3−5 台風第10号



3−5 台風第10号

(1)災害の状況
 8月3日15時フィリピン東において発生した台風第10号は,7日,強い勢力で沖縄本島及び奄美諸島を通過し,8日22時前頃強い勢力を保ったまま高知県室戸市付近に上陸し,9日6時頃兵庫県西宮市付近に再上陸,10日1時半頃北海道襟裳岬付近に三たび上陸し,10日3時に北海道東部で温帯低気圧に変わった。この台風の影響により,南西諸島と西日本の各地で暴風が吹いた。また,九州から関東にかけての太平洋側を中心に大雨が降り,総雨量は多い所で約700ミリに達した。また,北海道でも前線と台風の影響により,多い所で約400ミリの大雨となった。
 この台風により,被害は35都道府県にわたり,北海道で河川の増水等により死者10名,行方不明1名の人的被害が発生したのをはじめ,あわせて死者17名,行方不明者2名,負傷者94名,住家全壊28棟,住家半壊27棟,住家一部破損559棟,床上浸水389棟,床下浸水2,009棟の被害が発生したほか,合計16,725人に避難指示・勧告が出された。
 ライフライン関係においては,北海道・中部・関西・四国・九州・沖縄電力管内で延べ約456,000戸が停電となったほか,上水道については延べ7,920戸が断水した。
 電気通信関係では,北海道内でケーブル切断により287回線が不通となった。
 河川については,近畿及び北海道地方の3水系3河川で一時計画高水位を超えたほか,多数の河川で警戒水位を超え,一部では危険水位に達し,北海道をはじめ各地で浸水被害等が発生した。
 土砂災害については,土石流,地すべり,がけ崩れ等が全国で合わせて88か所において発生した。
 道路については,路面冠水等により高速自動車国道,国道,県道等,有料道路の950か所で通行が規制された。
 鉄道については,北海道内のJR等各線で橋脚倒壊等のため運休が発生した。
 公共土木施設では,河川2,405か所,海岸24か所,砂防施設等95か所,道路(橋梁を含む)2,644か所,港湾25か所,公園11か所で被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地7,856か所,農業用施設4,991か所,農地海岸13か所,林地665か所,治山施設77か所,林道等4,280か所,漁港等74か所に被害が発生した。
 文教施設では,国立学校施設18校,公立学校施設122校,私立学校施設12校,社会教育・体育,文化施設等96施設,文化財等17件で被害が発生した。
(2)国等の対応状況
 8月10日16時より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,災害対策に万全を期すことを確認した。さらに,8月25日から26日にかけて関係省庁合同現地調査団5府省庁17名を北海道に派遣した。
 また,北海道が8月9日,平取町,門別町及び新冠町に災害救助法を適用した。
 さらに,9月30日閣議決定,10月3日公布・施行により,「平成15年8月7日から同月10日までの間の暴風雨及び豪雨による災害」として激甚災害に指定し,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特例措置等を適用( 表1−3−3 ),16年3月9日閣議決定,同12日公布・施行により「平成15年8月7日から同月10日までの間の暴風雨及び豪雨による災害」として局地激甚災害に指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助,農林水産業共同利用施設災害復旧事業費の補助の特例等を適用した( 表1−3−4 )。

平成15年激甚災害適用措置及び主な被災地
平成15年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その1)
 内閣府は,8月8日10時,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡や災害対応の調整を行った。
 警察庁は,8月7日23時,災害警備連絡室を設置し,九州管区警察局及び北海道警察通信部機動警察通信隊等による通信手段の確保を図る一方,関係県警察では救出救助,行方不明者の捜索等の災害警備活動を実施した。
 防衛庁は,8月9日17時,災害対策連絡室を設置し,北海道知事からの災害派遣要請を受け,8月9日から27日までに人員約2,030名,車両約380両,航空機36機により,行方不明者の捜索,孤立登山者の救出,河川の氾濫に伴う土のう積み,給水支援等を実施した。
 消防庁は,8月8日15時,災害対策室を設置した。
 海上保安庁は,巡視船艇及び航空機により行方不明者の捜索活動を行った。
 総務省は,8月7日10時11分,被害情報収集体制をとった。さらに,北海道平取町,門別町及び新冠町に対し9月に定例交付すべき普通交付税の一部繰上交付を行った。
 文部科学省は,8月7日14時,被害情報収集体制をとった。
 厚生労働省は,8月8日10時30分,被害情報収集体制をとった。また,北海道平取町,門別町及び新冠町に対し,災害救助法に基づく避難所の設置,炊き出し,応急仮設住宅等の救助に対する支援を行った。
 農林水産省は,8月6日17時30分,関係局庁連絡会議を開催した。さらに,8月12日,被害農林漁業者等に対する既貸付金の償還猶予等が図られるよう関係金融機関に依頼するとともに,農林漁業被害に係る迅速かつ適切な損害評価等の実施及び保険金・共済金の早期支払い等について関係機関を指導した。また,8月15日,北村農林水産副大臣以下による北海道豊頃町,新冠町等被災地域の現地調査を実施した。
 資源エネルギー庁は,電気料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。
 中小企業庁は,8月13日,政府系中小企業金融三機関,信用保証協会,商工会議所,商工会連合会及び北海道経済産業局に対して,災害に係る相談窓口設置を指示するとともに,政府系中小企業金融三機関に対して災害復旧貸付の要請を行った。また,政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会に対して,貸付手続の迅速化,返済猶予等既往債務の条件変更及び担保徴求の弾力化等について,被災中小企業者の実情に応じた対応を行うよう指示した。
 国土交通省は,8月6日17時に警戒体制をとり,ヘリコプターによる情報収集を実施した。また,8月11日,国土技術政策総合研究所等から砂防の専門家を現地へ派遣し,現地調査を実施した。
 気象庁は,8月6日15時,警戒体制をとり,台風の影響がなくなる10日までの間,台風の監視・予測を強化するとともに,警報や台風情報の発表に万全を期し,防災関係機関や住民に対して適宜適切に防災気象情報を提供した。


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