5−7 火災対策



5−7 火災対策

(1)災害の現況
 近年の都市化の急速な進展に伴う人口の密集化,建築物の高層化・大規模化等の進展,地下街の発達や,本格的な高齢化社会の到来などにより,火災による被害発生の危険性が増大している。平成13年9月1日には,新宿区歌舞伎町の小規模雑居ビルにおいて火災が発生し,死者44人,負傷者3人の犠牲者を出す惨事となった。

(2)火災対策
a 防火安全の確保
 国及び地方公共団体では,火災の発生を予防し,被害を最小限に抑えるため,火災予防運動や民間防火組織の活動を通じ,防火思想の普及に努めている。また,人の出入りが多い旅館,病院,地下街等の防火対象物においては,消防法により,消防用設備等の設置,防火管理者の選任,防火管理業務の実施等が義務づけられている。
 特に,上記歌舞伎町の火災直後に実施した調査において全国の小規模雑居ビルの約9割に消防法令等(火災予防条例を含む)違反,4割に建築基準法の違反があること等が判明したことから,これらに対する防火安全対策について課題とされ,消防庁においては消防法を改正し,消防法令違反等の是正の徹底を図るため,消防機関による立入検査及び措置命令に係る規定の整備を図り,罰則の引上げ等を行うとともに,防火対象物における防火管理の徹底を図るため,防火対象物の定期点検報告制度を設けるほか,避難上必要な施設等の管理を義務付ける等,所要の措置を講じる一方,国土交通省においては建築基準法を遵守させるための方策の検討を行った。
b 消防力の強化
 国及び地方公共団体は,より一層の消防力の強化を図るため,はしご付消防ポンプ自動車,化学消防ポンプ自動車,救助工作車,消防・防災ヘリコプター等の重点的な整備を図るとともに,消防水利の多元化,消防団の充実強化を推進している。
 また,大規模又は特殊な災害時における緊急対応体制の充実・強化として,消防庁長官による緊急消防援助隊の出動の指示及びこれに係る国の財政措置,国による主体的な火災原因調査の実施等を行うため,「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律案」が,第156回国会に提出されている。
c 建築物の不燃化の推進
 従来より防火地域の指定等による建築物の構造規制,市街地再開発事業,住宅地区改良事業,密集住宅市街地整備促進事業,住宅金融公庫融資等による耐火建築物への建替えの促進,公営住宅等公共住宅の不燃化,都市防災総合推進事業による避難地・避難路周辺等の不燃化等各種の対策を進めてきている。
d 住宅防火など火災予防対策の推進
 住宅火災による死者は建物火災による死者のうち高い割合を占めており,特に高齢者の死者発生率が他の年齢層に比べ極めて高い現状にある。
 この低減を図るため,消防庁においては,平成13年に策定した新たな「住宅防火基本方針」に基づき,住宅用の火災警報器・消火器等の設置促進や訪問診断等による意識高揚等の住宅防火対策を積極的に推進している。
 また,放火による火災が,火災原因の4割を超える都市もあるなど,深刻な社会問題となっていることから,先進市町村と事例等をもとに放火防止対策の策定を図るほか,関係機関との連携を強化して放火発生件数の低減と被害の局限化等を図るための対策を推進している。
e 林野火災対策
 出火多発期である春先を中心とした行楽期等における林野周辺住民・入山者等に対する広報,火災警報発令中における火の使用制限の徹底・監視パトロールの強化,火入れを行う者に対する適切な指導等,出火防止の徹底を重視して実施している。
 また,林野火災の危険度が高い地域においては,林野火災特別地域対策事業を推進しており,平成13年度までに38都道府県の949市町村にわたる229地域において実施されている。
さらに平成14年度には,消防庁及び林野庁を中心として「林野火災対策に係る調査研究会」を開催し,地方公共団体の林野火災対策の充実を要請している。


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