2−2 災害予防の強化



2−2 災害予防の強化


 災害の発生を未然に防止し,被害を軽減するため,防災に関する施設・設備の整備,国民一人ひとりの防災意識の高揚のための施策の実施,防災訓練の実施等次のような災害予防の強化を図っている。

(1) 災害に強い国づくり,まちづくり

 地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土とまちの形成を目指して国土保全,まちづくりを推進するとともに,主要交通・通信機能の強化,構造物・施設,ライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。
 また,災害発生時に災害応急活動を円滑かつ効果的に実施するための施設・設備の整備等各般の施策を実施している。
a 災害に強いまちづくり
 都市再生本部においては,都市再生プロジェクト第3次決定(平成13年12月)として,地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地について,特に大火の可能性が高い危険な市街地を対象に重点整備し,今後10年間で最低限の安全性を確保することとし,[1]未整備都市計画道路やこれに連なる公園の整備等による,密集市街地全体を貫く緑のオープンスペース機能を持つ連続した骨格軸の形成,[2]特に大火の可能性の高い危険な市街地(東京,大阪各約2,000ha,全国で約8,000ha)を重点地区として,空地の確保や建築物の耐震不燃化等の整備を行うこととした。
 また,「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」(平成9年5月制定)に基づき,老朽化した木造の建築物が密集し,かつ十分な公共施設がないため,大規模災害時に市街地の延焼等が予想される防災上危険な密集市街地の整備の促進を図っている。
 さらに,災害に強い安全なまちづくりを推進するため,防災システムのIT化などの基盤整備及び公共施設等の耐震化を重点的に推進することとし,新たに創設した「防災対策事業」や,住民の防災活動の活性化,情報通信体制の強化等に要する経費に対する地方財政措置により地方公共団体を支援し,防災対策の強化を図っている。
b 災害に強い農山漁村づくり
 緊急車両の通行や避難路の確保等のための農道・林道,災害時の避難地や災害対策拠点として活用するための農漁村公園緑地,緊急物資輸送に資する漁港の耐震強化岸壁,災害情報の伝達を行うための施設の整備等,災害対策上必要な施設の整備を緊急に実施している。
c 地域の防災拠点の整備
 災害時の応急活動の中心や地域住民等の緊急避難場所になる防災拠点として,平常時は普及啓発活動に利用される防災センターや,水防資材の備蓄や水防活動の指揮所となる河川防災ステーションの整備が進められている。
 災害時に避難場所となる学校については,改築,耐震補強や,備蓄倉庫,耐震性貯水槽等の整備が図られている。官庁施設についても耐震安全性の向上や備蓄機能の強化等を実施している。病院については,災害時の患者受入機能(ヘリポート等),水,医薬品,医療材料の備蓄機能等を持ち耐震機能が強化された災害拠点病院の整備が推進されている。
 さらに,災害時には応急対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関するPR,教育,訓練等の場として機能する地域防災拠点施設の整備を推進している。
 また,災害に強いまちづくりの一環として,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能を併せ持つ公園の整備を推進している。
 この他,港湾における緊急物資輸送用の耐震強化岸壁や避難緑地帯と一体となった臨海部防災拠点の整備,空港における液状化対策等を行っている。
d 広域防災基地の整備
(a) 立川広域防災基地
 広域的な災害が発生した場合においては情報の収集・伝達,救難・救助等の災害応急対策の拠点となり,平常時においては地域の行政サービスの充実,国民に対する防災知識の普及等を図るため,東京都立川市に立川広域防災基地が整備されており,災害対策本部予備施設のほか,警察防災,海上防災,消防防災,自衛隊航空及び医療に関係する施設が整備されている。
(b) 横浜海上防災基地
 原油,LPG,LNG等の危険物を積載する船舶の事故や,南関東直下の地震等により沿岸部が大きな被害を受けた場合に速やかに救援活動を実施するため,横浜市の「みなとみらい21」の新港地区に横浜海上防災基地が整備されている。
(c) 東京湾臨海部等における基幹的広域防災拠点
 都市再生本部における都市再生プロジェクト第1次決定(平成13年6月)では,都県市単独では対応不可能な,地震・テロ等による広域あるいは甚大な被害に対応するため,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を行うこととした(詳細は 第2章4参照 )。

(2) 防災に関する普及・啓発

 災害から自らの身を守るためには,平常時から,一人ひとりが防災に関する意識を高め,防災に関する正しい知識や技術を身につけることが重要である。
a 「防災週間」等各種行事を通じての普及・啓発への取組み
 昭和57年5月11日の閣議了解で「防災の日」(9月1日)及び「防災週間」(8月30日〜9月5日)を定め,毎年この期間を中心に各種行事や広報活動等を実施している。
 この一環として,平成13年度においては横浜市で「防災フェア2001」(内閣府・横浜市・防災週間推進協議会共催)を実施し,屋内及び屋外における,防災関係機関による各種防災器具の展示,実演に加え,市民による防災への取組みに関するパネルディスカッション,徒歩及び救難船による避難を実演した「体験ウォーク」等の行事を展開した。
 このほか,関係各機関や地方公共団体においては,[1]各種催物,展示会の開催,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報,[3]標語,図画の募集等を展開している。
 また,これ以外にも,「全国火災予防運動」(3月1日〜及び11月9日〜),「水防月間」(5月又は6月),「山地災害防止キャンペーン」(5月20日〜6月30日),「土砂災害防止月間」(6月),「がけ崩れ防災週間」(6月1日〜),「危険物安全週間」(6月第2週),「道路防災週間」(8月25日〜),「建築物防災週間」(3月1日〜及び8月30日〜),「救急医療週間」(9月5日〜),「雪崩防災週間」(12月1日〜)等においてシンポジウム,講演会,講習会等を実施し,防災知識の普及と防災意識の高揚を図っている。
b 「防災とボランティア週間」における取組み
 阪神・淡路大震災においては,各種のボランティアによる自主的な救助活動が展開され,ボランティア活動が果たす役割の重要性が改めて認識されたところである。
 こうしたことから,政府は「防災とボランティアの日」,「防災とボランティア週間」において,災害時におけるボランティア活動及び自主的な防災活動の普及のため講演会等の行事を実施することとしている(国及び地方公共団体の取組みについては 第3章を参照 )。
c 学校における防災教育
 災害時に自ら適切な行動をとれるようにするためには,学校における防災教育をより一層充実し,子供の時期から正しい防災知識をかん養していくことが重要である。
 文部科学省においては,学校における防災教育の充実を図るため,各学校における安全指導の進め方や避難訓練の実施を含む指導計画の作成などに関する教師用参考資料の作成・配布,地震等による自然災害に対する備えと安全のための適切な行動がとれるよう,授業などにおいて活用する防災教育教材の作成・配布,地震による災害の危険と安全確保の方法など防災教育に関する研修会の開催(独立行政法人教員研修センターで実施)などの施策を講じている。
 さらに,平成14年度から完全実施される新学習指導要領では,小学校の社会(6年生)の「国民生活には地方公共団体や国の働きが反映していること」の学習の一環として,国民生活の安定のため,地方公共団体が住民の願いを取り入れ,国と協力している取組みとして,災害復旧等の具体的事例を取り上げること,また中学校の保健体育においては,「自然災害や交通事故などによる傷害は,人的要因や環境要因などがかかわって発生すること」とし,日頃からの安全への備えや自然災害の際の安全確保について指導することとした。また,今回創設された小学校の「総合的な学習の時間」の実施においては,地域の特色に応じ,横断的・総合的な課題を取り上げることとされており,防災をテーマとして採用している先行実施校もみられる。

(3) 自主的防災意識の育成

 大規模な災害が発生した場合には,地域住民が防災関係機関と一体となって初期消火,避難誘導,被災者の救出・救護等の自主的な防災活動を行うことが,被害の拡大を防ぎ円滑な災害応急対策を実施する上で極めて重要であり,このような観点から,地域住民の連帯意識に基づく自主防災組織が結成されている。
 自主防災組織については,災害応急活動のほか,平常時から危険箇所の点検・周知,災害履歴の伝承,防災訓練等を通じて,地域全体としての防災意識の向上,知識の普及面でも更に重要な役割を担っていくことが期待されている(自主防災組織については 第3章を参照 )。

(4) 防災訓練

 大規模地震の発災時等には,政府,地方公共団体をはじめとする防災関係機関,地域住民等が緊密な連携のもと,各種の防災活動を迅速かつ適切に実施する必要がある。特に,災害対策本部等の設置など迅速な初動体制の確立と情報の収集,的確な災害応急対応が人命救助と被害の軽減,その後の復旧の鍵を握っている。このため,各防災関係機関において職員の非常参集,災害情報の収集連絡等の体制が整備されているが,災害は多くの場合,その発生を予測できず,しかも防災に係わる関係機関は多岐にわたっているので,防災体制を実効性のあるものとするためには,常日頃から実践的な防災訓練が不可欠である。
 政府が行っている総合防災訓練は,訓練の反復を通じて,閣僚をはじめ,国,地方公共団体,指定公共機関等の多くの関係職員に防災業務を習得させ,政府,関係機関全体の災害対応力を高める目的で行われている。
 各地域で行われる防災訓練については,災害の教訓を踏まえつつ,災害事象・社会構造の変化,技術革新等の新たな状況に対応できるよう訓練内容の充実に努める必要がある。防災訓練の実施に当たっては,テレビ,広報誌等を通じた事前広報を行い,地域住民,自主防災組織,ボランティア等の参加を積極的に進め,それぞれの役割を確認しつつ,地域全体の災害対応力を高めることが重要である。
a 防災の日における政府の総合防災訓練
 毎年9月1日の「防災の日」に,「総合防災訓練大綱」(中央防災会議決定)に基づき,南関東地域直下の地震及び東海地震に係る大規模な総合防災訓練を内閣,関係省庁はじめ関係地方公共団体などが連携を図りつつ実施することとしている。
 平成13年度における訓練の概要は以下のとおり。
(a) 東海地震対応訓練
 予知対応型訓練としては,東海地震を想定して,静岡県総合防災訓練と連携し,地震防災対策強化地域判定会の開催,地震予知情報の報告,警戒宣言の発表等の訓練を行った。また,松下内閣府副大臣を静岡県警戒本部(静岡県庁)に派遣した。さらに,静岡県総合防災訓練会場(静岡県熱海市)には,内閣総理大臣(代理:小坂総務副大臣)を団長とし,関係省庁からなる政府調査団を派遣したほか,政府・静岡県合同現地対策会議(熱海市)を開催する訓練を行った。
(b) 南関東地域直下の地震対応訓練
 発災対応型訓練としては,南関東地域直下の地震を想定して,七都県市合同防災訓練と連携し,緊急参集チーム会議,及び関係閣僚会議の開催,災害緊急事態の布告,小泉内閣総理大臣を本部長とし,全閣僚等を本部員とする緊急災害対策本部の設置・運営訓練,ヘリコプター映像伝送システムや中央防災無線網を活用したテレビ会議等を通じての情報収集・伝達訓練を行い,災害応急対策に関する基本方針等を決定した。
 また,小泉内閣総理大臣を団長とする政府調査団を七都県市合同防災訓練会場(神奈川県川崎市)に派遣したほか,阪上内閣府大臣政務官を長とする緊急災害現地対策本部を設置し,現地対策本部会議を開催するなどの訓練を行った。
b 防災の日以外における政府の総合防災訓練
(a) 大規模水害対処訓練
 政府は,平成13年5月11日,関東北部で大規模な水害が発生したという想定で,内閣危機管理監を訓練統轄官とし,内閣官房,内閣府をはじめ関係省庁の職員約150名の参加のもと,海上自衛隊幹部学校において大規模水害対処訓練を実施した。
 訓練は,事前に訓練シナリオを訓練参加者には知らせず,時間を追って訓練の進行を統括するグループから与えられる状況に従い,参加者自身が情報収集,状況判断,対応策等の検討を行うというロールプレイング方式の図上訓練の手法により実施した。
(b) 原子力防災訓練
 平成11年9月の東海村ウラン加工施設における臨界事故を教訓に制定された原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)の定めるところにより,原子力防災訓練が,平成13年10月27日,北海道電力(株)泊発電所(北海道泊村)を対象施設として実施された。
 本訓練では,小泉内閣総理大臣をはじめとする関係閣僚が参加し,国の原子力災害対策本部(本部長:小泉内閣総理大臣)及び現地対策本部を設置する等の訓練が行われた。
(c) 東海地震対応図上訓練
 政府は,平成14年1月11日,東海地震に係る警戒宣言発表から地震発生直後までを想定し,内閣府政策統括官(防災担当)を訓練統轄官とし,内閣官房,内閣府をはじめ関係省庁の職員約100名の参加のもと,内閣府立川災害対策本部予備施設において東海地震対応図上訓練を実施した。
 訓練は,警戒宣言発表後における政府の対応を中心にロールプレイング方式により実施し,村井防災担当大臣及び内閣危機管理監が訓練状況を視察した。
c 地方公共団体等における防災訓練
 大規模地震に係る訓練をはじめ,台風等風水害,原子力災害,火山災害など地域の実情に即して各種の災害を想定した防災訓練が実施され,平成13年度においては,47都道府県,1,888市町村,約5万7千9百団体,455万人が参加して地震災害等を想定した総合防災訓練が計画・実施された(平成13年8月28日現在消防庁調べ)。
 また,都道府県の区域を越えたブロック単位の広域防災訓練にも積極的に取り組まれており,広域的な応援体制や防災関係機関相互の連携協力体制の強化を図るとともに,地域住民の防災意識の高揚,連帯意識を醸成することができた。
(a) 七都県市合同防災訓練
 首都圏にあって政治・経済などの中枢機能が集積し,各般において広域に関わり合う七都県市(埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,横浜市,川崎市,千葉市)の地域が,国,防災関係機関等と連携し,一体となった訓練を実施している。
 平成13年9月1日,22回目となる本訓練は,幹事県の川崎市会場をはじめ,各地域において南関東地域での大地震及び東海地震を想定し,「七都県市災害時相互応援に関する協定」等に基づく広域的な協力応援体制を生かした訓練を実施した。
(b) 東京多摩直下での大規模地震に係る訓練
 平成13年9月1日,東京都は東京多摩直下での大規模地震を想定した東京都総合防災訓練を実施した。これに対し政府は,小泉内閣総理大臣を団長とする政府調査団を現地訓練会場(東京都調布市)に派遣した。
 訓練では,警察,消防,海上保安庁に加え,陸・海・空の統合運用の自衛隊を含めた大規模かつ総合的な広域支援が行われた。
(c) 近畿府県合同防災訓練
 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ,平成7年度から実施されている近畿府県合同防災訓練が,平成13年10月30日と31日の両日,「近畿2府7県(大阪府,京都府,兵庫県,奈良県,和歌山県,福井県,三重県,徳島県及び滋賀県)震災時等の相互応援に関する協定」等に基づき,三重県名張市並びに上野市会場を中心に実施された。この訓練に合わせて実施された,緊急消防援助隊中部,近畿ブロック合同訓練においては,自己完結型野営訓練や大規模地震災害を想定した崩壊建物救出救助訓練等が行なわれた。


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