4−1 災害時におけるボランティア活動の環境整備



4 防災とボランティア


4−1 災害時におけるボランティア活動の環境整備


(1) 災害時におけるボランティアの位置付け

 我が国において,災害時におけるボランティア活動の重要性については,雲仙岳噴火災害や阪神・淡路大震災等で多くのボランティアが自主的な救助活動を展開し,災害対策を迅速かつ的確に展開する上でボランティア活動の果たす役割の重要性があらためて認識された。
 このような状況を背景として,国においては,ボランティアの活動環境の整備等のため,次の施策を講じている。
・ 平成7年7月改訂の「防災基本計画」で,「防災ボランティア活動の環境整備」及び「ボランティアの受入れ」に関する項目が設けられた。
・ 平成7年12月改正の「災害対策基本法」で,国及び地方公共団体が「ボランティアによる防災活動の環境の整備に関する事項」の実施に努めなければならないことが法律上明確に規定された。
・ 平成9年2月の閣議決定で,国内において災害時の社会奉仕活動に従事している者が不慮の死を遂げた場合,一定の条件を満たすときは内閣総理大臣が褒賞を行うこととした。
・ 平成10年12月施行の「特定非営利活動促進法」において,ボランティア団体等のNPO(民間非営利組織)が法人格(特定非営利活動法人)を取得する途が開かれることとなった。

(2) 各機関における取り組みの例

 国や地方公共団体においては,ボランティアの活動環境のより一層の整備を図るため,次の取り組みを行っている。
 [1] 国における取り組み
・ 大規模災害時の公共土木施設の被害情報の迅速な収集と施設管理者への連絡等をボランティアとして行う「防災エキスパート制度」
・ 土砂災害に関して行政への連絡等を行う「砂防ボランティア制度」と,土砂災害に関する危険箇所の点検,調査等を行う「斜面判定士制度」
・ 地震発生後,建築技術者による被災建築物の応急危険度判定を行う「被災建築物応急危険度判定制度」
・ 山地災害に関する情報収集活動等を行う「山地防災ヘルパー制度」
・ 郵便振替口座の預り金をボランティア団体等へ寄附することを総務大臣に委託する「災害ボランティア口座制度」
・ 全国の災害ボランティア団体の活動内容等と地方公共団体における災害ボランティアとの連携施策の内容に関する情報をデータベース化する「災害ボランティアデータバンク」
 [2] 地方公共団体における取り組み
・ 各地方公共団体においては,ボランティア活動に関し,地域防災計画での位置づけの明確化,受入れ窓口の整備,事前登録制度の整備,災害ボランティアとの連絡会議等の設置,講習会の実施等の措置を講じている。

(3) 今後の課題に向けた取り組み

 内閣府では,平成14年1月に東京都墨田区(両国)で開催した「防災とボランティアを考えるつどい」(参加者約3,500人)において,「自律したボランティアを考える〜こんなボランティアがほしかった!〜」をテーマにシンポジウムを行った。同シンポジウムにおいては,防災ボランティアの活動が発生直後に集中しがちなため,多くのボランティア団体が安定した運営に苦慮している現状を踏まえ,古くから活動を行っているボランティア団体の代表者等が出席し,自律したボランティア団体の運営のあり方について話し合われた。この中で,[1]ボランティアする側にも一定以上の質と条件が必要(現地で自活ができる,人間として当たり前の生活ができる),[2]相互の役割を理解しつつ行政の連携を密にすることが重要,[3]日本の社会における横並びの意識を克服することが重要等の指摘がなされた。
 こうした課題と併せて,ボランティア活動の一層の推進を図っていくためには,[1]ボランティア相互間の調整等の能力を有するコーディネーターの確保,[2]企業・団体等の支援活動との連携,[3]健康管理などの課題に関し,ボランティア活動に関わる関係者間での意見交換等を重ねながら,活動環境の整備に取り組むことが重要である。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.