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7−2 阪神・淡路大震災の経験と対応

 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,以下のとおり災害対策基本法をはじめとした各種法令の改正や制定,整備や防災基本計画の大幅な修正,各種情報システムの整備等,様々な分野における防災対策とともに,被災者生活再建支援の仕組みやボランティアの受入体制等の充実・強化が図られた。
(1)災害対策の基本的な法令・制度・体制の見直し
a 災害対策基本法の改正 
    平成7年6月及び12月の2回にわたり大幅な改正が行われた。具体的には,政府の災害対策本部に関連して,内閣総理大臣が本部長となる「緊急災害対策本部」の設置要件の緩和や現地災害対策本部の法定化などの政府の災害対策本部の充実・強化,市町村長による都道府県知事に対する自衛隊の災害派遣要請の法定化などの地方公共団体の防災対策の強化,一定区域全域の道路に対し包括的に一般車両の通行を禁止することができるようにするなどの交通規制の強化,さらには自主防災組織やボランティアによる防災活動の環境整備や高齢者,障害者等への配慮事項の追加などに関する改正がなされた。
b 防災基本計画,地域防災計画の見直し
    我が国の災害対策の根幹となる防災分野の最上位計画である防災基本計画については,震災後,まず,平成7年7月,自然災害に関して,災害の種類に応じて「震災対策編」「風水害対策編」「火山災害対策編」などの編構成とし,対策が容易に参照できるようにするなど全面修正した。
    また,地域における防災の総合計画である地域防災計画についても,震災を契機に多くの地方公共団体で見直しが進められており,すでに全都道府県において,防災基本計画の全面修正を踏まえた,修正が行われた。また,市町村においては,平成16年4月1日現在で2,390団体(76.5%)が見直しを完了している。
(2)緊急対応の充実
a 初動体制・情報システムの整備 
    阪神・淡路大震災後,初動の遅れがあったという教訓を踏まえ,平成7年2月には大規模地震等が発生した場合,関係省庁の局長等の幹部は緊急に総理大臣官邸に参集し,緊急参集チーム会議を開催して,情報の集約を行うこととし,平成8年には,内閣情報集約センターを設立して災害時における情報収集の24時間体制を整えた。
    また,平成14年4月総理大臣新官邸の完成に伴い,官邸に求められる危機管理機能を十分に発揮するため,危機管理のための機器等を設置した危機管理センターを設置した。
被害情報を早期に収集・集約するための整備については,指定行政機関・指定公共機関等を結んでいる中央防災無線網の充実・強化を図ったほか,災害対策実働組織をもつ警察庁,防衛庁,消防庁,国土交通省,海上保安庁のヘリコプターから送られてくる被災地の映像や,地震発生直後に被害のおおまかな規模を把握する地震被害早期評価システム(EES)による被害推計などにより被害情報を把握・分析できるよう整備が図られた。
    さらに,防災関連施設等のデータベースと,実際の被害情報や応急対策の状況等について関係省庁から提供される情報を集約・整理し,共有することにより各種応急対応活動を支援する「応急活動支援システム(EMS)」が平成11年度から稼働している。
b 消火・救出活動に係る連携体制の強化
    地震発生直後から各地域において同時多発的に火災が発生したため,兵庫県からの要請に応じ,消防庁は関係都道府県知事を経由して兵庫県以外の消防本部に出動を要請した。この結果,1月17日13時40分に大阪市消防局10隊50人が長田区に到着したのを皮切りに,以降24時までに陸上部隊170隊約900人が到着,1月25日まで2,000名以上の応援体制を維持した。
    また,倒壊した家屋等の下に閉じ込められた人々の捜索・救助については,消防,警察,自衛隊が連携して取り組んだ。
    こうした経験を踏まえ,消防庁では,大規模災害時に対応するため,全国の消防機関相互による迅速な援助体制として,平成7年に緊急消防援助隊を発足させるとともに,大規模及び特殊災害における全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化等を目的として消防組織法を改正するなどの措置をとった。さらに,ホースなど消防用資機材の統一規格化や消防・救急無線の全国共通波の増波にも取り組んでいる。
    また,災害対策基本法や自衛隊法が改正され,自衛隊への派遣要請に関する市町村の権限の強化などが図られた。
c 災害医療  
    発災直後の多数の負傷者の発生,被災地域内の医療機関の機能低下等に対応するため,厚生省(当時)は大規模避難所を中心に,最大で161箇所の医師・看護師が常駐する救護所・避難所救護センターを設置したほか,文部省(当時)から周辺大学医学部付属病院の医師等,防衛庁から医官等が派遣された。また,不安定な精神状態にある被災者に対して神戸市等の10保健所においてメンタルケアを実施した。
   こうした取組みを踏まえ,厚生省(当時)は平成8年「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会報告書」を取りまとめ,災害時における応援協定の締結,広域災害・救急医療情報システムの整備,災害拠点病院の整備,災害時における消防機関との連携などを提言している。また,災害発生時の緊急医療チームの派遣体制の整備についても,全国的な災害医療ネットワークと併せて検討を進めている。
(3)被災者生活再建支援対策の充実
a 避難所対策 
    発災当日から多くの被災者が小中高等学校,役所,公園等の公共施設に避難し,これらの避難所はピーク時兵庫県内で1,153箇所,約31万7千人にものぼり,平成7年8月20日までの半年以上にわたって災害救助法上の避難所が続いた。
    避難所運営は法定受託事務として市町村が実施しているが,厚生労働省において「大規模災害救助研究会」を設置してそのあり方を検討し,避難所の防災拠点化・情報拠点化,避難所確保のための事前の施設所有者との協議,避難者による自主的な運営を進めるための方策等について指摘した。
b 被災者生活再建支援制度の創設
    阪神・淡路大震災で死亡した遺族に対して災害弔慰金(平成11年度末で5,881件が支給済み)が,重度の障害を受けた者へ災害傷害見舞金が支給されたほか,被災者を対象に市町を通じて災害援護資金の貸付が行われ,平成7年10月末の受付終了までに58,124件の貸付が実施された。また,国税の減免措置について,所得税の雑損控除の特例,震災損失の繰戻しによる法人税額の還付や相続税・贈与税の特例措置等を講じたほか,申告・納付等の期限の延長,納税の猶予等を行ったほか,地方税についても災害減免通達を基準とした減免措置など,国税に準ずる措置が講じられた。
    しかし,住宅が全壊するなど,生活基盤に著しい被害を受けた被災者の中には,経済的理由等により,従来の低利融資や税の減免等の措置だけでは生活の再建が困難な者が存在することから,平成7年9月,全国知事会は「地震等災害による被災者の自立を支援する災害相互支援基金の創設に関する決議」を行った。
    その後,関係機関等により検討が進められ,最終的に,当時の自民,さきがけ,民主,公明,自由,社民の6党共同提案により「被災者生活再建支援法」が提出され,平成10年5月に成立した。
    同法は,被災地方公共団体のみでは対応困難な一定規模以上の災害について,全国の都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して,年収500万円以下等の要件を満たす被災世帯に対し,家財道具購入等に必要な経費に充てるため最大100万円の支援金を支給し,国がその費用の1/2を補助することを規定した。同法は,有珠山や三宅島噴火災害,東海地方豪雨災害さらには平成16年の一連の豪雨・台風災害や新潟県中越地震などに適用されている。
    被災者生活再建支援法は,平成11年度以降において,都道府県の被災者生活再建支援基金に対する資金の拠出があった日として内閣総理大臣が告示する日以降に生じた自然災害に適用され,阪神・淡路大震災には適用されない。しかし,被災者の実情に鑑み,衆参両院の災害対策特別委員会は,同法案の採択に際し,同法と同程度の支援措置が講じられるよう国は必要な措置を講ずる旨の附帯決議を採択した。
    これを受け,復興基金を活用して,平成10年6月5日,被災者生活再建支援法の措置と概ね同等の支援措置を行うべく,「被災者自立支援金」制度の創設が決定された。
    本支援金は,平成10年7月から申請受付が始まり,平成13年2月末現在で14万6,000世帯に対し,約1,400億円が支払われた。
c 居住安定支援制度の創設
    家財道具等の必要最低限の経費だけでなく,被災者の自立した生活を再建する上で,「住まい」の問題も最重要課題であると認識されていたが,典型的な個人資産である住宅の再建等に関する支援のあり方については,様々な議論があった。こうしたなか,平成14年7月,中央防災会議の防災基本計画専門調査会が「国は現行の支援に加え,安定した居住の確保のための支援策を講じるべきである」との報告を行った。
    また,平成15年7月,全国知事会議は,「自然災害被災者支援制度の創設等に関する緊急決議」を採択し,都道府県が新たに300億円拠出し,全壊世帯に200万円の支援金を支給する等の制度の創設を国に要望した。これを受け,被災者生活再建支援金の支給対象経費に被災者の居住安定のための経費を追加する等の制度改正に向けて平成16年度政府予算案において措置され,居住安定支援制度を含む被災者生活再建支援制度の拡充について「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律」が平成16年3月,衆議院及び参議院においていずれも全会一致で可決成立し,同4月1日から施行された。
    具体的には,住宅の再建・補修,賃貸住宅への入居等に際し,被災者が現実に負担する経費(解体・撤去費,ローン利子等の居住関係経費)を幅広く支援対象とし,旧法に基づく100万円を上限とする生活再建支援金に加え,最大200万円の支援金を支給するものである。これらの措置は典型的な個人資産である住宅に係る支援について,可能な限り「公助」としての充実を図ったものである。
(4)ボランティアや救援物資の受入体制等の充実
a ボランティアの受入 
    阪神・淡路大震災では,全国から多数のボランティアが被災地に駆けつけたが,発災当初は災害時における行政側のボランティアの受入体制が整っていなかったこと,経験豊富なコーディネーターがほとんどいなかったことに加え,初心者ボランティアが多く,宿舎や食事のあてもなくやみくもに来たボランティアへの宿泊等の手だてに翻弄されたこと,被災者の自立を妨げる結果になったことなどの多くの問題も指摘された。
    こうした教訓を踏まえ,平成7年の災害対策基本法の改正において,国及び地方公共団体がボランティアによる防災活動の環境整備の実施に努めるべきことが明記されるとともに,平成10年には特定非営利活動促進法が制定されるなど,自主的な活動を促進する環境整備を進めている。一方,消防庁が災害ボランティアと行政の連携にあたって参考とするため「災害ボランティア・データバンク」を設置したほか,国土交通省は公共土木施設等の被害情報の迅速な収集を目的としてボランティアを事前登録する「防災エキスパート制度」を発足させるなど,ボランティアとの連携強化が図られた。さらに,平成7年12月25日の閣議において,阪神・淡路大震災が起こった1月17日を「防災とボランティアの日」とし,1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」とすることが了解された。
b 救援物資の受入れ
    救援物資についても大量に被災地域に届けられたが,なかには,中身を開けて整理し,梱包をし直して配付しなければならないものや,被災地の需要とマッチしない衣服などの物資などもあり,また,被災地における物資の受入,配付体制や輸送手段が整っていなかったことなどもあり,円滑な集積・配付ができるようになるまで時間がかかった。
    阪神・淡路大震災以前から防災基本計画には,主要食料,飲料水,医療,寝具その他生活必需品,医薬品などの需給動向の把握,応急調達,配分等に関する計画を事前に地域防災計画等で定めておくことが盛り込まれていたが,震災以降は,地域防災計画等において,物資の備蓄・集積拠点の想定や輸送機関との支援協定の締結などより具体的に計画が定められるようになってきている。
    しかし,より円滑に救援物資を被災者に届けるためには,救援物資を提供しようとする方々への救援物資の需給動向,梱包方法,送付先などついての情報を,インターネット等を通じてリアルタイムで,かつ効果的に届ける仕組みを検討していく必要がある。
(5)住宅対策
a 応急仮設住宅 
    震災にあたり,兵庫県は「原則として,震災で家をなくされ入居を希望する方々全員に応急仮設住宅を提供する」との方針のもと,726カ所の避難所において,避難所緊急パトロール隊による聞き取り調査を実施し,応急仮設住宅の必要戸数の把握に努め,2月9日までに当面の目標とする3万戸を発注した。
    さらに,避難所外からの応急仮設住宅申し込み状況や公団住宅等の空家の状況等を踏まえ追加され,地方公共団体が保有するグランド,国有の未利用地,民間から提供のあった土地などに,8月11日に兵庫県,大阪府で49,681戸の応急仮設住宅が完成し,最大時(平成7年11月)には47,911世帯が入居した。
    また,健康上配慮が必要な高齢者や身体障害者世帯等約35,000戸にエアコンが設置された。
    これらの措置は,災害救助事業として,国庫負担金(8割以上)を除いた地方負担額の全額に災害対策債の発行を許可するとともに,その元利償還金の95%が特別地方交付税で賄われた。
b 災害復興公営住宅の建設
    平成8年2月18日被災地を視察した内閣総理大臣から,阪神・淡路大震災復興対策担当大臣(国土庁長官),建設大臣,自治大臣(以上,当時)に対し,[1]応急仮設住宅から恒久住宅への円滑な移行を進めるため,公的供給住宅の建設を急ぐこと,[2]被災者の中でも老齢の方で,低所得が多いため,政府,地元地方公共団体が講じようとしている施策により引き下げられる公営住宅等の家賃でもなお負担が重いような方々に対して,何らかの工夫ができないか検討すること,との指示があった。
    これを受け,関係省庁及び県・市により「住宅対策実務者連絡会議」が組織され,まず,兵庫県が応急仮設住宅居住者に対し調査を実施した。その結果,[1]総収入が300万円未満の層に属する世帯が全体の7割を占め,特に,100万円未満が3割弱存在すること,[2]全体の3分の2が公営住宅を希望していることなどが明らかになった。
    その後,国・地方公共団体間で協議を進め,平成8年7月23日,兵庫県が「恒久住宅への移行のための総合プログラム」を決定した。その中には,[1]災害復興公営住宅等の供給計画,[2]災害復興公営住宅等への入居方法,[3]家賃低減化対策などが盛り込まれた。
災害復興公営住宅等の供給にあたっては,高齢単身者などの世帯にふさわいしい1DK,2DKなどの小規模住宅,高齢者向け仕様住宅,コレクティブハウジングの思想を活かした住宅など,保健・医療,福祉と連携した住宅整備が推進された。
    さらに,応急仮設住宅に居住する低所得の被災者が,円滑に恒久住宅に移行し,速やかに生活再建ができるよう,災害公営住宅等の家賃を低廉化するため,住宅の管理開始後5年間,地元公共団体が実施する家賃減免に対し国が財政支援(特別家賃対策補助及び地方負担分への交付税措置)を行う阪神・淡路災害公営住宅等特別家賃低減対策事業を創設した。
    また,被災地地域のコミュニティ形成に配慮し,住民相互のふれあいや助け合いを支援し,地域福祉やボランティア活動の場となる復興住宅コミュニティプラザの設置や,災害復興公営住宅等の整備にあたって,被災地を8ブロックに区分し,応急仮設住宅居住者のブロックごとの希望戸数の確保に努めるなど,地域別需要に対応した住宅の供給に努めた。
(6)産業復興対策
a 産業復興支援の取組指針と早期事業再建に向けた支援
    阪神・淡路復興対策本部は,平成7年4月,産業復興支援に関連する当面講ずるべき施策として,[1]工場及び商業集積等の再建・復興,[2]産業関連基盤施設の整備,[3]既存産業の高度化・近代化,新分野への進出,[4]研究開発の促進,[5]高度情報化の推進,[6]海外企業等の立地促進,[7]神戸港における輸入促進のための制度活用,[8]イベントの開催,[9]物流及び観光の復興支援が必要であるとした。
    具体的対応としては,被災企業の早期事業再建に向けた被害状況の把握,緊急相談窓口の設置,政府系中小企業金融3機関による災害復旧貸付制度の発動,被害の著しい者への貸付金利の引き下げ,特別貸付利率の適用限度額の引き上げ並びに貸付期間及び据置期間の延長などによる資金調達の円滑化支援を実施した。さらには操業の早期再開を推進するため,中小企業事業団の高度化融資制度を活用した「復興支援工場」や仮設店舗の確保等の支援を実施した。
b 本格的な産業復興に対する支援
    地域産業全体としては,広範な産業復興支援策により,震災に伴う大きな落ち込みから回復しつつあるものの,業種,業態によって「復興の差」が見られ,とりわけ,中小零細な事業者は,全国的な景気の停滞や震災前からの構造的な課題もあり,依然として厳しい状況の中にあった。このような実情を踏まえ関係省庁や兵庫県・神戸市からなる「産業復興実務者会議」を設け,平成9年10月,「産業復興支援充実策」をまとめ,さらに兵庫県は,平成10年3月「阪神・淡路震災復興計画推進方策」を取りまとめた。
    これらを踏まえ,[1]「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する法律」の補助対象事業費の補助割合や低利融資比率の引き上げの特別措置によるポートピアホールや神戸三宮駅南地区などの産業関連基盤施設の整備に係る支援,[2]財団法人阪神・淡路産業復興推進機構による「企業誘致促進ワンストップサービス事業」の国庫補助による支援や,「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法(FAZ法)」によるポートアイランド周辺地区に企業立地を行う貿易関連事業者等に対する金融上の優遇措置などによる企業誘致等の促進支援,[3]「くつのまち:ながた核施設」,「神戸ブランドプラザ(東京・青山に設置)」,「北野工房のまち」など新たな取組みによる既存産業の高度化・近代化,新分野への進出への支援,[4]財団法人阪神・淡路産業復興推進機構による起業家育成システム,新産業創造キャピタルの展開や,財団法人新産業創造研究機構による「技術移転センター」の設置など,新産業の創出・育成,研究開発などの推進を支援してきた。
c 神戸港の復興
    日本一のコンテナ貨物取扱量を誇った神戸港も壊滅的被害を受けた。平成7年2月10日,運輸省(当時)は,[1]港湾機能の早期回復,[2]港湾施設の耐震化の強化,[3]市街地復興との連携,[4]高規格コンテナターミナルや多目的バースの整備など国際拠点港湾としての復興を内容とした神戸港復興の基本的な考え方をまとめ,その後,神戸港の復旧工事は急ピッチで進んだ。
    しかしながら,貨物量が従来の水準まで戻らない状況が続いたため,平成8年5月,内閣総理大臣から関係閣僚に対し,神戸港の入出港時の事務手続きの簡素化について検討するよう指示が出され,運輸省が中心となり,法務省,大蔵省,厚生省,農林水産省(以上,当時),及び港湾管理者である神戸市が検討を重ね,申請書類のFAXによる受付の拡大,書類様式の簡素化,港湾施設の利用等港湾管理者による手続の電子情報処理化などが実現した。
(7)社会基盤の復旧・復興
a がれき処理
    損壊した家屋,ビル等のがれき等の処置については,個人,中小企業の所有のものについて,市町の行う災害廃棄物処理事業として,特例的に解体費用についても公費で負担することとされた。国は,解体費用を含むがれき処理費用の1/2を補助するとともに,補助事業に係る地方負担額について災害対策債の発行を許可し,その元利償還金の95%を特別交付税により措置することとした。また,がれき等の処理を促進するため,自衛隊の協力を得るとともに,現地に設置された国・兵庫県・関係市等から構成される災害廃棄物処理推進協議会を通じて,仮置場の確保,破砕・焼却処理の設置などを支援した。そのような取組みにより,がれき等処理は平成9年度までにほぼ完了した。
b 二次災害防止対策
    余震等による二次災害を防止するため,被災地方公共団体からの要請を受けて,建設省,住宅・都市整備公団(以上,当時),他の地方公共団体や民間ボランティアの建築技術者により,被災建築物の応急危険度判定支援を行った。
    また,建設省(当時)等においては,地震により六甲山系等の土砂災害に係る危険箇所等に,ビニールシートの敷設,土留工,仮設落石防護棚の設置等の応急対策を実施した。さらに,このうち,土石流危険渓流32渓流,地すべり,がけ崩れ34箇所について応急対策を実施するとともに,砂防事業,地すべり対策事業,急傾斜地崩壊対策事業の災害関連緊急事業等により土砂災害防止施設の整備を緊急的に実施した。
    その後,国土交通省では応急危険度判定を行う建築技術者の要請・登録や応急危険度判定マニュアルの作成など,実施体制の整備に努めている。また,土砂災害に対して,危険区域の周知,警戒避難体制整備,住宅等新規立地の抑制などを盛り込んだ土砂災害防止法が平成12年に制定された。
c 鉄道,道路
    鉄道については,円滑な旅客・貨物輸送も確保しなければ国民生活に著しい影響を与えるおそれがあり,また,被災鉄道事業者がその資力のみによっては災害復旧事業を行うことが困難であることから,運輸省(当時)は災害復旧補助を行うとともに,日本開発銀行(当時)から低利の災害復旧融資を行い,平成7年4月1日にJR西日本在来線全線が開通し,8月23日に神戸新交通六甲アイランド線の開通により被災地域の鉄道不通区間はすべて復旧した。
道路施設については,神戸市東灘区の阪神高速3号神戸線の約630mにわたる橋梁倒壊をはじめ,地震発生直後には高速自動車国道,直轄国道において27路線36区間の通行止めを行った。
    こうした反省を踏まえ,幹線道路のダブルネットワーク化や防災拠点の整備などの防災性向上のための幹線道路施設の整備を推進し,平成10年4月の明石海峡大橋の開通に合わせ,西神自動車道,阪神高速道路北神戸線・湾岸線,神戸西バイパスなどが開通した。
d 電気,ガス,水道,電話
    全戸への応急送電による停電の解消は1月23日午後3時,その後も全国の電力会社からの派遣も受け,一日最大6,000人以上の技術系の復旧要員により本格復旧に取り組んだ。また,都市ガスについては,約1万人体制により,がれき堆積による道路封鎖等のためガス導管の復旧作業に取りかかれない一部の地域を除き,4月11日までに復旧作業を終えた。日本開発銀行(当時)はそれら被災施設・設備の復旧に対し,災害復旧制度を創設した。
    水道施設については,全国43都道府県の水道事業者等から延べ約4万7千人の応援を受けて,4月17日をもって仮復旧を完了した。また,被災部分については耐震化を図りながら本格復旧事業が行われ,平成9年度に完成した。なお,水道施設の災害復旧事業に対して国庫補助の特例措置等を実施した。
ライフラインの防災性向上に向けて,例えば,神戸市の北部を走る市道山手幹線の地下に電気,ガス,水道,電話などのライフラインを埋設する「神戸山手共同溝」を整備するなどの取組みが進められている。
e 被災市街地復興特別措置法の制定
    阪神・淡路大震災の被災地においては,地震の発生後直ちに,建築基準法第84条第1項の規定に基づき1ヶ月(後にさらに1ヶ月延長)の建築制限を実施した。しかし,広範囲かつ甚大な被害を受けた市街地を一刻も早く復興することと,無秩序な建築等により安全性・環境上劣悪な市街地が再生されることを防止することの両立困難な要請をバランスさせるため「被災市街地復興特別措置法」が制定され,建築基準法上の建築制限が3月17日に切れることを踏まえ,平成7年2月26日に施行された。
    同法により,「被災市街地復興推進地域」の指定が可能となり,当該地域においては,災害の発生した日から起算して2年以内で建築行為等の規制がかかり,その期間内に,土地区画整理等の市街地開発事業や地区計画などの都市計画を定めることが市町村に課せられた。当初,16地区,289.5haが指定された。
f 面的整備事業の推進
阪神・淡路大震災は,都市計画や面的整備に関して,
  ・木造密集市街地など都市基盤未整備の市街地で火災が多発し,広範な焼失が生じたことにより,防災性の向上に資する市街地の面的整備の重要性が認識された。
  ・避難所,避難路,防災拠点等が適切に確保されていなかった地域において,避難,救援,復旧等の活動に支障が生じるなど,都市にとっての安全性確保のための施設整備の重要性が認識された。
  ・耐震性の低い住宅等の倒壊により多くの犠牲者が発生したことから,住宅等の耐震性の確保の重要性が認識された。
これらを踏まえ,土地区画整理事業,市街地再開発事業,住宅市街地整備総合支援事業など,密集市街地を改善する上で効果が高い面的整備事業を必要に応じて組み合わせながら道路,公園などと建物や宅地を一体的・抜本的に整備した防災性の高い都市づくりが進められた。
(8)安全・安心のまちづくり
a 耐震化施策の推進
    阪神・淡路大震災の犠牲者のうち,約8割が住宅・建築物の倒壊に巻き込まれての窒息死,圧死であった。住宅・建築物に関する耐震性の基準は,昭和56年に改正されたものであるが,倒壊した住宅・建築物の多くは56年基準以前のものであった。これ以降の住宅・建築物は阪神・淡路大震災の際にも一定の安全性が確認され,まさに,これ以前に建築されたものの耐震性の向上が重要課題となっている。
    このため,平成7年に既存建築物の耐震改修を促進することを目的に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」を制定するとともに,耐震診断に係る補助,耐震改修に係る補助,融資,税制の優遇措置を講じるなどにより住宅等の耐震性向上を図っている。
b 災害に強いまちづくり
    震災の教訓を踏まえ,どこででも起こりうる地震に備えるため,避難地,避難路等の整備,小中学校の耐震化等地震に強いまちづくりを総合的かつ計画的に実施するため,地震防災対策特別措置法が平成7年に制定された。この法律により都道府県知事が地震防災上緊急を要する事業について五カ年計画を策定した場合,その計画に掲げられた事業の一部について国庫補助率の嵩上げなどの措置を講じている。
    また,防災上危険な密集市街地の建て替えや延焼等危険建築物に対する除却勧告,新たな地区計画制度を内容とする「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」が平成9年に制定された。例えば,東京都では,早急に整備すべき市街地約6,000haを重点整備地域に指定し,事業を推進している。
    このほか,大都市圏における都道府県単独では対応不可能な広域あるいは甚大な被災に対し,国及び地方公共団体の協力による的確な応急復旧活動の拠点として,基幹的広域防災拠点の整備を推進している。
(9)被災地方公共団体への財政的支援
a 国庫補助の引き上げや地方財政措置
    政府においては,阪神・淡路大震災の被害の甚大性等に鑑み,阪神・淡路大震災を激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づく激甚災害に指定した。これに加え特別の措置として「阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」が平成7年3月に制定され,被災地域の早期復興と住民生活の早期安定・再建を図るとともに,地方公共団体,公的機関等の財政負担を軽減した。
具体的には,公共土木施設,学校,社会福祉施設,農地,農業用施設,農林水産業共同利用施設,社会教育施設,水道,廃棄物処理施設,火葬場,と畜場,公園,事業協同組合・商店街振興組合等の共同施設,卸売市場,鉄道,病院等の災害復旧事業等に対する補助率の嵩上げなど,特例措置を講じた。
    さらに激甚災害法及び特別財政援助法の適用対象となった公共土木施設等にかかる事業について,補助災害復旧事業債の対象とした。また,災害救助費の国庫負担金を除いた地方負担分の全額について災害対策債の発行を許可することとし,その元利償還金について95%を特別交付税により措置したほか,阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律により特別措置を講じた上で,地方の歳入欠かん債の発行やその元利償還金について特別交付税措置をするなどの地方税の減収補てん対策を講じるなど,中央政府として幅広く被災地方公共団体の莫大な財政需要を支え,財政調整機能を発揮した。
b 阪神・淡路大震災復興基金の設立
    平成7年度から10年間,復旧・復興への各般の行政施策を補完し,被災者の救済及び自立支援並びに総合的な復旧・復興対策を機動的・弾力的に進めることを目的として,平成7年4月1日兵庫県・神戸市により財団法人阪神・淡路大震災復興基金が設立された。設立当初の基金規模は6,000億円(兵庫県・神戸市からの出資金200億円・長期借入金5,800億円)であったが,平成8年度に増額され,現在9,000億円となっている。
    長期貸付金に係る地方債のうち,平成8年〜17年度にかけて,一部の利子の95%について普通交付税により措置されている。
    これにより,応急仮設住宅における心身のケアやふれあい交流の場の創設,ダブルローン対策としての助成など,被災者のニーズにマッチした柔軟な対応を可能にした。
 



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