4−5 大都市震災対策の推進



4−5 大都市震災対策の推進


(1) 大都市震災対策の必要性

 我が国の大都市地域は,地震による揺れが大きい沖積平野に人口や諸機能が集積しているため,その直下又は周辺で大規模な地震が発生した場合には,極めて大きな被害が発生するおそれがある。それゆえ,大都市における大規模震災特有の課題に対応した震災対策を推進するとともに,特に,我が国の大都市直下を襲った戦後初めての大規模震災である阪神・淡路大震災のさまざまな教訓を活かしていく必要がある。
 そこで,平成10年6月に,学識経験者で構成される中央防災会議「大都市震災対策専門委員会」において,大都市における震災対策についての政府全体の取組みの前提となる基本的な考え方や検討の方向を示した提言が取りまとめられ,これを受けて,「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」等について見直しが行われている。

(2) 南関東地域における地震対策

 [1] 南関東地域直下の地震の切迫性
 昭和63年6月,中央防災会議「地震防災対策強化地域指定専門委員会」においては,大正12(1923)年の関東大地震タイプの海溝型巨大地震が相模トラフ沿いで発生する可能性は100年から200年先とされる一方で,南関東地域直下における地震の発生についてはある程度の切迫性を有していることが報告されている。さらに,平成4年8月の同専門委員会報告においては,特に重点的に地震防災対策を講じる必要のある震度6相当以上になる可能性のある地域の範囲 (図2−4−15) は1都6県にわたることが明らかにされている。
 また,この2つの報告により,直下の地震は,現状ではその予知は非常に難しいこと,想定される震源域を一つに特定することができないことなどの特徴を有していることが明らかにされている (表2−4−10)

(図2−4−15)南関東直下の地震により著しい被害を生じるおそれのある震度VI相当以上になると推定される地域の範囲(大綱の対象地域)

(図2−4−15)南関東直下の地震により著しい被害を生じるおそれのある震度VI相当以上になると推定される地域の範囲(大綱の対象地域)
(表2−4−10)南関東地域における地震発生の切迫性について

(表2−4−10)南関東地域における地震発生の切迫性について
 [2] 取組みの経緯
 南関東地域においては,地震の規模や震源地によっては,震災時に多数の人命,財産の損失を招く危険が大きく,さらに,都市機能の阻害等による二次的な影響が国民生活や経済の混乱となって被災地域を越えて著しく広域に波及するおそれがあるなど,都市型の地震災害が発生・拡大するおそれがある。
 このため,南関東地域における震災対策としては,防災基本計画(震災対策編)や防災業務計画,地域防災計画(震災対策編)等に基づき各般の対策を講じているほか,中央防災会議において,国,関係地方公共団体,関係指定公共機関等が一体となって緊密な連携のもとに講じるべき対策を決定し,その具体化及び推進を図っており,応急対策については,昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」を,応急対策以外の施策も含む広範な震災対策について,平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」をそれぞれ決定した。
 また,阪神・淡路大震災の教訓とその後の新たな施策の進展や,大都市震災対策専門委員会提言で指摘された関係機関の実践的連携の一層の推進を図るため,平成10年6月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」及び「南関東地域震災応急対策活動要領」をそれぞれ改訂した。
 [3] アクションプランの作成
 応急対策の具体化を推進するために,大規模震災時の医療と搬送について検討を行い,平成10年8月に中央防災会議主事会議において,「南関東地域の大規模震災時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」を行った。
 また,広域輸送,帰宅困難者対策についても,アクションプランの策定に向けた検討を進めている。
 [4] 東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備等
 平成13年6月,都市再生本部における都市再生プロジェクト(第一次決定)において,東京圏において大規模かつ広域的な災害が発生した際,広域的な救助活動や全国や世界からの物資等の支援の受け入れといった災害対策活動の核となる現地対策本部機能を確保するため,水上輸送等と連携した基幹的広域防災拠点を東京湾臨海部に整備することとされた。
 これを受け,平成13年7月に関係省庁及び関係都県市による「首都圏広域防災拠点整備協議会」が設置され,国及び地方公共団体が協力し,都道府県単独では対応不可能な,広域あるいは甚大な被害に対して的確に応急復旧活動を展開するための基幹的広域防災拠点の整備に向けた協議が進められている。
 協議会においては,同年8月,首都圏における基幹的広域防災拠点の整備の必要性・緊急性,他の防災活動拠点とのネットワーク化及び中期的な整備構想,運用に関する基本的な考え方,我が国の政治・経済の中枢である東京都心部等の連担する稠密な市街地に近接し陸・海・水・空の交通条件が整っている東京湾臨海部の優位性,基幹的広域防災拠点の機能・施設・整備・運用の概要等を内容とする「首都圏広域防災拠点整備基本構想」等をまとめ,さらに,同年12月には,「東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点に関する整備基本方針」を決定し,東京湾臨海部において整備する基幹的広域防災拠点について,東京都臨海部及び川崎市臨海部において適切な機能分担を行い相互に補完することにより,全体として一つの機能を発揮できるよう整備を行うことなどを決定した。
 今後,立川広域防災基地(首都直下地震等の発生で首相官邸,内閣府,防衛庁(中央指揮所)が被災により使用不能である場合等の災害対策本部予備施設)やさいたま広域防災拠点等,首都圏全体の広域防災拠点の役割分担,ネットワーク化等を検討するとともに,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点について,具体的整備地を含め整備基本計画として決定し,早期に整備に着手する予定となっている。

(図2−4−16)基幹的広域防災拠点整備のイメージ

(図2−4−16)基幹的広域防災拠点整備のイメージ
(3) 中部圏・近畿圏等における地震対策の検討

 [1] 「東南海,南海地震等に関する専門調査会」の設置
 プレート境界型地震である東南海,南海地震については,歴史的に見て100〜150年間隔でマグニチュード8程度の地震が発生しており,最近では昭和19年及び21年にそれぞれ発生していることから,今世紀前半にも極めて大規模な地震・津波被害が発生するおそれがあるとされているため,今のうちから事前の対策を着実に進めておくことが必要である。
 一方,平成10年に中央防災会議「大都市震災対策専門委員会」よりなされた提言を受けて,南関東地域については同年に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」等が中央防災会議で決定されていることから,中部圏,近畿圏についても,東南海,南海地震のほか,直下型の地震に対する対策も含め,速やかに防災対策の確立を図る必要がある。
 そこで,昨年6月28日に開催された中央防災会議において「東南海,南海地震等に関する専門調査会」の設置が決定され,現在同調査会において検討が進められている。
 [2] 専門調査会における検討事項等
 「東南海,南海地震等に関する専門調査会」においては,プレート境界型の東南海,南海地震のみならず,内陸で発生する地震に対する対策についても検討の対象とされ,それぞれについて予測した地震動や津波波高の分布等から,人的被害や建築物被害,津波による浸水に起因する被害等について,時間経過を考慮した被害予測が行われているところであり,これらの結果を踏まえて,中部圏,近畿圏及び東海から九州にかけての太平洋沿岸域等における地震防災対策のあり方について検討し,これらの地域における防災対策の確立を図ることとしている。
 [3] 「京阪神都市圏広域防災拠点整備検討委員会」の設置
 都市再生本部による都市再生プロジェクト(第一次決定)において「大阪圏においても基幹的広域防災拠点の必要性も含め,広域防災拠点の適正配置を検討する。」こととされたことから,内閣府と国土交通省近畿地方整備局を事務局として,有識者,関係省庁と関係府県市による「京阪神都市圏広域防災拠点整備検討委員会」を設置し,広域オペレーションの展開を踏まえた広域防災拠点の適正配置や基幹的広域防災拠点の必要性,防災拠点間の連携方策等について検討を進めている。
 今後,平成14年度中に,京阪神都市圏の防災安全性の向上を図るために,都市構造,広域防災拠点整備の現状,連携方策について整理し,被害想定を基にケーススタディを行うことにより,基幹的広域防災拠点の必要性,広域防災拠点の適正配置やネットワークの構築についての方針を内容とする「京阪神都市圏広域防災拠点整備基本構想(案)」(仮称)を作成することとしている。


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