表示段落: 第1部/第4章/4


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4 国際防災協力の現状

4-1 国際防災協力の体制と現況

(1) 世界的な国際防災協力の体制

 国際的な防災協力は,国連機関,各国政府,国際赤十字・赤新月運動,非政府機関(NGO)等によって進められている。

 防災に関する国連の活動は,[1]緊急援助,[2]災害予防,[3]研究開発の3つの分野に分けられる。国際協力を必要とするような災害が発生した場合の緊急援助は,国連人道問題調整事務所ジュネーブオフィス(OCHA-GENEVA http://www.reliefweb.int/w/rwb.nsf)が行っている( 図4-4-1 )。

  (図4-4-1) 災害時における救済活動の体制

 また,先進諸国における国際防災協力,特に災害時の緊急援助の体制としては,アメリカ合衆国の海外災害援助室(OFDA),ドイツにおける技術救援活動隊(THW),スイスの災害救助隊(SDR),フランスの緊急援助・警戒室等がある。国際赤十字・赤新月運動の中では,世界176か国に存する赤十字社及び赤新月社からなる国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)が,防災協力,災害時の緊急援助等を行っている。

(2) 我が国の国際防災協力の体制

 我が国の国際防災協力は,政府機関を中心に多くの機関が連携をとりながら実施している。政府部門においては,国際協力事業団(JICA),国際協力銀行(JBIC)及び外務省が,防災分野の技術協力,資金協力の実施に当たり大きな役割を担っている。また,災害発生時には,国際緊急援助隊(JDR)の派遣,緊急援助物資の供与及び無償資金協力による緊急無償資金援助が行われている。また,日本赤十字社をはじめとする民間団体が災害時の緊急援助を行っている。

(3) 我が国の国際防災協力の現況

 我が国政府の国際防災協力は,a.技術協力,b.無償資金協力,c.有償資金協力,d.国連機関等を通じての協力に大別される。

a 技術協力

(a)

 研修

 開発途上国の技術者や行政官等を研修員として我が国に受け入れ,防災分野の専門的知識・技術の移転を行うことを目的として,様々な研修を行っている( 表4-4-1 )。

  (表4-4-1) 平成12年度集団研修実績における防災関係の主な事例

 また,国際協力事業団(JICA)は,開発途上国において当該国及びその周辺国の技術者等を対象とした第三国研修を実施している( 表4-4-2 )。

  (表4-4-2) 平成12年度第三国研修における防災関係の事例

(b)

 専門家派遣

 国際協力事業団(JICA)は,開発途上国に専門家を派遣し,現地での防災に関する技術移転を行っている。

(c)

 プロジェクト方式技術協力

 国際協力事業団(JICA)は,専門家の派遣研修員の受入れ及び機材の供与という3つの協力形態を組み合わせて一つの事業として実施するプロジェクト方式技術協力を実施している( 表4-4-3 )。

  (表4-4-3) プロジェクト方式技術協力事業における最近の防災関係の事例

(d)

 開発調査事業

 開発途上国における開発計画の推進に寄与するため,我が国は開発調査事業として,様々な防災事業に関連する可能性調査あるいは基本計画の策定等について協力を実施している。

(e)

 国際緊急援助

 開発途上国を中心とした海外で大規模な災害が発生した場合に,国際緊急援助隊(JDR)の派遣や緊急援助物資の供与など緊急援助活動を行うものを国際緊急援助という。

 国際緊急援助隊(JDR)は救助チーム,医療チーム,専門家チーム及び自衛隊の部隊等からなり,被災国の要請,災害の種類・規模等に応じて単独または適宜組み合わせて派遣されている( 表4-4-4 )( 表4-4-5 )。

  (表4-4-4) 国際緊急援助隊の派遣及び救援物資供与の実績(1)

  (表4-4-5) 国際緊急援助隊の派遣及び救援物資供与の実績(2)

 また,被災者の救援のために,毛布,テント,浄水器,簡易水槽,発電機,医薬品,医療機材などの緊急援助物資を供与している。これらの物資を迅速かつ確実に供与するため,物資の備蓄倉庫を成田,シンガポール,メキシコシティ,ロンドン(英国),ワシントン(米国)に設置している。

 平成13年1月に発生したエルサルバドル地震においては,国際緊急援助隊として,医療チームが発災後直ちに派遣されたほか,テント,毛布,簡易水槽,発電機等の物資供与,緊急無償援助等が行われた。

 また,同月に発生したインド西部地震の場合は,国際緊急援助隊として医療チーム,自衛隊部隊等が派遣されたほか,緊急援助物資の供与,緊急無償援助等がなされた。

b 無償資金協力

 無償資金協力とは,被援助国(開発途上国)に返済義務を課さないで資金を供与するものである。この無償資金協力の中で,海外での災害発生時において被害状況を迅速に把握し,物資の購入等のため必要な資金を供与する緊急無償資金援助を実施している。さらに,防災及び災害復旧関連の施設や機材の整備等に対しても無償資金協力により援助が行われている。

c 有償資金協力

 有償資金協力(円借款)は,被援助国(開発途上国)に対し長期低利の緩やかな条件で,開発資金を貸し付けるものである。防災関係の有償資金協力としては,治水(洪水対策)事業に対するもの等がある。

d 国連機関等を通じての協力

 我が国は,国連国際防災戦略事務局や国際赤十字・赤新月社連盟などの国連機関・国際機関等への出資,拠出を通じても,国際防災協力に寄与している。

4-2 日米地震防災政策会議

 地球的規模の課題に対処するための日米協力のための枠組みである「コモン・アジェンダ」の一環として,阪神・淡路大震災とノースリッジ地震の経験と教訓を専門家レベルの交流を通じて日米両国で共有し,地震防災問題への取組みに役立てるため,日米地震シンポジウムが平成8年にワシントン,平成9年に神戸市で開催された。

 日米地震防災政策会議(ハイレベル・フォーラム)は,日米地震シンポジウムの成果を踏まえ,日米の地震防災政策分野におけるより緊密な協力関係を築くことを目的として第2回シンポジウムにおいて設置が決定され,第1回会議は平成10年10月にシアトル,第2回会議は平成11年11月に横浜市において開催された。

 第3回日米地震防災政策会議は平成12年11月2〜4日にサンフランシスコにおいて開催され,これまでの成果のとりまとめ,事前・予防対策の具体化を図るための方策,津波災害に関する情報及び経験,近年世界各地で起きた大規模地震災害から得られた知見や今後の協力のあり方などをテーマとして討論された。

 また共同発表では,今後,二国間での情報交換の多様化等を通じてより一層緊密に地震防災政策分野における協力を行っていくことなどが示された。( 写真 )

  (写真) 第3回日米地震防災政策会議

4-3 日韓防災会議

(1) 日韓防災会議の経緯

 1998年10月8日の日韓首脳会談の際に,小渕総理大臣(当時)と金大中大統領が「日韓共同宣言」及びその付属書「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップのための行動計画」を取り交わし,そのうち行動計画の中で,「両国は,両国の災害への対応に関連する制度,防災体制及び施設についての情報・意見交換を通じ,協力を推進する」こととされた。

 このこと等を踏まえ,平成11年12月4日,東京において,国土庁防災局と韓国行政自治部防災局との間で第1回会議を開催し,両国の防災体制,過去の災害の教訓などについて意見交換を行った。

(2) 第2回会議の開催

 平成13年1月,ソウルにおいて第2回会議が開催された。同会議では,両国の水害予防施策,発生後の復旧・復興対策等について意見交換を行うとともに,今後の課題として以下の点について合意した。

 今後,[1]防災に対する相互情報交換及び支援策,[2]防災担当公務員の相互派遣制度導入案,[3]国際防災協力への貢献等について事務レベルで協議していく。

 2001年は日本で第3回会合を開催する。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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