表示段落: 第1部/第3章/3


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3 防災とボランティア

3-1 災害時におけるボランティア活動の環境整備

(1) 災害時におけるボランティアの位置付け

 我が国において,災害時におけるボランティア活動の重要性については,雲仙岳噴火災害や阪神・淡路大震災等で多くのボランティアが自主的な救助活動を展開し,災害対策を迅速かつ的確に展開する上でボランティア活動の果たす役割の重要性があらためて認識された。

 このような状況を背景として,国においては,ボランティアの活動環境の整備等のため,次の施策を講じている。

 平成7年7月改訂の「防災基本計画」で,「防災ボランティア活動の環境整備」及び「ボランティアの受入れ」に関する項目が設けられた。

 平成7年12月改正の「災害対策基本法」で,国及び地方公共団体が「ボランティアによる防災活動の環境の整備に関する事項」の実施に努めなければならないことが法律上明確に規定された。

 平成9年2月の閣議決定で,国内において災害時の社会奉仕活動に従事している者が不慮の死を遂げた場合,一定の条件を満たすときは内閣総理大臣が褒賞を行うこととした。

 平成10年12月施行の「特定非営利活動促進法」において,ボランティア団体等のNPO(民間非営利組織)が法人格(特定非営利活動法人)を取得する途が開かれることとなった。

(2) 各機関における取組みの例

 国や地方公共団体においては,ボランティアの活動環境のより一層の整備を図るため,次の取組みを行っている。

[1] 国における取組み

 大規模災害時の公共土木施設の被害情報の迅速な収集と施設管理者への連絡等をボランティアとして行う「防災エキスパート制度」

 土砂災害に関して行政への連絡等を行う「砂防ボランティア制度」と,土砂災害に関する危険箇所の点検,調査等を行う「斜面判定士制度」

 地震発生後,建築技術者による被災建築物の応急危険度判定を行う「被災建築物応急危険度判定制度」

 山地災害に関する情報収集活動等を行う「山地防災ヘルパー制度」

 郵便振替口座の預り金をボランティア団体等へ寄附することを総務大臣に委託する「災害ボランティア口座制度」

 全国の災害ボランティア団体の活動内容等と地方公共団体における災害ボランティアとの連携施策の内容に関する情報をデータベース化する「災害ボランティアデータバンク」

[2] 地方公共団体における取り組み

 各地方公共団体においては,ボランティア活動に関する「地域防災計画での位置づけの明確化」,「受入れ窓口の整備」,「事前登録制度の整備」,「講習会の実施」等の措置を講じている。

(3) 今後の課題に向けた取り組み

 内閣府が平成13年1月に東京都豊島区で開催した「防災とボランティアを考えるつどい」(ボランティア団体等との共催)において,「活動の問題点を洗い出す」目的で行ったシンポジウムで,全国から参加いただいた約30名のボランティア等からは,[1]法令や規約等に基づいて行動しなければならない行政機関や団体等の立場への理解が不足していた,[2]ボランティア活動について被災地住民に説明しないまま行動しようとして反感を受けた,[3]それぞれのボランティアが自分たちの看板や独自性にこだわると連携がうまくいかない,等の問題点が提起された。

 ボランティア活動の一層の推進を図っていくためには,前述のボランティアからの問題提起等を踏まえ,[1]ボランティア活動本部等の迅速な立ち上げと円滑な運営のための行政等とボランティアの連携,[2]ボランティア相互間の調整等の能力を有するコーディネーターの確保,[3]企業・団体等の支援活動との連携,[4]健康管理,などの課題に関しボランティア活動に関わる関係者間での意見交換等を重ねながら,活動環境の整備に取り組むことが重要である。

3-2 防災とボランティアの日・防災とボランティア週間

 阪神・淡路大震災において,ボランティア活動が果たす役割の重要性があらためて認識されたことを踏まえ,平成7年12月15日の閣議了解で「防災とボランティアの日」(1月17日)及び「防災とボランティア週間」(1月15日〜21日)が創設され,この週間において,国及び地方公共団体その他関係団体の綿密な協力のもと,講演会,講習会,展示会等の行事が全国的に実施されている。

 平成13年1月に実施された行事を例示すると,次のとおりである。

[1]

 兵庫県は,阪神・淡路大震災の6周年行事として,1月17日に神戸市で「1.17ひょうごメモリアルウオーク」を開催し,一般市民が参加しての「山手ふれあいウオーク・防災訓練」等を行った。

[2]

 福岡県は,1月17日に,講演とボランティア関係写真展等を内容とする「防災安全講習会」,1月19日に,災害対策の検証と実効性の確保を図るための「災害図上訓練」を行った。

[3]

 内閣府は,1月20日〜21日に東京災害ボランティアネットワーク等との共催で,東京都豊島区(池袋)において「防災とボランティアを考えるつどい」を開催し,「シンポジウム」,「負傷者対応訓練」などの行事を行った。

3-3 平成12年度における災害時のボランティア活動事例

(1) 北海道有珠山噴火災害(平成12年3月)

 この災害におけるボランティア活動は,3月31日に設置された「北海道有珠山福祉救援ボランティア活動対策本部」(北海道庁)及び伊達,豊浦,長万部の各現地対策本部を中心に展開された。

 7月31日までのボランティア等は延べ8,500名余で,避難所の世話・警備・管理,被災者の心のケア,情報発信,広報誌配布,物資輸送・配布,引越し手伝い,除灰作業等の活動を行った。

 なお,その後においても,ボランティアによる「湯たんぽ配り」や激励訪問等が繰り返されている。

(2) 東京都三宅島等での火山及び地震活動(平成12年6月)

 三宅島の場合は,7月22日〜23日に,東京災害ボランティアネットワークを中心に136名のボランティアが現地で,各家屋の火山灰の除去作業等の活動を行った。また,住民の島外避難後は,東京災害ボランティアネットワーク及び避難先となっている各地域の福祉ボランティア等が中心となって,避難している方々の電話帳の作成,広報誌の発行,地域でのふれあい集会の開催等の活動を行っている。

(3) 東海地方での大雨による被害(平成12年9月)

 洪水発生直後の9月12日には「愛知・名古屋水害ボランティア本部」(愛知県庁)が設置されるとともに,14日に名古屋市,大府市及び新川町等に「ボランティアセンター」が設置された。延べ19千人余のボランティアが駆けつけて,家具の移動,がれきや土砂の撤去,清掃,避難所の世話,子供のケア,高齢者の介護等の活動を行った。

(4) 鳥取県西部地震(平成12年10月)

 鳥取県においては,災害直後から鳥取県社会福祉協議会及び関係市町村の社会福祉協議会を中心にボランティアセンターが開設され,延べ5,200名を越えるボランティアが駆けつけた。託児所の支援,高齢者・障害者の介護,避難所の世話,家具・部屋・ブロック塀などの片づけ,屋根のシート張り,泥の撤去,家屋周辺の清掃等の活動を行った。

 また,鳥取県及び島根県の「砂防ボランティア」(延べ40名)が,地震発生の翌日から二次的な土砂災害を防止するための活動を行った。

(5) 芸予地震(平成13年3月)

 広島県呉市等においては,災害直後からボランティアセンターが開設され,延べ1,200名のボランティアが駆けつけ,がれきの除去,屋根のシート張り,家屋周辺の清掃等の活動を行った。

 また,愛媛県,広島県,山口県及び高知県の「砂防ボランティア」(延べ82名)が,地震発生の翌日から二次的な土砂災害を防止するための活動を行った。

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