3−1 芸予地震


3 平成13年に発生した主要な災害とその対策


 平成13年は,平成12年の有珠山噴火,三宅島噴火及び新島・神津島近海地震,鳥取県西部地震等のように大規模な火山噴火や地震が立て続けに発生することはなかったが,3月には芸予地震,7月から9月にかけては梅雨前線や台風等による風水害が発生し,人的被害・住家等への被害をもたらした。特に,8月には台風第11号,9月には台風第15号という二つの台風が日本へ上陸し,多大な被害をもたらした。
 台風第11号は,日本に上陸した台風としては2年ぶりのものであった。台風の動きが遅く,西日本から北日本にかけての広い範囲で,長時間にわたり強風が吹き,大雨が降ったため,多数の死者,負傷者,建物の浸水の被害があり,交通機関の運休や欠航が相次いだ。台風第15号は,神奈川県鎌倉市付近に上陸し,東北地方から紀伊半島にかけての太平洋側を中心に広い範囲で,激しい降雨をもたらした。この台風も動きが遅かったため,死者,行方不明者,建物の浸水被害をもたらし,交通機関の運休や欠航が相次いだ。
 平成12年に発生した二つの火山噴火災害のうち,有珠山については,気象庁の火山噴火予知連絡会が「マグマの活動は終息した」と判断したこと,避難指示対象世帯が解消されたこと,「タウンミーティングイン北海道(虻田町)」の開催をはじめ復興に向けた機運が高まってきたこと等をうけ,平成13年6月28日非常災害対策本部を廃止し,復旧復興に向けた取り組みを政府として一層支援するため,村井防災担当大臣を議長とし,各省庁等で構成される「有珠山噴火災害復旧・復興対策会議」を設置した。三宅島については,火山の活動は全体として低下途上にあり,大きな規模の噴火の可能性は低いと考えられるが,現在も噴出が続いている大量の火山ガスに対する警戒が引き続き必要な状態である。また,山腹に堆積した大量の火山灰のため,雨による泥流にも注意が必要であり,避難指示解除の目処は立っていない。
 地震災害については,平成13年は芸予地震を除いては大規模な被害が発生するような災害はなかったが,平時においても関係機関が連携及び協力し,重大な被害を生じさせないための事前対策,災害発生時における危機管理対策を一層進めていくことが重要である。

3−1 芸予地震


(1) 災害の状況

 平成13年3月24日15時27分,安芸灘の深さ46kmでM6.7の地震が発生し,広島県河内町,大崎町,熊野町で震度6弱を観測したほか,広島,愛媛,山口県の一部で震度5強を観測した。今回の地震は,中国・四国地方に沈み込むフィリピン海プレート内部の破壊による地震であった。余震活動は,3月26日に発生したM5.0の最大余震(最大震度5強)を含み,3月末までにM4.0以上の余震が6回発生したが,徐々に減衰していった。気象庁は,この地震を「平成13年(2001年)芸予地震」と命名した。
 この地震により,広島県呉市で1名,愛媛県北条市で1名が亡くなったほか,中国・四国各県に被害が発生し,負傷者計287名,全壊計69棟,半壊計749棟,住家一部破損48,602棟となった(13年11月14日現在)。学校等の文教施設にも被害が発生し,壁や窓ガラス等の破損が多くみられたほか,内装材の落下や校舎の柱等に大きな亀裂が入ったところもあった。また,237世帯568名に避難勧告が出されるとともに,多数の住民が自主避難を行った。臨海部では地盤の液状化現象がみられ,広島港等に被害をもたらした。
 電力については,広島県を中心に中国電力管内で約48,000戸,愛媛県を中心に四国電力管内で約8,000戸が停電となった。上水道は,広島県内で,離島も含め40,269戸が断水したほか,山口県で160戸,島根県で130戸,愛媛県で379戸が断水した。下水道も広島県等で9か所が被災した。
 道路については,中国縦貫自動車道等で点検のため一時通行止めとなったほか,国道,県道でも落石,土砂崩落等により各地で通行止めとなった。また,広島県を中心にがけ崩れをはじめとした土砂災害が53件発生した。港湾に関しては,広島港,呉港及び岩国港他で被害が発生した。鉄道については,山陽新幹線で運休となったのをはじめ,中国,四国地方の各線で点検のため運休となった。
 農林水産業関係では,農地493か所,農業用施設505か所,林地67か所,林道138か所,漁港施設36か所,水産関係施設等に45億円の被害が発生した。

(2) 国等の対応状況

 地震発生後,直ちに官邸対策室を設置するとともに,内閣総理大臣臨時代理の福田内閣官房長官をはじめ,関係省庁の局長級職員が官邸に集まり,3月24日16時40分及び17時40分に緊急参集チーム会議を開催した。このほか,ロシア訪問中の森内閣総理大臣にも連絡をとり,適切な指示を受けるなど,政府は迅速かつ的確な初動対応に努めた。
 また,今回の災害について「平成13年3月24日の地震による災害(芸予地震)」として局地激甚災害の指定を行った (表1−3−2)(その1)   (その2)   (その3)
 3月24日18時00分より,内閣府において災害対策関係省庁連絡会議を開催し,[1]関係機関は今後とも迅速かつ的確に情報の収集・伝達を行い,関係地方公共団体を含め,緊密な連携を図り,警戒などに万全を期すること,[2]事態の推移に応じ必要があれば,災害対策関係省庁連絡会議を開催する等,関係省庁の連携を密にしていくこと,等を確認した。また,同日に内閣府情報先遣チームを広島県に派遣するとともに,翌25日,坂井内閣府副大臣を被害状況の調査のため広島県に派遣した。さらに,3月29日には,山崎内閣府大臣政務官を団長とし,ほか15省庁37名からなる政府調査団を広島県及び愛媛県に派遣した。
 内閣府は,3月24日,被災者生活再建支援法に基づく被災者生活再建支援金支給制度を広島県呉市に適用した。
 警察庁及び関係管区警察局では,関係機関との連絡調整に当たるとともに,3月24日に警視庁等の広域緊急援助隊を待機(鳥取・島根・岡山県警察にあっては広島県への出動を指示した後,待機に切替)させたほか,兵庫県警察等のヘリコプターを広島県の被災情報収集のため広域派遣した。広島県警察等関係府県警察では,被害情報の収集,警戒活動,交通規制等に当たった。
 防衛庁は,航空機による航空偵察,関係地方公共団体への連絡要員の派遣等を行うとともに,3月24日に広島県知事より,3月25日には山口県知事より自衛隊の災害派遣要請を受け,3月24日から27日までに給水支援,救援物資(雨漏り防止のためのシート)の貸与等を実施した(人員派遣:延べ約530名,船舶派遣:延べ10隻,航空機派遣:延べ約40機)。
 総務省では,4月12日に広島県内13団体,愛媛県内1団体に対し,6月に定例交付すべき普通交付税の一部6,893百万円を繰り上げて交付した。
 郵政事業庁は,郵便物の料金免除等を行うとともに,為替貯金・簡易保険の非常取扱いを実施した。
 NTTは,災害用伝言ダイヤルの運用を行った。
 消防庁は,3月24日,緊急消防援助隊に出動を要請し,緊急消防援助隊航空部隊を含む11機の消防防災ヘリコプターが出動して情報収集を行ったほか,緊急消防援助隊中国ブロック地上部隊が待機した。翌25日,消防庁先遣チームを現地に派遣した。
 文部科学省では,教育委員会等の関係機関から被害情報を収集するとともに,適切な対応をとるよう指示した。また,地震調査研究推進本部の地震調査委員会が,臨時会(3月25日,3月26日)及び定例会(4月11日)を開催し,地震活動の現状に関して評価し,その結果を公表した。さらに,この地震による都市地震災害に関する総合的調査研究を実施するための科学研究費補助金を交付した。
 厚生労働省は,3月24日,広島県広島市,呉市,三原市,下蒲刈町,蒲刈町,宮島町,河内町,川尻町,豊浜町,豊町,大崎町,東野町,木江町,愛媛県今治市に対し,災害救助法に基づき,避難所の設置,食糧,飲料水の支給,災害にかかった住宅の応急修理等を支援した。また広島労働局に緊急労働相談窓口を設置するとともに,呉労働基準監督署及び呉公共職業安定所に現地相談窓口を設置した。
 経済産業省は,電気事業者及びガス事業者から申請のあった料金の支払い期限の延長等の災害特別措置を認可した。また政府系中小企業金融機関による災害復旧貸付を適用するとともに,中小企業者の返済猶予等既往債務の条件変更等につき,実状に応じて対応するよう政府系中小企業金融機関等を指導した。
 国土交通省は,3月24日,災害用ヘリコプターを現地に派遣するとともに,今村大臣政務官を25日広島県へ,国土交通省調査団等を地震発生後ただちに現地へ派遣し,現地調査や被害状況等の把握を実施した。また電子基準点40点による24時間解析を6時間に短縮して実施した。また,呉市の住宅の密集した急傾斜地の住宅擁壁崩壊に対して,災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業に特例措置を設け,これまでに18か所を採択した。
 海上保安庁は,周辺海域に航行警報を発し,付近航行船舶に対し注意喚起を行った。また,情報収集や緊急時の支援のため,巡視船艇を延べ72隻,航空機を延べ11機現地に派遣した(3月24日,26日)。
 気象庁は,地震発生直後から震度速報や地震情報を適宜発表して,余震等への注意を呼びかけた。また震度に対応した被害状況の確認等のため,現地調査を実施した。

(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その1)

(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その1)
(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その2)

(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その2)
(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その3)

(表1−3−2)平成13年局地激甚災害適用措置及び対象区域(その3)

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