3−4 業務市街地



3−4 業務市街地

(1)少ない夜間人口
 オフィスや商業施設が集中する都心では,平日の昼間は多くの企業従業員や企業訪問者,買物客等で賑わうが,そこに住民票を有し実際に居住している人は少ない。
 いわゆる「昼夜間人口比率」は,東京都千代田区の2,374.4を最高に,大阪市中央区で947.3,名古屋市中区で557.5,神戸市中央区で259.7と極めて高い。(平成12年総務省統計局)
 このような都心において,地震等の災害が,「人口が多い昼間において発生した場合」と「人口が少ない夜間に発生した場合」には,以下のような問題が発生する。
a 人口が多い昼間において災害が発生した場合
 昼間に大規模地震等が発生し,交通機関が停止した場合には,大量の帰宅困難者が発生する。ターミナル駅における群衆の殺到,家族の安否確認等のための電話の輻輳,徒歩帰宅者の大量発生をはじめとした大きな社会的な混乱が予想される。
 東京都では,自宅が遠いため帰宅を断念したり,一旦徒歩で帰宅を開始したものの,途中で帰宅が困難となり保護が必要になる等の帰宅困難者が約371万人発生すると予想している (表3−3−1)

東京都における帰宅困難者発生予測
b 人口が少ない夜間に災害が発生した場合
 業務市街地において居住する夜間の人口が少ないため,コミュニティによる防災,防犯機能が必ずしも高くない。

(2)エリア・マネジメント
 住民が少ない都心においては,地域における活動の主役は企業であることから,地域の問題に対応していくためには,近隣の企業同志の連携が極めて重要である。
 オフィスが集積している都心部においては,エネルギーやゴミ等をはじめとした諸問題に関して,建物・企業ごとに行うことによる非効率を避けるため,地区(エリア)全体で問題に対処していこうというエリア・マネジメントの考えが生まれてきている。

(3)神戸市の「旧居留地連絡協議会」等
 このエリア・マネジメントの考えの下,神戸市の旧居留地内の約110社の企業により構成される「旧居留地連絡協議会」(以下,「連絡協議会」という。)は,災害時に企業が連携・相互支援していくため,阪神・淡路大震災後の平成8年,防災委員会を設け,種々の活動を推進してきている。
 連絡協議会は,「各社における人命と財産は自社で守ることが原則であるが,それでも不足する事柄については,地域で連携し,相互支援を行う」という考えの下,平成10年,各企業が防災マニュアルを作成するための手引書として,「事業所のための『防災マニュアル』作成の手引き」を作成し,各社に配布している (図3−3−4)

防災マニュアル作成の手引き等
 更に,平成14年1月,連絡協議会は,災害時において,旧居留地内企業間の連携・相互支援,災害時における来訪者支援として帰宅困難者対策等を円滑に行うため,企業版地域防災計画として「神戸旧居留地・地域防災計画」を作成した (図3−3−4)

防災マニュアル作成の手引き等
 当該防災計画には,以下の内容が定められている。
・共同備蓄品の備蓄
・帰宅困難者対策として,「救護コーナー」,「情報提供コーナー」の設置,地区内ビルでの帰宅困難者の受け入れ
・災害時の情報収集・配信のため,電子メール等によるネットワークの構築
・災害時における相互支援や電話回線が使用不能になった際の直接連絡等のため,旧居留地に4つのブロック,15の「隣組」を組織(1つの隣組は5〜10棟のビルで構成) (図3−3−5)

「神戸旧居留地防災隣組」
・平常時からの備えとして,市民救命士の育成(目標1,000名),各隣組に2名の市民防災リーダーの配置,各種訓練の実施
 東京においても,平成14年11月,「東京駅周辺・防災対策のあり方検討委員会」(座長:伊藤滋早大教授,メンバー:「大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会」等)は,「東京駅周辺防災隣組」の設置を提言しており,平成15年の設置が予定されている。
 これは,かつての「防災・防犯・町会等の自治組織」を企業集積地にふさわしい形で再構成しようとするものである。
 また,上記検討委員会は,「帰宅困難者問題対応の必要性」,「防災をまちづくりの中で位置づける必要性」,「帰宅困難者問題は公共の支援を仰ぐ必要性」,「総合防災情報システム構築の必要性」を指摘している。
 このような地域の企業の連携により,まちづくりと一体となった,日常的な集客活動等と連動した防災対策が可能となり,帰宅困難者問題等について行政等との調整が容易となるものと考えられる。


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内閣府政策統括官(防災担当)

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