5−2 風水害対策の概要



5−2 風水害対策の概要


(1) 土砂災害防止法の制定について

 土砂災害危険箇所については,各種の法律により砂防指定地等の区域指定が行われ,崩壊等防止工事の他,土砂災害を誘発・助長する行為の制限等の措置がとられているが,これらの区域指定は,私権の制限を伴うことなどから,必ずしも十分には進んでいない状況にある。
 このため,区域指定をさらに進めるとともに,土地利用計画の作成や土地利用規制等に関する制度の運用などにおける土砂災害への配慮の徹底,民間事業者に対する指導の徹底等により,土砂災害に対して安全な土地利用への誘導を図っていくことが重要である。
 土地利用規制に関し,河川審議会は,平成12年2月,土砂災害のおそれのある区域について,新規立地抑制や既存住宅の移転促進等を図る必要があるとした答申を行っている。また,これを受けて,「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成12年5月に制定され,平成13年4月より施行された。
 同法においては,土砂災害防止対策の推進を図るため,土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし,当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに,著しい土砂災害が発生するおそれがある土地の区域において一定の開発行為を制限するほか,建築物の構造規制,既存住宅の移転促進等を行うこととしている。

(2) 水防法の改正について

 依然として後を絶たない中小河川の洪水被害や,都市型水害の発生,さらには災害弱者の問題などに対処していくため,平成12年12月,河川審議会から水災防止対策の拡充,水災防止体制の整備,水災防止を支える施設面での対応等を柱とする「今後の水災防止の在り方について」が答申された。これを受けて,「水防法」が改正され,平成13年7月より施行された。その内容は次のとおりである。
a 洪水予報河川の拡充
 1.洪水予報を行う河川の指定を,国土交通大臣に加え,新たに都道府県知事も実施する。
 2.都道府県知事は,1.で指定した河川について洪水のおそれがあるときは,気象庁長官と共同して,その状況を水位または流量を示して水防管理者等に通知するとともに,必要に応じて報道機関の協力を求め,一般にも周知する。
b 浸水想定区域の公表など
 国土交通大臣または都道府県知事は,洪水予報河川について,洪水防御に関する計画の基本となる降雨により,河川がはん濫した場合に浸水が想定される区域を浸水想定区域として指定し,当該区域および浸水した場合に想定される水深を公表するとともに,関係市町村長に通知する。
c 円滑かつ迅速な避難の確保を図るための措置
 1.災害対策基本法に基づく市町村防災会議は,市町村地域防災計画において,浸水想定区域ごとに,洪水予報の伝達方法,避難場所などを定める。さらに,当該区域内に地下街などの地下施設がある場合には,利用者の円滑かつ迅速な避難の確保が図られるよう洪水予報の伝達方法を定める。
 2.市町村長は,市町村地域防災計画に定めた洪水予報の伝達方法,避難場所などについて住民に周知させるよう努める。
 3.市町村防災会議の協議会が設置されている場合には,同協議会が市町村相互間地域防災計画において,洪水予報の伝達方法,避難場所などを定める。

(3) 防災基本計画の修正について

 風水害による被害を未然に防止し,又は被害を軽減するために,次のとおり,各種の提言や対策が進められている。
a 洪水対策
 近年,大都市などにおいて時間雨量100mmを超えるような短時間の集中豪雨が増加してきており,排水しきれなかった水が地下街等へ浸水するなど新たな都市型水害が発生してきている。特に平成11年6月29日には博多駅周辺ビルの地階で,7月21日には東京都新宿区内の地下室で浸水により死者が発生している。
 また,平成12年9月11日から12日にかけて発生した東海地方の集中豪雨では,延べ約61万人に避難指示・勧告が出されるとともにライフライン等が被害を受け,都市機能が麻痺するという新たな都市型の水害が発生し,都市部における河川,下水道の整備に伴い,水害に対する危機意識が薄らいでいる中で,その脅威を再認識させられる結果となった。
 これらを受けて,平成11年に国土庁,運輸省,自治省,建設省(省庁名は当時)は地下空間における災害を未然に防止するとともに,被害の軽減を図るため,地下空間洪水対策研究会を設置し,「地下空間における緊急的な浸水対策の実施について」を発し,緊急的な対策として以下の事項を推進するよう提言を行った。
 1.地下空間での豪雨及び洪水に対する危険性の事前の周知,啓発
 2.洪水時における地下空間管理者への洪水情報等の的確かつ迅速な伝達
 3.避難体制の確立
 4.地下施設への流入防止等浸水被害軽減対策の促進
 また,建設省(当時)は都市地域における都市型水害を未然に防止するとともに被害の軽減を図るため,平成12年に都市型水害緊急検討委員会を設置し,検討を重ね,その結果として以下の内容について緊急提言を行った。
 1.水害対策の基礎調査,影響予測
 2.水災危機管理,被害軽減
 3.水災時の情報提供等
 4.河川,下水道等の整備
 5.治水システムの新たな展開,ステップアップ
 6.提言の推進に向けて
 さらに,水害による被害の軽減を図るため,新たに都道府県知事と気象庁長官が共同して洪水予報を行うこと,国土交通大臣及び都道府県知事による浸水想定区域の公表,浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難等の措置を講ずるなどを内容として,平成13年に水防法の一部を改正している。
b 土砂災害対策
 我が国は土砂災害の起こりやすい国土条件の下にあり,毎年,犠牲者を伴った土砂災害が発生している。このため,国においては,昭和63年3月,中央防災会議において「土砂災害対策推進要綱」を決定し,総合的,効率的な土砂災害対策を,関係省庁,地方自治体が一体となって推進している。
 また,平成5年8月豪雨災害等の教訓を踏まえ,平成6年4月,土砂災害対策推進連絡会議において,特に重点的に推進すべき事項について申し合わせを行い,ハード面の施策と併せソフト面の施策についても重点的に推進することとした。
 さらに,平成11年6月末から7月初めにかけて,広島県を中心に土砂災害により大きな被害が発生したことにかんがみ,中央防災会議局員会議において,[1]豪雨災害を軽減するための土地利用のあり方,[2]土砂災害等に対する地域の防災性向上,[3]効果的な事前周知方法,[4]情報収集伝達体制の強化について検討を行った。平成12年4月には中央防災会議において「豪雨災害対策のための情報提供の推進について」をとりまとめ,[1]気象情報等の収集体制の強化,[2]連絡手段の確保と情報の整理,[3]住民等との連携の強化,[4]早期避難実現のための措置の推進に係る提言をとりまとめた。
c 高潮災害対策
 我が国では,海岸保全施設の整備や気象情報の精度の向上等に積極的に取り組んできた結果,高潮による被害は減少する傾向にあり,近年においては大きな被害は発生していなかった (表2−5−3)

(表2−5−3)昭和以降の主な高潮災害

(表2−5−3)昭和以降の主な高潮災害
 しかしながら,平成11年9月24日,熊本県不知火町松合地区で台風第18号による高潮で12名の死者が発生するという事態が生じた。
 これに対し,農林水産省,運輸省(当時),建設省(当時)においては,被災地となった松合地区と類似する地形条件をもつ海岸等について緊急点検を実施した。また,国土庁(当時),農林水産省,水産庁,運輸省(当時),気象庁,建設省(当時),消防庁の高潮に関係する各省庁が連携し,平成11年10月に「高潮災害対策の強化に関する連絡会議」を,平成12年2月に「高潮防災情報等のあり方研究会」を開催し,高潮災害対策については従来のハード面の整備の一層の推進と併せてソフト面の対策の強化を推進することが重要であるとして,高潮広報パンフレットや「地域防災計画における高潮対策の強化マニュアル」等を作成・配布した。
d 防災基本計画の修正
 中央防災会議は,洪水対策,土砂災害対策,高潮対策の各提言や水防法の一部改正及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律の制定等を踏まえ,かつ近年の災害対策の進展に対応するため,平成13年度に,原子力災害対策と合わせ,風水害対策について,具体的かつ実践的な計画とするため,次のような内容の修正を行った。
 [1]洪水対策:地下空間を含めた浸水対策の実施,危険性の事前周知,情報伝達,避難体制等
 [2]土砂災害対策:情報収集・伝達体制,早期避難のための措置等
 [3]高潮対策:高潮防災施設の整備,ハザードマップの作成等


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