6−2 火山災害対策の概要



6−2 火山災害対策の概要


(1) 火山観測研究体制の整備等

a 火山噴火予知計画
 我が国における総合的な火山観測研究体制の整備は,昭和49年からの第1次火山噴火予知計画(昭和48年文部省測地学審議会(現在の文部科学省科学技術・学術審議会測地学分科会)建議)以来,数次にわたる計画に基づき進められており,第3次噴火予知計画以降,全国の活火山を「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」,「活動的火山及び潜在的爆発活力を有する火山」 (図2−6−1) に分類している。
 平成10年8月には,平成11年度から15年度までの5年間にわたる計画として「第6次噴火予知計画」を関係大臣に建議した。また,平成12年10月から12月頃や13年4月頃に低周波地震が多発した富士山について,「当面の富士山の観測研究の強化について」をまとめ,これに基づき関係機関は観測研究の充実に努めている。
b 火山噴火予知連絡会
 火山噴火予知連絡会は,第1次火山噴火予知計画に基づき昭和49年6月に設置され,気象庁に事務局が置かれている。その主な任務は,関係諸機関の研究及び業務に関する成果及び情報の交換,火山噴火が起こった際における当該火山の噴火現象に関する総合判断,それらの火山情報の質の向上を図ることによる防災活動への寄与である。
 平成13年度においては,有珠山,三宅島についての火山活動の総合判断等のため,定例会3回を開催した。また,平成13年5月に富士山ワーキンググループを設置し,1707年の宝永噴火の活動経過の推定,及び設定した噴火モデルに基づき噴火の前兆となる地震活動や地殻変動の現れ方等の推定,提供可能な火山情報の検討を行っている。
c 火山情報の種類と伝達
 平成12年3月の有珠山噴火では噴火の2日前に「今後数日以内に噴火が発生する可能性が高い」旨の火山情報が気象庁から発表された。これを受けて,地元自治体による避難勧告・指示が発令され,噴火前に住民の避難が行われたため,人的被害が生じなかった。このように火山災害の軽減を図るには,火山噴火予知の確立とともに,火山現象の状況を正確かつ迅速に関係行政機関及び付近住民に伝達することが重要である。このため,気象庁では,火山の観測の成果等に基づき,3種類の火山情報を発表している (表2−6−2) 。火山情報は,速やかに関係省庁,関係地方公共団体等の関係機関や報道機関に伝達され,これらの機関を通じて,一般住民にも伝達されている (図2−6−2)
 また,気象庁は平成14年3月に火山監視・情報センターを発足させ,火山活動の監視及び情報発表体制の強化を図っている。

(図2−6−1)第6次火山噴火予知計画による対象火山の分類

(図2−6−1)第6次火山噴火予知計画による対象火山の分類
(表2−6−2)火山情報

(表2−6−2)火山情報
(図2−6−2)火山情報の流れ

(図2−6−2)火山情報の流れ
(2) 活動火山対策特別措置法等に基づく対策

a 対策の概要
 昭和47年以降,桜島の火山活動が活発になり,周辺地域の農作物等に大きな被害が生じたこと,また,48年に浅間山が11年ぶりに噴火したことなどを契機として,48年7月,住民等の生命・身体の安全並びに農林漁業の経営の安定を図ることを目的とする「活動火山周辺地域における避難施設等の整備等に関する法律」が制定された。その後同法は,昭和52年の有珠山噴火等を契機として全面的な見直しがなされ,翌年4月,現行の「活動火山対策特別措置法」に改められた。同法に基づき,平成12年までに桜島,阿蘇山,有珠山,伊豆大島,十勝岳及び雲仙岳周辺地域において,避難施設,防災営農施設,降灰防除施設の整備,降灰除去等の事業が実施されており,その概要は (図2−6−3) のとおりである。また,平成12年有珠山噴火災害に対する北海道や地元市町の復旧・復興対策の前提となる住民の安全対策を国として支援するため,13年12月26日に有珠山周辺地域を同法に基づく避難施設緊急整備地域に指定した。これを受け,14年4月18日に北海道が避難用道路の整備等を盛り込んだ避難施設緊急整備計画を策定し,施策が実施されることとなった (図2−6−4)
(注)有珠山は昭和54年にも避難施設緊急整備地域に指定されている。
b 桜島火山対策
 桜島は昭和30年以降噴火活動が恒常化しており,平成13年においては噴火回数133回,鹿児島地方気象台における年間降灰量は94g/m 2 を記録した。
 桜島及びその周辺地域は活動火山対策特別措置法に基づく避難施設緊急整備地域,降灰防除地域に指定されており,同法に基づき,これまでに避難施設緊急整備事業(昭和48〜57年度),防災営農施設整備事業等(昭和48年度〜),降灰除去事業(昭和53年度〜),降灰防除施設整備事業(昭和53年度〜)等の事業が実施されてきた。

(図2−6−3)活動火山対策特別措置法の体系

(図2−6−3)活動火山対策特別措置法の体系
(図2−6−4)有珠山に係る避難施設緊急整備地域等

(図2−6−4)有珠山に係る避難施設緊急整備地域等
(3) 火山ハザードマップの作成

 火山周辺住民等の防災意識の高揚,地元自治体による適切な防災計画の策定,適正な土地利用の誘導等のためには,各火山の活動様式や特徴的な災害要因を考慮した,いわゆるハザードマップ(火山噴火災害危険区域予測図)の整備を推進することが必要である。
 内閣府では平成4年に火山噴火災害危険区域予測図作成指針を作成し,地方公共団体に利用してもらうとともに,平成5〜7年度には火山噴火災害危険区域予測図緊急整備事業を行い,これに基づき地方公共団体により有珠山,三宅島等10火山でハザードマップが作成された。また,地方公共団体に対して,消防庁からの作成の要請や国土交通省による技術的支援・協力の実施などにより,全国のハザードマップの作成を推進してきたところである。
 なお,平成12年の有珠山噴火に際しては,ハザードマップが事前に住民に周知され,避難の必要性が理解されており,またハザードマップを参考に避難の範囲を決めて避難指示が出されたために,事前の円滑な住民避難につながった。
 平成14年3月現在,(1)a.に示す13の「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」のうち,海底火山である伊豆東部火山群を除く12火山全てのほか,岩手山等の「活動的火山及び潜在的爆発活力を有する火山」と分類される火山で作成されたものを合わせて24火山についてハザードマップが作成されている。

(4) 富士山における火山ハザードマップ作成の取り組み

 平成12年10月から12月にかけて,また平成13年4月末から5月にかけて,富士山の地下約15kmを震源として何らかのマグマ活動に関係があるとされる低周波地震が多発した。異常な地殻変動が観測されていないことなどから,ただちに噴火に結びつくものではないとされているが,このことにより富士山が活火山であることが再認識された。加えて平成12年の有珠山及び三宅島噴火災害では,観測に基づく火山情報の発表や火山ハザードマップの整備等事前の備えがあったため,人的被害がなかったことから,地元地方公共団体が富士山噴火を想定した防災訓練を行うなど,地元においても防災意識の高まりが見られている。
 また,仮に富士山が噴火した場合には,首都圏にまで被害が及ぶおそれがあることなどから,広域的な防災対策を確立することが必要である。そこで,平成13年7月に山梨,静岡,神奈川の各県,地元市町村,内閣府,国土交通省,消防庁,気象庁により「富士山ハザードマップ作成協議会」を設立し,富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップを平成14年度末を目途として作成している。
 作成にあたっては,学識経験者等からなる「富士山ハザードマップ検討委員会」において,噴火した場合に発生するおそれがある被害とそれが生ずる範囲,想定すべき噴火の様式や各機関が連携した効果的な防災対策等,これらを踏まえたハザードマップ作成等の検討を進めている。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.