4−2 風水害対策



4−2 風水害対策

(1)近年の風水害の特徴
a 豪雨,台風等の状況
 我が国では,毎年,6月下旬から7月中旬にかけての梅雨前線の活動や台風の接近・上陸等により,各地で豪雨が毎年発生している。
 平成14年は,13個の台風が日本列島に接近し,そのうち3個がいずれも東日本に上陸し大きな被害を与えている。
 特に平成14年7月9日から12日にかけて日本に接近,関東地方に上陸した台風第6号は,死者・行方不明者7名,10月1日から2日にかけて日本に上陸,東日本を北に向かって縦断した台風第21号は死者5名という大きな人的被害を発生させている。
 昭和46年〜平成12年の30年間で我が国に影響のあった台風についてみると,年間平均26.7個の台風が発生し,うち2.6個が北海道・本州・四国・九州のいずれかに上陸している (図2−4−25)

台風の本土への接近数(上陸数を含む)の推移
 平成14年は,発生数26個で平年並みであったものの,7月は台風第6号,7号と9年ぶりに2個以上の台風が上陸,例年台風が多い9月には日本本土に接近したものはなかったが,10月初旬の台風第21号は東日本に上陸,北へ縦断し,大きな被害をもたらした (図2−4−26)

平成14年の主な台風の発生箇所とコース(気象庁資料)
b 水害の状況
 我が国においては治山・治水事業の推進等により,水害による浸水面積(水害面積)は,昭和57年〜61年の平均が77,420haであるのに対し,平成9年〜13年の平均は35,360haと大幅に減少している (図2−4−27) 。しかしながら,河川氾濫区域内への資産の集中・増大に伴い,近年,浸水面積当たりの一般資産被害額(水害密度)が急増している (図2−4−28) 。平成14年は,台風と梅雨前線の影響による豪雨で,東海地方から北海道にかけて,浸水などによる大きな被害が生じている。

水害面積の推移
一般資産水害被害額及び水害密度の推移
 原因別に見ると,河川流域内の開発の進展による流域の保水・遊水機能の低下に伴い,洪水や土砂流出が増大するとともに,河川氾濫区域への都市化の進展により被害対象が増加している。一方,都市河川,中小河川や下水道(雨水対策施設)等の整備水準は未だ低いこともあり,全体の水害被害額(一般資産等被害額)に占める内水の割合が大きい。
c 土砂災害の状況
 地すべり,土石流,がけ崩れといった土砂災害は,その原因となる土砂の移動が強大なエネルギーを持つとともに,突発的に発生することから,人的被害につながりやすく,また家屋等にも壊滅的な被害を与える場合が多い。
 自然災害による犠牲者のうち,土砂災害による犠牲者の占める割合は,昭和59年に約80%に達したのをはじめとし,概ね50%前後の割合で推移しており,非常に大きな割合を占めている (図2−4−29) 。近年の状況は 表2−4−16 のとおりである。平成14年は,7月9日から12日にかけて,梅雨前線と台風第6号による豪雨の影響で,岩手県釜石市で土石流が発生し,2名の死者が発生している。

自然災害による死者・行方不明者の原因別状況の割合(昭和45年〜平成13年)
近年の主な土砂災害による死者・行方不明者の状況
 一般に土砂災害は,土砂移動の発生形態により,大きく地すべり,土石流,がけ崩れに分類される。火砕流を除外すると昭和58年〜平成14年の20年間の平均で毎年約840件の土砂災害が発生している (図2−4−30)

土砂災害の発生状況の推移
 発生件数の内訳は,がけ崩れが全体の約64%を占め,死者・行方不明者もがけ崩れによるものが最も多い。一方で地すべり・土石流は,がけ崩れに比べ発生件数は少ないが,阪神・淡路大震災に伴う西宮市での地すべり(34名),蒲原沢土石流災害(14名),出水市の土石流災害(21名)など1件の発生に対して多数の死者・行方不明者が発生する場合がある。
d 風害の状況
 風害は,飛来物による被害,建物・施設の損壊,高波,樹木の倒壊,フェーン現象による火災延焼などの形態がある。
 平成11年には,9月24日に愛知県の豊橋市,豊川市内を襲った竜巻により,負傷者365名が発生し,また,10月28日には青森県で,強風と高波により入れ替え作業中の鉄道車輌が横転するなどの被害も発生している。平成13年には台風第16号が10日あまり沖縄近辺に停滞したため,住家の破損や全半壊の被害が出ている。平成14年には,台風第16号が沖縄県を中心に,また台風第21号は関東地方から北海道にかけての広い範囲で,強風により多くの負傷者を発生させた。

(2)風水害対策の概要
a 防災基本計画の修正
 以下のような近年の風水害に関する状況をかんがみ,平成14年4月に防災基本計画の修正を行っている。
(a)近年都市部において多く発生している集中豪雨,それに伴う地下街への浸水被害の増加
(b)平成11年6月の広島県で発生した土砂災害から,災害情報伝達の必要性を認識
(c)平成11年9月の熊本県不知火町で発生した高潮災害から,海岸保全施設の整備推進等のハード面,災害関連情報の提供等のソフト面,それぞれの面においての対策強化の必要性を認識
[1] 水害対策
 近年,大都市などにおいて時間雨量100mmを越えるような短時間の集中豪雨の増加,それに伴い排水しきれなかった水の地下街等への浸水など新たな都市型水害が発生してきている。特に平成11年6月に福岡市博多区で,同年7月には東京都新宿区で地下空間への浸水による死者が発生している。また,都市部においては,河川,下水道の整備による危機意識の低下等により被害が拡大する傾向にあり,平成12年9月の東海地方の集中豪雨ではライフライン等が被害を受け,都市機能が麻痺する状況に陥った。
 このような状況に対応するため,防災基本計画に以下の内容を新たに追加した。
1)都道府県知事による洪水予報河川の指定
2)河川管理者による浸水想定区域の指定及び公表,住民への周知
3)河川管理者による洪水予報等の住民,地下管理者等への的確かつ迅速な伝達
4)地下空間等からの避難体制の確立及び浸水被害軽減対策の促進
 なお,当該内容は,水防法の改正(平成13年7月)により,法制度的に担保されているところである。
[2] 土砂災害対策
 我が国は,土砂災害の起こりやすい地形であるため,過去から様々な対策を積極的に推進してきたが,近年でも,平成11年6月に広島県において死者24名を出す土砂災害が発生している。その際の新たな教訓として,災害情報の事前通知,情報伝達体制を充実させる必要性が認識され,防災基本計画に以下の内容を新たに追加した。
1)都道府県知事による土砂災害警戒区域の指定及び市町村による警戒避難体制の整備,住民への周知
2)都道府県知事による土砂特別災害警戒区域の指定及び当該区域における特定開発行為の制限等
 なお,当該内容については,平成13年4月から施行されている「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」により,法制度的に担保されているところである。
[3] 高潮災害対策
 高潮災害に対しては,海岸保全施設の整備や気象情報の精度向上等,積極的対策がなされてきたため,近年においては大きな被害は発生していなかった。
 しかしながら,平成11年9月に熊本県不知火町で,台風第18号により12名の死者が発生するという高潮災害が発生した。これに対し,国土庁,農林水産省,水産庁,運輸省,気象庁,建設省の関係6省庁(当時)が連携し,平成11年10月に「高潮災害対策の強化に関する連絡会議」を,平成12年2月に「高潮防災情報等のあり方研究会」を開催し,従来のハード面の整備の一層の推進とともに,ソフト面での対策強化の推進が重要であるとして,平成12年3月に「地域防災計画における高潮対策の強化マニュアル」を策定した。防災基本計画においても,対策強化を図るために以下の内容を新たに追加した。
1)高潮防災施設整備の推進
2)ハザードマップの作成の促進及び災害対策関連情報の住民等への周知
b 洪水ハザードマップの公表状況
 防災能力の向上や災害時の被害軽減を図る有効な方法の一つとして,防災情報の公表,提供があげられる。最近では各自治体で,自然災害による被害の可能性を示すハザードマップや被害想定などの防災情報が数多く提供されるようになった。
 水害においては,特にハザードマップが有効で,洪水時等の影響範囲を示すことで,被害の予防や軽減に対する日頃の活動や備えの必要性を啓発できる。洪水ハザードマップについては,217市町村で作成が完了している(平成15年3月現在)。


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