞が発生し,東竹沢地区などでは人家が水没するなどの被害が生じた。
 国土交通省及び新潟県は発災後ただちに,本省担当官および国土技術政策総合研究所や独立行政法人土木研究所の砂防専門家等を派遣し,被災状況の把握を行った。また,閉塞箇所の決壊等による二次災害の発生に備え,土石流センサーや監視カメラを設置し,現地の警戒にあたった。
 11月5日には,国土交通省は新潟県の要請を受け,規模が大きく危険性が高い寺野地区(最大湛水量約40万m3)および東竹沢地区(最大湛水量約260万m3)の河道閉塞対策を直轄砂防災害関連緊急事業として実施することを決定した。
 緊急対策にあたっては道路が寸断されたため,相当期間にわたり資機材の輸送がヘリコプターに限られる中,自衛隊の協力のもと,水没家屋の解消と河道閉塞箇所の決壊防止のため,緊急排水路と排水ポンプの設置を行い水位低下を図った。また,融雪出水に対して安全を確保するための仮排水路を12月28日までに設置した。さらに,学識経験者,専門家および行政関係者からなる「芋川河道閉塞対策検討委員会」において検討した恒久対策案を基に,住民等の意向を踏まえつつ土砂流出対策を実施中である。

 

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内閣府政策統括官(防災担当)

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