1−3 世界での防災における課題



1−3 世界での防災における課題

 過去25年間に世界全体で自然災害により死亡した人は約145万人(年平均6万人)であるが,その約8割が低収入国に集中している( 図4−1−3 )。

自然災害による死者数(国の一人当り平均収入別)
 また,途上国においては,一度の災害がその国の1年のGDPを超える経済被害をもたらすこともある。
 例えば,1988年のアルメニアの地震の経済被害はGDPの約1.8倍,1996年のモンゴルの森林火災はGDPの約半分にも及んでいる。我が国の阪神・淡路大震災の経済被害がGNPの2%であったことを考えると,その影響の大きさが分かる( 表4−1−3 表4−1−4 )。

自然災害による被災額のGDP比
自然災害による被災額のGDP比(日本)
 このように,自然災害による経済被害は途上国の持続的な発展の大きな支障となっている。
 途上国の持続的な開発のためには,災害に対する社会の脆弱性を減らし,災害による被害を減少させていくことが喫緊の課題となっている。

コラム 災害は途上国の経済発展の大きな支障:アルメニア
 1988年12月にアルメニアをM7.2の直下型地震が襲い,当時の人口345万人のうち死者2万5千人,負傷者2万人,51万5千人がホームレスとなる大惨事となった。経済被害も,GDPの1.8倍にも及んだ。
 更に,これと前後して隣接するアゼルバイジャンとの国境で起こったナゴルノ・カラバフ紛争(1988年2月:推計犠牲者1万8千人),これに起因する近隣国の経済封鎖などで,アルメニア経済は疲弊した。
 震災からの復興計画もソ連の崩壊(1991年)で宙に浮き,独立後の91−93年のGDPは60%減少した。1993年7月の調査では当時の最低月額賃金4,200ルーブルが,バランスの取れた最低基準の食事をとるために必要な食費の10分の1にしか過ぎない状況であり,また,厳冬期を乗り切るための暖房用の薪は最低月額賃金の12〜18倍を要する状況であった。
(注)外務省資料,世界災害報告1994年版:国際赤十字・赤新月社連盟,世界年鑑2003:共同通信社



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