2−4 国連防災世界会議の開催に向けて



2−4 国連防災世界会議の開催に向けて

(1)国連防災世界会議
a 前述のとおり,全世界で毎年約2億人が被災し,約6万人が生命を奪われ,被害額は約370億ドルにも及んでいる (図4−1−1参照)

世界の自然災害発生頻度および被害状況の推移
 とりわけ,開発途上国に与える被害は甚大で,死者数の約8割は低収入国で発生している。また,ひとつの自然災害でその国の年間GDPの大半が消失してしまう例も見られ,災害は途上国の経済発展の大きな障害となっている。
b このような状況に対応するため,我が国のイニシアチブにより,1990年代は「国際防災の10年」(IDNDR)として位置付けられ,その中間年の94年には,横浜において,防災分野で初めての世界会議である「国連防災世界会議」が開かれた。
 この横浜会議の成果,「横浜戦略」が採択された。
 横浜戦略においては,[1]災害が発生してからの事後対応だけでなく予防が不可欠であること,[2]地球規模の防災体制の確立が必要であるとの基本認識の下,あらゆるレベルにおける防災意識の高揚,開発計画と防災との連携,行政,メディア,科学技術,企業,NGO等の様々な主体の連携,早期警報や防災情報の共有等の行動計画が示された。
c しかしながら,横浜戦略においては,何をなすべきかのメニューは示されたものの,主体,方法,目標,達成期限,モニタリングの方法等が具体的に示されなかったことから,横浜戦略が策定されてから10年を経過しようとしているにもかかわらず,各国の具体的な行動には必ずしも結びついていない。
d 各国が具体的な行動を開始するモーメンタムを与えるため,我が国は阪神・淡路大震災から10年目にあたる2005年1月をとらえ,1月18日から22日までの5日間,兵庫県神戸市において,2回目の国連防災世界会議を開催することを国連総会に提案した。
 この提案には,アメリカ,スイス,オーストラリア等の141カ国が共同提案国として参加し,昨年の12月23日(日本時間24日),第58回国連総会において,全会一致により採択された。
e 今回の会議においては,今後世界が進むべき方向,目標を明確化すること等により被害の軽減のための具体的な活動を促進していくための方策を検討することが重要なテーマとなる。
 また,自然災害は,紛争災害によりも大きな災難を世界の人々に与えるものの,政策決定者,マスコミ等の関心は必ずしも高くないことから,世界的な防災会議を開催することにより,その関心を高めることも重要な役割である。
f 同時に,本会議においては,台風等による被害を劇的に減少させてきた我が国の経験を各国と共有するとともに防災分野での我が国の高度・先進的な取組を国際社会に紹介し,危機管理や災害対策に対する国際的な投資家の我が国に対する信頼を向上させる。
 特に会議は阪神・淡路大震災から10年間の節目にあたり開催されることから,この機会にこれまでの経験や多種多様な取組みを総括・検証し,未来に向けた教訓として広くアピールしていくこととしている。
〈参考1:横浜戦略とその後の取組み〉
(1)横浜戦略
 「横浜戦略」の内容は,多岐にわたるが,注目される点は以下のとおり。
 [1] 持続可能な開発は,各国において充分な防災対策(予防対策)による被害軽減なくしては達成できないとの認識を示したこと。
 それまでは,災害発生後の応急対応が中心であり,予防に対する取組みが十分ではなかった。
 [2] 予防対策を充実するには,各国の防災体制の確立の必要であるとの認識を示したこと。
 当時は,途上国を中心に,政府の中に防災を専門に扱う部署が存在しない国も多かったため,応急対応のみでなく,平時に災害予防の努力を重ねていくためにも,国レベルでの防災体制の確立が必要とされた。
 また,災害予防に係る国際協力についての協力体制を確立することが必要であるとの認識が示された。
(2)その後の取組み
 横浜会議後,世界は,「横浜戦略」をベースとして,「災害による被害の軽減」という地球規模の課題に取組んできている。
 防災体制の確立については,各国における防災部局の設置や地域レベルの協力体制の確立など,具体的な進展が見られた。アジア地域では地域協力のため,1998年,我が国の主導により,アジア防災センターが設立された。
 災害救援面では,1997年,国連に国連人道問題調整部(OCHA)が設立される等の進捗が見られた。
 しかしながら,1990年代の自然災害による被害を見てみると,70年代,80年代と比べて,死者数こそ減少しているものの,災害発生数,被災者数,経済被害額が急増してきている。(以下のグラフ参照。)
 この原因は,国連国際防災戦略(ISDR)によると,都市化の進展等に伴い,人々が氾濫原や地すべり地帯での生活を余儀なくされること等により,社会の脆弱性が増大したことによると分析されている。
 ISDRによると,多くの開発活動は,リスクを減少させるよりもハザードに対する脆弱性をむしろ増加させているため,更なる,災害予防活動の拡充,強化が必要であるとしている。
〈参考2:世界防災白書〉
 国連は,2001年の総会において,「横浜戦略」の見直しを行うことを決定した。
 ISDRでは,日本政府の支援により,このレビューの中核的な論点を提供するため,2002年に初の「国連世界防災白書(Living with Risk - A global Review of Disaster Reduction Initiatives)」をとりまとめた。
 白書においては,様々な事例を分析するとともに,理念のレベルでは理解されている「横浜戦略」を具体的に実施し,目に見える成果をあげるためには,各国政府が,それぞれの自然的,社会的実情に合わせて実施目標を設定し,それを達成するための方策を提示するとともに,その効果を評価する共通の基準や指標を策定することが必要であるとしている。(白書の全文は,www.unisdr.org参照)
〈参考3:国連防災世界会議の概要〉
(1)名  称:国連防災世界会議(World Conference on Disaster Reduction)
(2)日  程:平成17年1月18日(火)〜22日(土)
(3)開催地:兵庫県神戸市
(4)参加機関:国連加盟国,国連機関,関係国際機関,NGO,学会,民間企業等
(5)会議の目的
a)「横浜戦略とその行動計画」の見直しの完結と21世紀の防災指針の策定
b)ヨハネスブルグ「実施計画」の関連事項を実施に移すための各種行動の特定
c)持続可能な開発を達成するための防災に係る成功事例,教訓,課題の共有
d)防災施策の重要性に対する意識高揚とそれによる施策の推進
e)一般市民や防災関係機関に向けた防災情報の信頼性・有効性の向上
(6)会議の構成
a)政府間会議(本体会議)
 新たな防災戦略策定を策定やその実施のための具体的方策等について議論する国連主催の政府間会議
b)シンポジウム,情報交換会等
 防災にかかる成功事例の共有・情報交換や防災意識の高揚を図るための日本政府,自治体及び学会等の主催によるシンポジウムや情報交換会等
c)一般参加の国際防災展示会やイベント等
 国内の防災関係者や民間企業含め一般の方々の参加も対象とした各府省の防災施策のPR,阪神・淡路大震災の復旧・復興展等


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