4−2 地震に関する調査研究・観測の推進



4−2 地震に関する調査研究・観測の推進


(1) 地震に関する調査研究の推進体制

a 地震調査研究推進本部
 地震調査研究推進本部 (http://www.jishin.go.jp/)別ウインドウで開きます は,阪神・淡路大震災を契機に成立した地震防災対策特別措置法に基づいて文部科学省に設置され,地震に関する調査研究に関し,総合的かつ基本的な施策の立案,予算等の事務の調整等を行っており,本部の下に政策委員会及び地震調査委員会が設置されている。
 政策委員会においては,地震に関する調査観測計画の検討や地震調査研究の成果を社会に活かす方策の検討等を実施している。
 地震調査委員会においては,各地域の地震活動について分析・評価を毎月実施しているほか,被害地震が発生した場合等にも臨時に会合を開催している。また,地震防災対策に役立てるため,地震発生の可能性の長期的な評価と強震動の予測を組み合わせ,全国を概観した地震動予測地図を作成することとしており,その一環として長期確率評価手法をとりまとめ,海溝型地震や活断層の長期評価等を順次実施しているほか,強震動予測手法の中間報告をとりまとめた。平成13年度までに評価を行った活断層等は (表2−4−2) のとおりである。
b 地震予知連絡会
 地震予知連絡会 (http://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/ccephome.html)別ウインドウで開きます は,測地学審議会建議「地震予知の推進に関する計画の実施について」(第2次地震予知計画)に基づき,昭和44年4月に発足した(事務局:国土地理院)。同連絡会は,関係行政機関及び大学等と連携し,各種データや情報を交換し,これらに基づき地震予知についての総合的な検討を行っている。
c 科学技術・学術審議会測地学分科会
 我が国における地震予知に関する計画的研究は,昭和39年の地震予知計画以来,測地学審議会(現在の文部科学省科学技術・学術審議会測地学分科会)が建議する計画に基づき推進されてきた。
 平成10年8月には,第7次計画までの成果を引き継ぎさらに発展させるとともに,新たな考え方の導入を図るため,「地震予知のための新たな観測研究計画の推進について」を建議した。これには平成11年度から15年度までの5年間にわたる計画として,到達度の評価が可能な具体的目標を設定し,それに向かって段階的に計画を推進することとされている。

(表2−4−2)平成13年度までに地震調査研究推進本部地震調査委員会が評価した活断層等

(表2−4−2)平成13年度までに地震調査研究推進本部地震調査委員会が評価した活断層等
(2) 地震活動・地殻変動に関する観測体制等の整備

 地震活動・地殻変動に関する観測体制は,防災情報として緊急に情報を発表し,また調査研究や活動の評価等に資するために,各機関が目的に合わせて整備し,さらに関係機関とのデータ共有化,ネットワーク化等を図っている。
a 緊急時の防災情報発表のための地震観測
 気象庁が全国に整備している震度計に加え,地方公共団体からの震度データの提供を受け,高密度な震度観測網を整備するなど,観測体制の整備を図っている(詳細は 表2−4−3 のとおり)。

(表2−4−3)緊急時の防災情報発表のための地震及び震度観測

(表2−4−3)緊急時の防災情報発表のための地震及び震度観測
b 地震に関する基盤的調査観測体制の整備
 地震調査研究推進本部は,平成9年6月に「地震に関する基盤的調査観測網等の計画」を,平成13年8月に「地震に関する基盤的調査観測計画の見直しと重点的な調査観測体制の整備について」を決定し,関係省庁はこの計画に基づいて地震観測の体制整備を進めている (表2−4−4) 。整備にあたって,文部科学省は関係機関の調整を図っている。
c 活断層調査等
 地震調査研究推進本部地震調査委員会(文部科学省に設置)では,各地域での地震防災対策の基礎資料として役立てるため,各地域ごとに発生が予想される地震の揺れの大きさを示した地震動予測地図等の作成に着手しており,この中で発生しうる地震を評価するにあたって,我が国で約2,000あるといわれている活断層のうち,主要なものを98の活断層帯にまとめ,評価を行うこととしている。
 文部科学省は,都道府県及び政令指定都市に地震関係基礎調査交付金を交付し,全国の主要な98断層帯等を対象として,活断層の活動時期,想定される地震の規模等を明らかにするための調査や,全国の主要な堆積平野を対象として,強震動の評価に必要となる地下構造調査を実施しているところである。また,独立行政法人産業技術総合研究所では,今後百年間に地震が発生する可能性をできるだけ正確に見積もることを目的に,平成7年度から10箇年計画で,全国の主要な断層帯等について,必要に応じ他機関との連携の下,地質を調査するとともに,活断層及び古地震による地震発生予測の研究を行っている。これらの調査等により,平成13年度末現在,98断層帯のうち86断層帯については調査が終了し,5断層帯について調査を実施中である。
 国土地理院においては,平成7年度から,空中写真の判読等による地形学的手法により,都市周辺地域の活断層の位置を詳細に記した1/25,000「都市圏活断層図」を作成しており,平成13年度末までに89面の地図を作成した。

(表2−4−4)地震・地殻活動の詳細な把握,調査研究のための基盤的観測

(表2−4−4)地震・地殻活動の詳細な把握、調査研究のための基盤的観測
(3) 地震に関する情報の活用

a 気象庁が発表する地震情報
 気象庁が発表する震度の情報は,地震発生直後の防災関係機関における初動対応のきっかけとしての役割を果たし,震度3以上が観測された場合には,地震発生後2分程度で震度3以上の地域の震度を「震度速報」として発表している。
 震度1以上の地震が観測されると,震源の位置と深さ,震央地名,地震の規模(マグニチュード),各地の震度等を地震情報として発表する (図2−4−2)
b 地震発生直後のナウキャスト地震情報(地震発生直後の即時的情報)の実用化調査
 気象庁,消防庁及び内閣府は,平成9〜10年度に地震発生後に地中を伝播し最も早く到達するP波(縦波:地殻の中では6〜7km/s)と遅れて到達して主要な破壊現象を引き起こすS波(横波:地殻の中では3.5〜4km/s)の時間差を利用して,地震発生のみならず規模や予想される揺れの大きさをS波が到達するよりも早く把握し,地震災害の軽減に活用するための方策や伝達のあり方について検討した。この検討は,引き続き気象庁において行われており,平成13年度には,実用化に向けた情報発信の手法の確立のための調査を行った。

c 地方公共団体,指定公共機関の取組み
 地方公共団体等においても地震に関する観測情報を活用するシステムを導入しており,例えば横浜市においては,地震発生直後に市域内の地震動の状況をきめ細かく把握し,災害応急対策を支援する「高密度強震計ネットワークシステム」の運用を平成8年5月から開始している。その他,地方公共団体の中には,出火危険や延焼危険等の消防活動に必要な被害状況を事前に予測するシステムの開発を行っているところもある。指定公共機関においても,海岸線等に配置した地震計により必要な警報や情報を列車運行システムに発信するシステムの運用を図ったり(JRの早期地震検知警報システム:ユレダス),ガス供給区域内のセンサー等からの情報とあらかじめデータベース化された地盤や導管情報などから被害推定を行い,インターネットのホームページを通じて一般公開する(東京ガスの地震時警報・遮断システム:シグナル)など,様々な取組みがなされている。

(図2−4−2)地震発生直後の震度情報の活用

(図2−4−2)地震発生直後の震度情報の活用
(4) 地震被害想定

 大規模地震が発生した際に効果的な対応を図るためには,想定される被害に対して国や地方公共団体などがあらかじめ共通の認識を持って,予防・応急対策に備えることが重要である。
 内閣府では,関係地方公共団体における地震被害想定の作成を支援するため,平成9年8月に震源の位置や規模から地震動分布,建物被害,火災被害,人的被害,交通被害,上水道被害等を推計するための「地震被害想定支援マニュアル」を策定するとともに,これらのうち地震動分布,建物被害,人的被害についてパソコン上で自動的に推計することができる「地震被害想定支援ツール」を開発し,平成11年1月よりインターネット上で公開している (http://www.bousai.go.jp/) 。このツールは,地方公共団体の地域防災計画作成のための被害想定にも参考にされるなど,有効に活用されているところである。なお,地震被害早期評価システム(EES) (4−6参照) は,気象庁から配信される各地の震度を自動的に入力することにより建築物倒壊棟数,人的被害数を推計するものであるのに対し,本ツールは震源断層パラメータとマグニチュードを入力することにより上記被害量を推計するものである。
 消防庁においても,パソコンを用いて地震被害想定を行うことができる「簡易型地震被害想定システム」を開発し,都道府県等に配布した。このシステムでは,活断層データ,地震データ等を用いて,家屋倒壊数,出火件数,人的被害数の推計を行うことができる。
 これらのシステムは,平常時においては防災に関する各種計画の見直しや住民の防災意識の啓発等に役立てることが可能であり,地震直後においては,地震被害の規模や被害の大きい地域を推定する際の参考資料として活用することができるものである。
 また,南関東地域は,我が国の政治,経済,文化の中枢であり,この地域に大規模な地震が発生した場合には甚大な被害が予想される。このため国土庁(現内閣府)は,昭和56年度から63年度にかけて南関東地域直下型地震についての被害想定を行った。
 さらに,内閣府においては,発生の切迫性の高い東海地震や,発生した場合に甚大な被害が予想される東南海,南海地震及び中部圏,近畿圏の直下型地震について,それぞれの防災対策の強化を図るため,今後地震被害想定を行うこととしている。


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