1 災害一般共通事項



第3章 科学技術の研究


1 災害一般共通事項


(1) 非常時通信技術の研究開発

 総務省通信総合研究所においては,インターネットが持つ災害に強い通信特性や情報の双方向性を生かした安否情報登録検索システム(IAAシステム)の開発を進めた。また,情報通信危機管理研究施設を整備し,大規模災害にも耐えるIAAシステムの研究開発を着手した。(国費 30,000千円)

(2) 地域情報通信のためのネットワーク技術の研究開発

 総務省においては,通信・放送機構に出資し,耐災性の高い地域非常通信ネットワークを実現するため,音声,映像,文字等の多様な情報を一つのシステムで伝達するとともに,地域やグループの通信の集中度合に応じて通信路を割り当てる等によって,重要な通信を確保できる無線通信技術の研究開発を行った。(国費 97,334千円)

(3) 消防防災対策に関する研究

 消防庁においては,次の研究を行った。
a 衛星データ通信・データ放送に関する調査検討
 耐災害性に優れている衛星通信システムを活用した大容量データの伝送システムについて調査検討を行った。(国費 734,127千円)
b 災害時における消防防災ヘリ映像等を活用した被災状況把握システムに関する調査検討
 消防防災ヘリコプター等が撮影した被災地の映像のコンピュータ解析を行うことにより被災状況を把握し,地図上に表示することができるシステムについて調査検討を行った。(国費 85,911千円)
c 消防・救急無線のデジタル化に関する研究
 無線システムの高度利用のために求められている消防・救急無線のデジタル化について,技術的検討及び運用面での検討を行った。(国費 271,395千円)
d 携帯電話等からの119番通報発信地表示システム等の検討
 端末の急激な普及に伴い,急増する携帯電話等からの119番通報について発信地の表示ができるシステム及び直接管轄消防本部へ119番通報ができるシステムの検討を行った。(国費 83,824千円)
e 防災GISの有効活用方策についての研究
 消防広域応援等が必要な大規模災害が発生した場合の災害情報の共有化及び応援隊への情報提供等防災GISの有効活用方策について調査検討を行った。
(国費 1,839千円)
f インターネットを活用した被災住民向け災害情報システムの開発
 災害が発生した場合に市町村がインターネットを活用して災害関連情報を収集し,また,被災住民に向けて情報を提供するためのシステムを開発した。
(国費 223,038千円)

(4) 防災科学技術の総合的推進

 文部科学省においては,防災に関する研究開発基本計画に基づき,科学技術に関する経費の見積り方針の調整及び科学技術振興調整費による総合推進調整を図るとともに,防災科学技術を通じた国際協力を推進した。
 防災科学技術研究所においては,防災科学技術に関する総合的,共通的研究(特別研究は別掲)を行うとともに,防災科学技術資料の収集・整理及び提供を行った。
(国費 1,612,820千円)

(5) 地球観測データによる災害監視技術の開発

 宇宙開発事業団においては,地球観測衛星等を複合的に活用した災害監視システムの研究等を実施した。(国費 8,514千円)

(6) 自然災害に関する研究

 文部科学省においては,科学研究費補助金により大学等による自然災害の予防・軽減策の確立に資する課題の基礎的研究を助成した。

(7) 砂防,海洋災害,防災材料等に関する研究

 文部科学省においては,国立大学の研究所等で,砂防,海洋災害,防災材料,水文学及びオホーツク海沿岸の流氷等に関する基礎的研究を行った。(国費 323,854千円)

(8) 農作物及び森林の災害防止等に関する研究

 農林水産省においては,次の研究等を行った。
a 農作物の災害防止に関する研究
 耐冷性,耐寒性,耐湿性,耐干性品種の育成,冷害,雪害,風害等の作物の気象災害防止技術に関する研究を行った。また,道府県に委託し,農作物の耐冷性品種等の育成のための品種改良試験を進めた。(国費 494,258千円)
b 農業用施設等に関する研究(国費 107,842千円)
(a) 農業工学研究所等において,農地の地すべり防止に関する研究,異常降雨・大規模地震による災害の軽減対策に関する研究,農業施設に対する風対策技術に関する研究等を行った。また,農業工学研究所を中心に,フィルダム等の進行性破壊現象の解明を行った。
(b) 農業工学研究所において,科学技術振興調整費重点基礎研究により,農業用基幹施設の現況の強度を計測し,それに基づいた構造物の安全度の評価手法の開発に関する研究を行った。

(9) 流出油防除技術に関する研究

 国土交通省においては,油流出事故による被害を最小限に抑えるため,荒天下で高粘度油を回収できる大型油回収装置等の研究開発費の一部補助を行った。
(事業費 200,000千円  国費 100,000千円)

(10) 浮体式防災拠点に関する調査研究

 国土交通省においては,関係省庁,地方自治体等と連携しつつ,免震性が極めて高いなど優れた特徴を有するメガフロート(超大型浮体式海洋構造物)を広域防災拠点として利用する場合の機能要件,技術課題に係る調査研究を行った。
(国費 160,041千円)

(11) 北海道における港湾・海岸防砂に関する研究

 国土交通省北海道開発局開発土木研究所においては,港内への流氷流入,港内結氷等の対策及び高波による施設被害や護岸の背後における利用障害を防止するための技術開発を行った。(国費 8,376千円)

(12) 多次元GISによる地理情報解析に関する研究

 国土交通省国土地理院においては,地震などの地盤災害の危険度評価等を例として,多次元GISによる地理情報解析技術に関する研究を行った。(国費 1,968千円)

(13) 火山性地殻変動のダイナミックモデルに関する研究

 国土交通省国土地理院においては,有珠山噴火,三宅島噴火,神津島周辺の火山性群発地震活動の発生に伴い,GPS連続観測等の地殻変動データを用いて,火山活動のメカニズムを解明し,マグマの動きを逐次追跡する手法について研究を行い,火山噴火予知連絡会等に報告した。(国費 2,643千円)

(14) GPS連続観測による上下地殻変動検出手法開発に関する研究

 国土交通省国土地理院においては,全国にほぼ均等に配備されている電子基準点等のGPS連続観測データを用いて,全国の上下方向の地殻変動検出手法の開発に関する研究を行った。(国費 3,125千円)

(15) 環境・防災時空間情報システム基盤の日中共同研究

 国土交通省国土地理院においては,環境・防災等に関連する時間情報について,時間的な推移が記述され,過去の状況を常時参照できる時空間情報の国際的な共有を実現するため,日本・中国における時空間情報システムの相互運用及び時空間情報の共有のための基盤的技術を開発した。(国費 34,295千円)

(16) 防災のための地理情報システムの応用に関する研究

 国土交通省国土地理院においては,地理情報システム(GIS)を災害状況把握や防災対策に活用するため,各種センサーから得られた地形データを用いて,地形の時系列変化を解析する研究を行った。(国費 1,141千円)

(17) 船舶における防災技術の研究

 国土交通省船舶技術研究所においては,深海モニター用小型ロボットシステムの技術開発等に関する研究,フェールセーフとしての衝突・座礁回避システムの研究を行った。(国費 71,715千円)

(18) 港湾・海岸及び空港における防災技術の研究

 国土交通省港湾技術研究所においては,津波・高潮等海の波に関する研究,耐波構造物に関する研究,漂砂に関する研究,沿岸の防災に関する研究等,港湾・海岸及び空港における災害を防止するための研究を行った。(国費 49,945千円)

(19) 知能化材料を用いたHQMS(ハイクオリティ・モニタリングシステム)の開発による港湾構造物の信頼性向上に関する研究

 国土交通省港湾技術研究所においては,厳しい海洋環境下に置かれる港湾構造物を対象に,耐久性に優れた知能化材料を用いた構造部材の変状のセンシング技術の開発及び情報の伝送システム,処理システムの検討を行い,港湾構造物の総合的モニタリングを構築する研究を行った。(国費 9,295千円)

(20) 波による地盤の液状化・変形メカニズムの解明とその対策・利用技術の確立に関する研究

 国土交通省港湾技術研究所においては,液状化を中心とした,波と構造物そして地盤の相互作用を解明する基礎的研究,それに基づいた構造物の設計法の確立,さらには地盤技術を利用した研究開発を行った。(国費 9,771千円)

(21) 気象・水象に関する研究

 気象庁においては,気象研究所を中心に気象業務に関する技術の基礎及びその応用に関する研究を推進し,大気中の温室効果ガス濃度の増加に伴う地球温暖化の予測技術の高度化を図った。この成果を基に,地球温暖化に伴う気温,降水量等の全球及び地域的な変動の予測を行い,「地球温暖化予測情報(第4巻)」として公表した。
(国費 1,107,368千円)

(22) 寒冷域における油防除手法及び有害液体物質に関する調査研究

 海上保安庁では,サハリン東方沖掘削基地での油の暴噴事故に備えて,「寒冷域における油防除手法の調査研究」を実施した(11年度から2ヵ年計画)。また,12年度から有害液体物質の防除手法の見直しを目的として「有害液体物質に関する調査研究」を実施している(3ヵ年計画)。(国費 5,401千円)


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