次頁 ４ 震災対策
４−１ 地震の発生と被害状況
（１） 我が国における地震の概要
我が国は，海洋プレート（太平洋プレート，フィリピン海プレート）及び陸側のプレート（ユーラシアプレート，北米プレート）の境界部に位置し，日本周辺では太平洋プレートが日本海溝及び小笠原海溝で陸側のプレートとフィリピン海プレートの下に沈み込み，またフィリピン海プレートが南西諸島海溝，南海トラフとその延長である駿河トラフ及び相模トラフで陸側のプレートの下に沈み込んでいる （図２−４−１） 。このように複雑な地殻構造の上に位置する我が国は，世界的に見ても地震の発生の多い国であり，過去より頻繁に大きな被害を生じるような地震に見舞われてきた （表２−４−１） 。
（図２−４−１）日本列島とその周辺のプレート
（表２−４−１）わが国の主な被害地震（明治以降）
これまで大きな被害を及ぼしてきた地震を大別すると，以下のようになる。
一つは，マグニチュード８クラスの海溝型巨大地震であり，大きな被害をもたらした関東大地震（大正12（1923）年）や南海地震（昭和21（1946）年）等が代表とされる。海溝型地震は，沈み込みに伴うプレートの変形により蓄積された巨大な歪エネルギーが，変形が限界に達し，元に戻ろうとして急激に運動する際に発生する。このタイプの地震は，断層面が２つのプレートの境界面上にあるのが特徴であり，場所によって異なるが，数百年程度の間隔で繰り返し発生すると言われている。また海域の比較的震源の深さが浅い地震であることから津波を伴うことが多い。近い将来に発生が予想されている東海地震も，このタイプの地震と考えられている。
次に，平成５（1993）年釧路沖地震や平成13（2001）年芸予地震のように，海洋プレートの内部で発生するタイプの地震がある。南関東地域においては，陸側のプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込み，さらにその下に太平洋プレートが沈み込むという複雑な地殻構造となっているため，相模トラフ沿いの巨大地震の発生に先立ち，マグニチュード７程度の直下の地震が数回発生すると考えられており，過去にも安政江戸地震（1855年）などこのタイプの被害地震を多く経験している。
さらに，プレートの沈み込み等の影響を受けて内陸のプレートが歪むことなどにより歪エネルギーが蓄積され，地下の断層の破壊で解放されることにより発生するタイプの地震がある。濃尾地震（明治24（1891）年），福井地震（昭和23（1948）年），平成７（1995）年兵庫県南部地震，平成12（2000）年鳥取県西部地震等はこのタイプの地震である。最近の地質時代以降（約200万年前以降）に数千年から数万年程度の発生間隔で繰り返し活動していることから，将来も活動すると推定されている断層を活断層と呼んでいる。
その他，我が国は多くの活動的な火山を有することから，火山活動に伴う地震も過去に多く発生しており，例えば平成12年３月31日の有珠山噴火においては，噴火に前後して山麓で最大震度５弱となる地震が３回発生した。
（２） 津波の発生と災害の状況
地震により海底に急激な上下変動や地形変化が発生し，海面上に波動を生ずるのが津波である。津波の規模は，通常，地震の規模（マグニチュード）に比例するが，震源の深さ，地震の起こり方等にも影響される。
津波は発生した場所から時速数百kmもの速さで伝播し，海岸に到達するまでに，地形による増幅効果等により何倍もの高さとなる。特に，津波が湾内に入る場合，湾奥では更に高くなる。また，第１波よりも後続の波の方が高くなることがある。
津波により大きな被害を生じたものとして，明治三陸地震津波（明治29年），昭和三陸地震津波（昭和８年），東南海地震（昭和19年），南海地震（昭和21年），チリ地震津波（昭和35年），1968年十勝沖地震（昭和43年），昭和58（1983）年日本海中部地震，平成５（1993）年北海道南西沖地震が挙げられる （表２−４−１参照） 。明治三陸津波の死者・行方不明者約22,000人及び昭和三陸地震津波の約3,000人，チリ地震津波の139人はすべて津波によるものであり，またこの20年内に発生した昭和58（1983）年日本海中部地震の104人，平成５（1993）年北海道南西沖地震の230人の内，大部分が津波によるものである。
（表２−４−１）わが国の主な被害地震（明治以降）
（３） 平成13年度の主な被害地震
平成13年度に発生した地震のうち被害が生じた主なものは次のとおりである。
ａ 静岡県中部の地震
平成13年４月３日，静岡県中部の深さ30kmを震源とするM5.1の地震が発生し，静岡県静岡市で震度５強を観測した他，静岡県内の一部で震度５弱を観測した。この地震により負傷者８名，住家一部損壊80棟等の被害が発生した。
ｂ 青森県東方沖の地震
平成13年８月14日，青森県東方沖の深さ38kmを震源とするM6.2の地震が発生し，青森県名川町，南郷村，倉石村等，岩手県二戸市で震度４を観測した。この地震により負傷者１名の被害が発生した。
ｃ 京都府南部の地震
平成13年８月25日，京都府南部の深さ８kmを震源とするM5.1の地震が発生し，京都府京都市，亀岡市，八幡市等，大阪府箕面市，島本町，滋賀県大津市で震度４を観測した。この地震により負傷者１名，住家の一部損壊１棟の被害が発生した。
ｄ 岩手県内陸南部の地震
平成13年12月２日，岩手県内陸南部の深さ122kmを震源とするM6.4の地震が発生し，宮城県古川市，涌谷町で震度５弱を観測した他，東北地方の広い範囲で震度４を観測した。この地震により住家の一部損壊２棟，青森県内で一時2,117戸が停電する等の被害が発生した。
ｅ 奄美大島近海の地震
平成13年12月９日奄美大島近海の深さ36kmを震源とするM5.8の地震が発生し，鹿児島県住用村（奄美大島）で震度５強を観測した他，奄美大島島内の一部で震度５弱を観測した。この地震により住家の一部損壊が１棟，一時断水146世帯等の被害が発生した。
ｆ 茨城県沖の地震
平成14年２月12日茨城県沖の深さ48kmを震源とするM5.5の地震が発生し，茨城県桂村，金砂郷町で震度５弱を観測した他，茨城県，福島県，栃木県の一部で震度４を観測した。この地震により負傷者１名等の被害が発生した。