3−3 7月梅雨前線豪雨



3−3 7月梅雨前線豪雨

(1)災害の状況
 日本列島上の梅雨前線の活動は,7月後半に入ってから活発となり,18日は西日本の所々で日雨量100mmを超える大雨となった。梅雨前線は九州北部に停滞し,19日未明には大宰府で1時間104mmを記録するなど,福岡県を中心に激しい雨が降り,日雨量は300mmに達した。また,四国でも日雨量で400mmに達する大雨となった所があった。その後も梅雨前線は,九州北部に停滞を続け,前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み,前線の活動がさらに活発化し,19日の夜半から20日の明け方にかけては,水俣の1時間81mmをはじめとして,長崎・熊本・宮崎・鹿児島の各県を中心に局地的に非常に激しい雨が降り,日雨量は200mmを超えた。21日には,東日本から西日本にかけての広い範囲で,大気の不安定な状態が続き,福島・新潟・大分・長崎の各県で日雨量100mmを超える大雨となった。
 この大雨により,福岡県(飯塚市,福岡市,穂波町,志免町,太宰府市等)における浸水被害,福岡県太宰府市,熊本県水俣市,鹿児島県菱刈町における土砂災害など,中国地方,四国地方,九州地方を中心に被害が生じ,死者23名,負傷者25名,住家全壊51棟,住家半壊56棟,住家一部破損161棟,床上浸水3,558棟,床下浸水4,188棟の被害が発生したほか,最大約30,000人に避難指示・勧告が出された。
 土砂災害については,土石流等が22か所,地すべりが5か所,がけ崩れが134か所発生し,7月19日福岡県太宰府市三条で発生した土石流により死者1名,7月20日熊本県水俣市宝川内集地区で発生した土石流により死者15名,7月20日熊本県水俣市深川新屋敷地区で発生した土石流により死者4名,7月20日鹿児島県菱刈町前目で山崩れにより死者2名の人的被害が発生した。
 河川については,遠賀川水系の穂波川で一時計画高水位を超えたほか,九州や中国地方の多数の河川で警戒水位を超え,一部では危険水位に達し,内水氾濫等による浸水被害が広範囲に発生した。
 ライフライン関係においては,上水道が熊本県内で延べ1,261戸,福岡県内で延べ8,925戸が断水となった。電気通信関係では,携帯電話基地局50局が停波した。
 道路については,高速自動車国道,国道及び県道等計122か所で通行規制が行われ,鉄道については,福岡市交通局1号線の博多駅が冠水し運休となったほか,九州,中国,四国の各線で土砂流出及び雨量規制のために運休が発生した。
 公共土木施設においては,河川1,258か所,砂防施設136か所,道路(橋梁を含む)1,120か所,下水道1か所,公園29か所において被害が発生した。
 農林水産業関係では,農地4,062か所,農業用施設3,357か所,治山施設11か所,林地636か所,林道944か所に被害が発生した。
 文教施設においては,国立学校施設1校,公立学校施設59校,社会教育・体育,文化施設等16施設,文化財等17件に被害が発生した。
7月梅雨前線豪雨写真

(2)国等の対応状況
 7月20日15時より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,災害応急対策および情報収集に万全を期すことを確認した。また,内閣府職員による情報先遣チーム3名を熊本県水俣市内へ派遣するとともに,7月22日,鴻池防災担当大臣を団長とする政府調査団11府省庁34名を熊本県及び鹿児島県へ派遣した。
 福岡県は7月19日,飯塚市,福岡市,太宰府市,穂波町及び志免町に,熊本県は7月20日,水俣市にそれぞれ災害救助法を適用し,また,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を,適用日を7月18日として福岡県福岡市,飯塚市,太宰府市,志免町及び穂波町に,適用日を7月20日として熊本県水俣市に適用した。
 さらに,9月2日閣議決定,同5日公布・施行により,「平成15年7月18日及び同月22日までの間の豪雨による災害」として激甚災害に指定し,農地等の災害復旧事業等に係る補助の特例措置等を適用( 表1−3−3 ),16年3月9日閣議決定,同月12日公布・施行により,「平成15年7月18日から同月21日までの間の豪雨による災害」として局地激甚災害に指定し,公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助等を適用した( 表1−3−4(その1) (その2) (その3))

平成15年激甚災害適用措置及び主な被災地
平成15年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その1)
平成15年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その2)
平成15年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その3)
 内閣府は,7月20日8時,情報対策室を設置し,関係機関から情報収集を行うとともに,官邸,関係省庁との情報連絡や災害対応の調整を行った。
 警察庁は,7月20日7時45分,災害警備連絡室を設置し,被害状況の収集に当たったほか,九州管区警察局機動警察通信隊,福岡県警察広域緊急援助隊42人及び鹿児島県警察のヘリコプターを熊本県に派遣して,被災現場の映像配信,行方不明者の捜索,交通規制等の災害警備活動を実施した。
 防衛庁は,7月20日8時,災害対策連絡室を設置するとともに,福岡県・熊本県・鹿児島県知事からの災害派遣要請を受け,7月19日から26日までに人員約3,750名,車両750両,航空機20機,艦艇1隻,渡航ボート18隻により,人命救助活動,孤立者救助,土のう積み,給水・給食支援,災害ゴミの除去作業等を実施した。
 消防庁は,7月20日8時,災害対策室を設置し,熊本県の消防防災ヘリコプター等からの情報の収集を行った。また7月20日より職員3名を熊本県へ派遣した。
 海上保安庁は,7月20日19時28分,水俣市災害対策本部から要請を受け,第十管区海上保安本部において巡視船艇及び航空機により行方不明者の海上捜索を実施した。
 総務省は,福岡県飯塚市,太宰府市,志免町,穂波町及び熊本県水俣市に対し,9月に定例交付すべき普通交付税の一部の繰り上げ交付を行った。
 文部科学省は,7月20日13時45分,災害情報連絡室を設置した。
 厚生労働省は,7月19日14時,被害情報収集体制をとった。また,7月19日より,福岡県飯塚市,福岡市,太宰府市,穂波町及び志免町に対し,7月20日より,熊本県水俣市に対し災害救助法に基づく避難所の設置,炊き出し,応急仮設住宅14戸(水俣市)の供与等の救助に対する支援を行った。
 農林水産省は,7月21日,職員2名を現地に派遣した。
 経済産業省は,7月22日,九州経済産業局において,災害に係る相談窓口を設置した。
 資源エネルギー庁は,災害救助法適用地域における電気料金の支払期限延長等の特別措置に係る九州電力(株)からの申請を受けて即日認可,また,災害救助法適用地域におけるガス料金の支払期限延長等の特別措置に係る飯塚ガス(株)からの申請を受けて即日認可をそれぞれ行った。
 中小企業庁は,7月22日,政府系中小企業金融三機関,信用保証協会,商工会議所,商工会連合会及び九州経済産業局に対して,災害に係る特別相談窓口設置を指示し,政府系中小企業金融三機関に対して災害復旧貸付の要請を行うとともに,政府系中小企業金融三機関及び信用保証協会に対して,貸付手続の迅速化,返済猶予等既往債務の条件変更及び担保徴求の弾力化等について,被災中小企業者の実情に応じた対応を行うよう指示した。また,中小企業信用保険法の特例措置(セーフティネット保証4号)を講じた(8月29日官報告示,災害救助法適用日に遡及適用)。
 国土交通省は,7月19日4時20分に警戒体制をとり,ヘリコプター,衛星通信車の活用等による情報収集を実施した。また,照明車及び排水ポンプ車を現地に派遣し,排水作業の支援を行った。また,7月20日より現地調査のため国土技術政策総合研究所等より砂防の専門家等の派遣を実施した。7月21日より職員2名を緊急調査のため現地へ派遣した。
 気象庁は,7月19日6時,警戒体制をとり,気象注意報・警報や気象情報の発表に万全を期し,防災関係機関や住民に対して適宜適切に防災気象情報を提供した。また,7月25日から当分の間,土砂崩れ等による二次災害防止の観点及び自治体の避難勧告等の事前対策を講じやすくするため,熊本県芦北地方の水俣市を対象とする大雨注意報・警報の暫定基準による運用を行った。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.