2−1 地震防災戦略



2 迫りくる巨大地震と地震防災戦略

  大災害への 備えの中でも突発的に発生する地震への備えは重要であり,特に喫緊の課題は,迫りくるマグニチュード8クラスの海溝型の巨大地震や,ひとたび起これば甚大かつ広域の被害が想定されるマグニチュード7クラスの首都直下地震等大都市を襲う直下の地震への備えである。
(海溝型巨大地震)
[1]東海地震は,1854年の安政東海地震から150年間起きておらず,いつ発生してもおかしくないとされる。
[2]東南海・南海地震は,過去100〜150年の間隔で発生しており,今世紀前半にも発生するおそれがあるとされる。
[3]千葉県東方沖から三陸沖にかけての日本海溝,三陸沖から十勝沖を経て択捉島沖にかけての千島海溝周辺では,約40年間隔で発生している宮城県沖地震をはじめとしてマグニチュード7や8クラスの巨大地震発生の切迫性が指摘されている。

東海地震,東南海,南海地震の切迫性

2−1 地震防災戦略

(1)地震防災戦略の策定
 近年,国の中央防災会議において,精力的に地震防災対策の充実強化に取り組んでいるが,本年3月30日の同会議において,大規模地震に関する人的被害,経済被害の軽減について達成時期を含めた具体的目標(減災目標)を定め,これを達成するために重点的かつ戦略的に取り組むべき事項をとりまとめた地震防災戦略が策定された。
 地震防災戦略は,昨年の防災白書において打ち出した,成果重視の行政運営の考え方を防災分野により明確かつ積極的に取り入れる「新たな防災行政の視点」から,特に喫緊の課題である迫りくる巨大地震対策において取り組んだ最初の試みである。

地震防災戦略

 今回策定した地震防災戦略は,中央防災会議においてすでに被害想定を公表し,対策に関する大綱を定めている東海地震及び東南海・南海地震についてである。
 この中で,東海地震,東南海・南海地震とも,「今後10年で死者数及び経済被害額を半減させる」という「減災目標」を掲げ,それを達成するための「具体目標」として,住宅の耐震化率90%を目指すことや,全ての沿岸市町村で津波ハザードマップ策定を目指すことなどを定めた。

東海地震,東南海,南海地震の地震防災戦略


(2)東海地震,東南海・南海地震の地震防災戦略の推進
 このような減災目標は,国だけでなく,地方公共団体,関係機関,住民等の社会全体で共有する目標となるものである。その達成に向けて,各主体に対して積極的に働きかけを行い,対策を着実に推進する必要がある。
 このため,国は,関係地方公共団体に対して,地震防災戦略を踏まえて「地域目標」を策定することを要請した。また,進捗状況について3年ごとにフォローアップすることとしている。
 また,「具体目標」は,例えば死者数を半減するという定量的な「減災目標」を達成するために定めるものであるため,各事項毎に達成すべき数値目標を定めている。しかしながら,例えば,次代を担う子供たちが学ぶ場所であるだけでなく,災害時には地域の応急避難所にもなる学校施設や,入院患者など災害時要援護者が収容され,災害時には負傷者の治療等に従事する病院施設等公共施設の耐震化などの主要な項目について,その目標が定性的な表現にとどまっているものがある。これらの項目については,今後数値目標の設定に努め,新たな知見,地域の実情,対策の達成状況にも応じて,地震防災戦略を不断に見直すこととしている。

COLUMN  地域の防災拠点となる学校施設の耐震化
 阪神・淡路大震災をはじめ,大規模な地震が発生するたびに,学校施設が大きな被害を受けている。学校施設は,災害発生時に児童生徒等の安全を確保するとともに,地域住民の応急避難場所としての役割も求められるため,その耐震性は地震防災対策上特に重要である。
 文部科学省の調査では,全国の公立小中学校施設のうち,建築後20年以上を経過した建物が全体の約73%を占めていることに加え,木造以外の建物約13万棟のうち,耐震性が確認されている建は約6万5千棟であり,その割合は約49%にとどまっているなどから,小中学校等の学校施設の耐震化の推進は喫緊の課題である。

地域の防災拠点となる学校施設の耐震化
 

(3)さらなる地震防災戦略の展開
 国においては,以下に述べる首都直下地震等の大規模地震についても,順次地震防災戦略を策定することとしている。
 また,新潟県中越地震や福岡県西方沖を震源とする地震のように,地震は全国どこでも起こるおそれがあることから,地震防災戦略が対象とする大規模地震以外の地震についても,地方公共団体は,地域特性を踏まえた被害想定を実施し,それに基づく減災目標を策定し,効果的かつ効率的な地震対策を推進する必要がある。
 

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