5−5 原子力災害対策



5−5 原子力災害対策

(1)災害の現況
 平成11年9月30日,茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(JCO)のウラン加工施設において,我が国初の臨界事故が発生し,3名が重篤な被ばくを受け,そのうち2名が死亡したほか,作業員,防災業務関係者,周辺住民など319人(うち周辺住民130人)が,一般人の年間実効線当量限度である1ミリシーベルトを超える放射線を浴びたと推定され,また,周辺住民の避難や屋内退避を招くという重大な原子力災害が発生した。
(2)原子力災害対策
 平成11年発生の上記臨界事故では,原子力安全規制の抜本的強化の必要性や,国・自治体の連携や緊急時対応体制の強化の必要性などの課題が顕在化した。
 これを受け,同年12月,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の一部改正により,原子力事業者に関して,保安規定の遵守状況定期検査制度の創設等がなされた。また,以下の事項を大きな柱とする「原子力災害対策特別措置法」が制定された。
[1]迅速な初動体制の確保
[2]国の緊急時対応体制の強化
[3]国,地方公共団体,原子力事業者等の連携の強化
[4]原子力事業者の責務の明確化
 これらを受けて,中央防災会議は,平成12年5月,防災基本計画原子力災害対策編の修正を行った。
 また,中央省庁再編に伴い,発電炉等の安全規制は経済産業省原子力安全・保安院が,試験研究炉等の安全規制は文部科学省が担当することとなった。
 これらの体制整備により上記臨界事故以降は,事故時の情報連絡など迅速・的確な対応が行われている。
 なお,平成14年4月,原子力艦が我が国に寄港した際の原子力災害に備え,防災基本計画原子力災害対策編に政府の活動体制や避難誘導,救助・救急等に係る関係機関の役割について記述するとともに,緊急被ばく医療に係る所要の修正を行った。
 同計画策定後には,原子力艦の原子力災害の判断基準,応急対応範囲等の原子力艦の原子力災害に係る技術的事項について具体的に検討を行うことが必要とされたことに伴い,平成14年7月から平成15年3月までの間,内閣府政策統括官(防災担当)を中心として,学識経験者,行政関係者及び関係地方公共団体の職員を構成員とした原子力艦災害技術検討委員会を設置し検討を行った。
 平成15年12月,同検討委員会での検討結果を踏まえ,行政から独立し,公正中立に原子力に関する安全性を審査する原子力安全委員会の下に,原子力艦災害の技術的事項検討タスクフォースが設置され,同タスクフォースにおいて,原子力艦の原子力災害の判断基準,応急対応範囲等について,平成16年1月から3月までの間,検討が行われた。
 同タスクフォースでの検討結果は,平成16年3月22日に開催された原子力安全委員会定例会議に報告され,同日,正式に決定された。
 今後,国においては,原子力安全委員会の検討結果を踏まえ,原子力艦の原子力災害の発生に備えるべく,マニュアルの策定等,さらなる防災体制の強化を図ることとしている。


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内閣府政策統括官(防災担当)

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