2−2 災害予防の強化



2−2 災害予防の強化

 災害による被害の発生を未然に防止し,あるいは軽減するため,災害に強い国づくり,地域づくりを進めるとともに,国民一人ひとりの防災意識の高揚のための施策の実施,防災訓練の実施等が重要である。

(1)災害に強い国づくり,地域づくり
 地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土とまちの形成を目指して国土保全,地域づくりを推進するとともに,主要交通・通信機能の強化,構造物・施設,ライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。
 また,災害発生時に災害応急活動を円滑かつ効果的に実施するための施設・設備の整備等各般の施策を実施している。
a 国土保全事業の推進
 水害,土砂災害,震災,火山災害等の自然災害から国土並びに国民の生命,身体及び財産を保護するためには各種の国土保全事業を長期間にわたり計画的に推進する必要がある。このため,治山事業七箇年計画,治水事業七箇年計画,海岸事業七箇年計画,急傾斜地崩壊対策事業五箇年計画,下水道整備七箇年計画,土地改良長期計画等の長期計画を策定し,各種事業を計画的に推進している。国土保全事業に係る予算の推移をみると 図2−2−1 のとおりである。平成13年度では,国土保全事業の国費は2兆2,388億円(下水道事業関係の国費1,821億円を含む)で,事業費は3兆7,336億円(下水道事業関係の事業費3,636億円を含む)となっている。

国土保全事業予算の推移
 また,国土保全事業予算額が一般公共事業予算額に占める割合は,平成13年度は約18.5パーセントとなっている。
 長期計画に基づく国土保全事業の実施状況は 表2−2−2 のとおりである。

国土保全事業に係る各種計画の実施状況
b 災害に強いまちづくり
 都市再生本部においては,都市再生プロジェクト第3次決定(平成13年12月)として,地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地について,特に大火の可能性が高い危険な市街地を対象に重点整備し,今後10年間で最低限の安全性を確保することとし,[1]未整備都市計画道路やこれに連なる公園の整備等による,密集市街地全体を貫く緑のオープンスペース機能を持つ連続した骨格軸の形成,[2]特に大火の可能性の高い危険な市街地(東京,大阪各約2,000ha,全国で約8,000ha)を重点地区として,空地の確保や建築物の耐震不燃化等の整備を行うこととした。さらに,「全国都市再生のための緊急措置〜稚内から石垣まで」の検討方向(平成14年10月4日都市再生本部報告)の中の「[1]安全で安心なまちづくり」においても,防災まちづくり(密集市街地,都市水害,震災時の帰宅困難者対策等)を推進することとなっている。
 また,「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(平成9年5月制定)に基づき,老朽化した木造の建築物が密集し,かつ十分な公共施設がないため,大規模災害時に市街地の延焼等が予想される防災上危険な密集市街地の整備の促進を図っている。
 さらに,災害に強い安全なまちづくりを推進するため,防災システムのIT化などの基盤整備及び公共施設等の耐震化を重点的に推進することとし,新たに創設した「防災対策事業」や,住民の防災活動の活性化,情報通信体制の強化等に要する経費に対する地方財政措置により地方公共団体を支援し,防災対策の強化を図っている。
c 災害に強い農山漁村づくり
 緊急車両の通行や避難路の確保等のための農道・林道,災害時の避難地や災害対策拠点として活用するための農漁村公園緑地,緊急物資輸送に資する漁港の耐震強化岸壁,災害情報の伝達を行うための施設の整備等,災害対策上必要な施設の整備を緊急に実施している。
d 地域の防災拠点の整備
 災害時の応急活動の中心や地域住民等の緊急避難場所になる防災拠点として,平常時は普及啓発活動に利用される防災センターや,水防資材の備蓄や水防活動の指揮所となる河川防災ステーションの整備を進めている。
 災害時に避難場所となる学校については,改築,耐震補強や,備蓄倉庫,耐震性貯水槽等の整備が図られている。官庁施設についても耐震安全性の向上や備蓄機能の強化等を実施している。病院については,災害時の患者受入機能(ヘリポート等),水,医薬品,医療材料の備蓄機能等を持ち耐震機能が強化された災害拠点病院の整備を推進している。
 さらに,災害時には応急対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関する普及啓発,教育,訓練等の場として機能する地域防災拠点施設の整備を推進している。
 また,災害に強いまちづくりの一環として,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能を併せ持つ公園の整備を推進している。
 この他,港湾における緊急物資輸送用の耐震強化岸壁や避難緑地等と一体となった臨海部防災拠点の整備,空港における液状化対策等を行っている。
e 広域防災基地の整備
 「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」においては,次の(a)〜(c)の3つが,また,都市再生プロジェクトでは(d)が,それぞれ広域的な防災拠点として位置づけられている。
(a)立川広域防災基地
 広域的な災害が発生した場合においては情報の収集・伝達,救難・救助等の災害応急対策の拠点となり,平常時においては地域の行政サービスの充実,国民に対する防災知識の普及等を図るため,東京都立川市に立川広域防災基地が整備されており,災害対策本部予備施設のほか,警察防災,海上防災,消防防災,自衛隊航空及び医療に関係する施設が整備されている。
(b)さいたま広域防災拠点
 関東地域の災害情報を集中的に管理し,県域内の指揮命令を行うため,各省庁の地方支分局が集結するさいたま新都心において,さいたま広域防災拠点を整備している。
(c)横浜海上防災基地
 原油,LPG,LNG等の危険物を積載する船舶の事故や,南関東直下の地震等により沿岸部が大きな被害を受けた場合に速やかに救援活動を実施するため,横浜市の「みなとみらい21」の新港地区に横浜海上防災基地が整備されている。
(d)東京湾臨海部等における基幹的広域防災拠点
 都市再生本部における都市再生プロジェクト第1次決定(平成13年6月)では,都県市単独では対応不可能な,地震・テロ等による広域あるいは甚大な被害に対応するため,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を行うこととし,東京都有明の丘地区及び神奈川県東扇島地区において,平成15年度より本格的に整備着手する予定である (詳細は第2章4−1(3)「地震に強い国土の形成」参照)

(2)防災に関する普及・啓発
 災害から自らの身を守るためには,平常時から,一人ひとりが防災に関する意識を高め,防災に関する正しい知識や技術を身につけることが重要である。
a 「防災週間」等各種行事を通じての普及・啓発への取組み
 昭和57年5月11日の閣議了解で「防災の日」(9月1日)及び「防災週間」(8月30日〜9月5日)を定め,毎年この期間を中心に各種行事や広報活動等を実施している。
 この一環として,平成14年度においては福岡市で「防災フェア2002」(内閣府・福岡市・防災週間推進協議会共催)を実施し,屋内外において,防災関係機関による各種防災器具の展示や活動紹介,実演に加え,被災体験や防災ウォーク等市民が参加する行事を展開した。
 また,防災功労者(災害時における防災活動又は平常時における防災思想の普及もしくは防災体制の整備について全国民の模範となる顕著な功績があったもの)の表彰式を行い,内閣総理大臣が個人1,団体20を,防災担当大臣が個人4,団体6をそれぞれ顕彰した。
 このほか,関係各機関や地方公共団体においては,[1]各種催物,展示会の開催,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報,[3]標語,図画の募集等を展開している。
 また,これ以外にも,「全国火災予防運動」(3月1日〜及び11月9日〜),「水防月間」(5月又は6月),「山地災害防止キャンペーン」(5月20日〜6月30日),「土砂災害防止月間」(6月),「がけ崩れ防災週間」(6月1日〜),「危険物安全週間」(6月第2週),「道路防災週間」(8月25日〜),「建築物防災週間」(3月1日〜及び8月30日〜),「救急医療週間」(9月5日〜),「雪崩防災週間」(12月1日〜)等においてシンポジウム,講演会,講習会等を実施し,防災知識の普及と防災意識の高揚を図っている。
b 「防災とボランティア週間」における取組み
 平成7年12月15日の閣議了解で「防災とボランティアの日」(1月17日)及び「防災とボランティア週間」(1月15日〜1月21日)を定め,毎年この期間を中心に各種行事や広報活動等を実施している。
 この一環として,平成14年度においては静岡市で「防災とボランティアのつどい」(内閣府・静岡県共催)を実施し,防災ボランティアの活動紹介や発表会,ディスカッション等の行事を展開した。
 このほか,関係各機関や地方公共団体においては,[1]各種催物,展示会の開催,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報等を行っている (防災とボランティアについては第3章2−3「防災とボランティア」を参照 )。
c 学校における防災教育
 災害時に自ら適切な行動をとれるようにするためには,学校における防災教育をより一層充実し,子供の時期から正しい防災知識をかん養していくことが重要である。
 文部科学省においては,学校における防災教育の充実を図るため,安全指導の進め方や避難訓練の実施を指導計画に盛り込むための教師用参考資料や,地震等による自然災害に対する備えや適切な行動のための防災教育教材の作成・配布を行う他,防災教育の研修会の開催(独立行政法人教員研修センターで実施)などの施策を講じている。
 さらに,平成14年度から完全実施された新学習指導要領では,小学校の社会(6年生)において,国民生活の安定にかかる国や地方公共団体が取組みの事例として,災害復旧等の具体例を取り上げたり,また中学校の保健体育においても,日頃からの安全への備えや自然災害の際の安全確保について指導することとした。また,今回創設された小学校の「総合的な学習の時間」の実施においては,地域の特色に応じ,横断的・総合的な課題を取り上げることとされており,防災をテーマとして採用している実施校もみられる。

(3)自主的防災意識の育成
 大規模な災害が発生した場合には,地域住民が防災関係機関と一体となって初期消火,避難誘導,被災者の救出・救護等の自主的な防災活動を行うことが,被害の拡大を防ぎ円滑な災害応急対策を実施する上で極めて重要であり,このような観点から,地域住民の連帯意識に基づく自主防災組織が結成されている。
 自主防災組織については,災害応急活動のほか,平常時から危険箇所の点検・周知,災害履歴の伝承,防災訓練等を通じて,地域全体としての防災意識の向上,知識の普及面でも更に重要な役割を担っていくことが期待されている (自主防災組織については,第3章2−2「住民による自主防災活動の推進」を参照)


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